成功するブランディングの裏には、表立った準備がある。

ブランディング・プロジェクトの成功に向けた、事前準備とタイミングを伝授します。

Introduction

ブランディングの事前準備

ブランディングの必然性を理解し、実行を計画する際は、いきなり実施のフルアクセルを踏むのではなく、事前準備としてしておくべきことが多数あります。「ブランディングの本質」や「ブランディングの全体像」に記載する通り、ブランディングは企業のマネジメントにおける最上位概念となるため、経営層はもちろん、すべての従業員に浸透し、全社一丸となって実行していかなければなりません。ここでは、確実なブランド確立とブランディングの実施に向け、事前準備としてすべきことや、そのタイミングなどを伝授していきます。

ブランディング実施のタイミング

前述する通りブランディングは、企業のマネジメントに関わる最上位概念となるため、すべての社内ステークホルダーがブランディングの必然性を理解し、納得のうえ協力できる大義名分が必要になると言えます。従来の組織から新たな組織へと変化を遂げる際に生じる、部署や役職の利害関係を超えてブランディングを実施するためには、実施のタイミングが重要となることから、まずは「契機」を見極めることが大切です。

①「周年」のタイミングを活かし、企業の節目を、変わり目にする。

創立◯周年、設立◯周年など、企業や事業にとって大切な節目となる「周年」のタイミングを活かしてブランディングを実施します。この周年を活かしてのブランディングは、経営層や社員をはじめとするステークホルダーの理解を得やすいだけでなく、実施期限が明確であるため、新ブランドリリースまでの計画が立てやすいというメリットがあります。
契機を待たずして行うブランディングは、計画の不透明さからネガティブな印象を招きやすく、社内へのブランド浸透に必要以上に多くのハードルが生じる可能性がある一方、緻密な計画のもと行われる周年を活かしたブランディングは、社内の意思統一が図りやすいタイミングであり、すべてのステークホルダーに未来を見据えるポジティブな印象を与えることができます。

②「事業転換」「業態転換」など、主事業の転換となるタイミングを活かす。

時代の変化により、従来まで行ってきた事業に転換が必要となり、新製品や新サービスを展開するタイミングは、今まで市場から認知されてきたブランドイメージを刷新する必要性のあるタイミングでもあることから、ブランディングに適したタイミングであると言えます。また、社内ステークホルダーの理解・納得を得やすく、新商品・新サービスリリースの期限が新ブランドリリースのタイミングでもあることから、実施期限も明確です。
新ブランドリリース後には、インターナルブランディング(インナーブランディング)・エクスターナルブランディング(アウターブランディング)共に、継続的な取り組みを行い、新ブランドの浸透を図る必要があることは言うまでもありません。

③「統合や合併」「M&A」など、新組織となるタイミングを活かす。

企業が統合や合併を行う場合、それぞれの企業で培われてきた異なる企業文化が起因し、社内の意思疎通に様々な障害が発生することは珍しくありません。また、類似する事業であっても、業務プロセスやその考え方が異なることから、社内に派閥を生み出し、不要な権力争いに発展する可能性さえあります。さらには、社名やブランドステートメント、ロゴなどの変更が生じるケースも多いため、「統合や合併」「M&A」の際は、ブランディングが不可欠であると言えます。
複数の組織が合併する場合、最も必要となるのがブランドプロポジション(ブランドの定義)です。その企業にしか提供できない価値や、どのようなブランドでありたいかを言語化し、異なる文化を育んできた従業員同士をひとつに融合させていくことが大切です。他にも、新ブランドに伴う企業理念、ブランドパーソナリティ、ブランドステートメント(ミッション、ビジョン、バリューや、ブランドポジショニング)など、ブランドの基軸となるCI(コーポレートアイデンティティ)の定義が不可欠となることから、ブランディングを実施する絶好の好機であると言えます。

④「事業継承」「代替わり」など、企業が若返るタイミングを活かす。

永続することを前提とする企業において経営者は、どんな優秀であっても永続することはできません。いずれ訪れる代替わりのタイミングも、ブランディングの絶好の契機であると言えます。計画的に行う事業継承は、経営層や従業員など、社内ステークホルダーの理解・納得、そして協力を得やすく、またその浸透も迅速に行うことのできる絶好のタイミングであると言えます。
一方、長年従事する従業員との軋轢が生じる可能性もあるため、実施の際は、古参メンバーの意見を十分にヒアリングするなど、これまで会社に貢献してくれた従業員が置き去りになることがないよう、十二分な配慮が必要です。

⑤ブランドイメージと事業実態の乖離が課題にあげられたタイミング

時代の変化、事業の変化、ライフスタイルの変化などにより、これまで培ってきたブランドの定義が事業の実態に適さなくなってきたことが課題となるケースは、業種業態を問わず、あらゆる企業で発生しています。また、企業の急激な成長に伴う事業拡大に、自社ブランドのあり方が散漫になってしまうケースも珍しくありません。
こうしたケースの場合、前記する契機を待つことなく次のステージに向け、リブランディングを図り、さらなる成長を促すことが大切です。

ブランディングの正しい理解と課題意識の共有

ブランディングは、企業のマネジメントにおける最上位概念となるため、企業トップや経営層がブランディングの必要性を認識し、正しい理解と課題意識を持って取り組まなければ推し進めることはできません。また、ブランディングを最終的に実践するのは従業員であるため、すべての従業員にブランディングの必要性を共有し、自分ごと化したうえで全社一丸となってブランディングを図らなければ、自社ブランドを浸透させることはできません。ブランディングを実行する際は、ブランディングの正しい理解と課題意識をすべての経営層、すべての従業員で共有すべく以下3点を事前に実施することが大切です。

①企業トップ及び経営層がブランディングを正しく理解し課題意識を持つ

ブランディングのご相談を頂く際、ご相談のフロントに立たれるのは、自社ブランドに課題を感じ、改善の必要性に迫られた経営企画部またはマーケティング部など、広報や広告宣伝を担う部署の担当者であることが大半です。多くの担当者は、日頃の広報や一過性の広告キャンペーンに限界を感じており、確立されたブランドのもと中長期的な計画に基づくブランディングを図る必要性に迫られています。一方、ブランディングの必要性や課題を企業トップや経営層と共有できておらず、また理解も得られていない状況であることが大半であり、ブランディングの実施には高いハードルが生じていると言えます。
本来ブランディングは、企業のマネジメントにおける最上位概念であるため、企業トップや経営層がリーダーシップを図り推進しなければ、成し得ることはできません。そのため、トップマネジメントを交えた課題提起や意見交換を定期的に行い、自社ブランドの将来像やブランディングのメリットについて十二分に議論を図り、ブランディングの正しい理解と、自社ブランドへの課題意識を共有することが重要です。

②ブランディングの成功イメージを共有する

現在の自社ブランドがどのように変わるのか、またブランディング実施後はどのような組織に生まれ変わるのか、などの成功イメージが想像できないが故に実施に踏み込めないケースも多く生じています。そのため、ブランディング計画時には、他社をベンチマークし、他社のケーススタディを紹介するなど、他社事例を持って自社ブランドの将来像を共有することも大切です。その際、他社ケーススタディを学ぶだけでなく、自社ブランドの将来像を描き、具体的な目標まで落とし込むことも忘れてはなりません。

③社内世論を形成する

ブランディングの必要性を共有し、社内世論を形成するためには、ブランディング・プロセスに早い段階から従業員を巻き込み、自社ブランドの将来像について議論を交わし意見を徴収するなど、全社一体となってブランディングに取り組む体制づくりを行うことが大切です。また現場では、部署や部門ごとに異なる課題を抱えており、企業全体のことまではなかなか考えが及ばないことから、余裕を持ったスケジュールで各部署の課題を共有し、部署間を超えて企業全体を俯瞰した課題の抽出ができるよう準備を進めることが大切です。

④ステークホルダーからの評価を見える化する

自社が目指すブランド像を確立するためには、正しい現状把握が大切です。現状把握には、社内はもちろん、取引先やエンドユーザーなどの外部ステークホルダーに対するアンケートが有効です。その結果をもとに自社ブランドを客観的に見つめ直し、あるべきブランド像・ありたいブランド像を掲げていくことで、より自社らしいブランドの確立が実現できます。

《アンケートから見られるギャップの一例》
・自社では高い評価をしていたが、外部からは評価されてない
・自社では評価していなかったが、外部から高い評価を得ている
・自社では優位性としていたが、他社の方が優位だと認識されている
・自社では優位性がないとしていたが、実は優位性と認識されている

ブランディング推進チームを組織する

ブランディングは、インターナルブランディング(インナーブランディング/社内ステークホルダーに向けたブランド浸透)が不可欠であることから、専任部署にプラスして、ブランディング・プロジェクトメンバーとして召集された組織の中核メンバーで構成されます。このプロジェクトメンバーは、ブランディングプロジェクトが実施された際に、活動の核となり、社内への共有・浸透を図る大切な役割を担います。なお、プロジェクト組織は概ね10名前後で構成されるのが一般的です。
また、ブランディング・プロジェクトは、企業のマネジメントに関わる最上位概念の決定が求められるため、統括責任者には経営陣(できれば経営トップ)が就任することが望ましいと言えます。

ブランディング・パートナーを選定する

社内準備が整い、ブランディング実行の際は外部のブランディング・パートナー選定を行います。ブランドの上位概念となるCI(コーポレート・アイデンティティ)を自社メンバーで策定するケースもありますが、社内の力関係や利害関係を超えて自社のブランドを客観的に把握し、公平な視点で市場を俯瞰できるブランディング・パートナーを選定することも大切です。
なお、ブランディング・パートナーはパート毎に分けるのではなく、上位概念の開発からデザイン制作、その後のコミュニケーション戦略に至るまで窓口を一社に集約し、ストーリー性のあるブランド開発を行うことが大切です。
また、ブランディング・パートナーを見極める際は、その企業の実績はもちろん、内制化された組織であるのか、担当者とのコミュニケーションは円滑に図れるか、実施までの期間は適切かなど、多角的な視点で評価を行うことが大切です。

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