ブランドらしさを規定し、世界観の統一を図る。

ブランド共有に不可欠なブランドのルールブック「ブランドガイドラインの活用」を伝授します。

Introduction

ブランドガイドラインとは

ブランドガイドラインは、一言でいうと「ブランディングのためのルールブック」です。マインド・アイデンティティ(MI)として規定される企業理念やビジョン、ビヘイビア・アイデンティティ(BI)として規定される行動規範(クレド)、ビジュアル・アイデンティティ(VI)として規定されるロゴをはじめとする各種デザイン、バーバル・アイデンティティ(VI)として規定されるブランドの語り口調、そして一貫した顧客体験を規定するエクスペリエンス・アイデンティティ(XI)など、コーポレート・アイデンティティ(CI)が細部まで分かりやすくまとめられています。ブランドガイドラインがあることで、企業はブレることなく一貫したブランド運用を行うことができます。

ブランドガイドラインの効果

次に、ブランドガイドラインがもたらす主な効果を以下3点に集約してご紹介します。
①すべての従業員にCIを正しく共有し、企業活動に取り組むことができる
②社外との効率的なコミュニケーションが可能となる
③一貫したブランドコミュニケーションから、顧客との信頼関係を構築できる

①すべての従業員にCIを正しく共有し、企業活動に取り組むことができる

ブランドガイドラインには、その企業が何のために存在するのかを言語化したブランドパーパス(社会的な存在意義)や、企業が提供する価値を定義したブランドプロポジションをはじめ、ミッション/ビジョン/バリューやブランドパーソナリティ(ブランドの人格・性格)、さらには社員の行動規範(クレド)などが記載され、すべての従業員にもれなくCIが共有されるため、新入社員から役員に至るまで正しくブランドを理解のうえ、企業活動に取り組むことができます。なお、ブランドガイドラインは、新入社員研修はもちろん、年度始めのキックオフミーティングや新プロジェクト発足時など、あらゆる機会に定期的にレビューを行い、常日頃からメンバーの共有認識を図ることが大切です。

②社外との効率的なコミュニケーションが可能となる

ブランドガイドラインには、ビジュアル・アイデンティティ(VI)が細かく規定されます。最小範囲ではロゴ、ブランドカラー、カラーパレット、推奨フォント、展開例、そして禁止事項などが規定されるほか、展開例の基本としては名刺や封筒のデザイン規定、ブランド運用を重視する企業ではさらにフォトイメージ、イラスト、アイコンなどのトーン&マナーから、カタログ、企画書、店舗デザイン、Webデザインなどのレギュレーションに至るまで規定されるため、社外との効率的なコミュニケーションが可能となります。

③一貫したブランドコミュニケーションから、顧客との信頼関係を構築できる

ブランドガイドラインにはビジュアル・アイデンティティ(VI)が細かく記載されるため、社内外に統一したVIを共有することができます。これにより、あらゆるタッチポイントで共通のVI展開を図ることができるようになるため、ブランドに接した消費者はそのブランドを直感的に認識することができるようになります。また、統一されたVIに繰り返し接することで、消費者の無意識にはブランドへの信用が生まれてきます。こうして、市場とブランドとの信頼関係を構築することで消費者から選ばれ、競合他社との単純な価格競争を回避することができます。

ブランドガイドライン 3つのレベル感

ブランドガイドラインは、ブランドにより規定するレベル感が大きく異なります。最も簡易的なものでは、ロゴの使用規定やブランドカラーなど、デザインの基本ルールが定められたものをブランドガイドラインと呼ぶ企業もありますが、ブランドガイドラインは全社員に共有し、外部関係者ともブランドの共有を行うため、MI/BI/VI/XIなどCIに定められた構成要素のすべてが記載されていることが望ましいと言えます。ここでは、ブランドガイドラインを大きく3つに分類し、そのレベル感をご紹介します。

①CIマニュアルとしてのガイドライン

中小企業で最も多く見られる簡易的なガイドラインで、ロゴ・レギュレーションとも呼ばれます。CIマニュアルとしてのガイドラインのみを制作する企業では、ブランドプロポジションやブランドパーソナリティなどの定義が明確化されていないケースが大半だと言えます。本来、ブランドガイドラインは、ブランド表現を規定し、すべてのステークホルダーとブランド共有を図るためのコミュニケーションツールであることから、CIマニュアルはブランドガイドラインとは別物であると言えます。

参考:BASE ブランドガイドライン
参考:CHATWORKE ブランドガイドライン
参考:デジタル庁 ブランドガイドライン

②ブランドコミュニケーションに向けたブランドガイドライン

ロゴ規定やVI規定だけでなく、ブランドプロポジション、ブランドパーソナリティ、ミッション、ビジョン、バリュー、ブランドコンセプトなど、ブランドのMIを明確に記したブランドガイドラインです。ブランドデザインやセールスプロモーションにおけるトーン&マナートーンオブボイスなどのVI規定を広く規定する他、ブランドとしての写真表現や推奨書体についても閲覧者が理解しやすいよう、細部まで記されています。また、ブランドとステークホルダーのタッチポイントにおいて、正しいブランド体験を提供するためのエクスペリエンス・アイデンティティ(XI)指針も明示されており、CI全体を規定しています。

参考:楽天グループ ブランドガイドライン
参考:JAPAN BRAND ロゴマーク等 使用ガイドライン

③グローバル対応のブランドガイドライン

業界をリードする企業の多くは、グローバル対応を前提としたブランドガイドラインを作成しています。そのため、前述②に加え、多言語対応も行っています。また、グローバル環境で迅速な共有が図れるよう、すべてオンラインで管理され、ブランドガイドラインの改定から共有が迅速に行われるよう仕組み化されています。

参考:Starbucks Creative Expression
参考:NASA standards manual

ブランドガイドラインの構成要素

ブランドガイドラインの構成要素には、大きく分けて「1.イントロダクション」「2.バーバル・アイデンティティ(VI)」「3.ビジュアル・アイデンティティ(VI)」がありますが、企業規模やブランドの重要度により規定範囲は様々です。ここでは主な構成要素を詳しく解説していきます。

1.イントロダクション

①ブランド戦略の基本方針
ブランドガイドラインの冒頭は、ブランドの基本方針となるブランドプロポジションを示し、ブランドらしさとは何かを正しく共有することから始まります。

②ブランドアーキテクチャ(ブランド体系)
グループブランドの場合は関連企業全体を俯瞰した相関図、事業ブランドの場合は商品・サービスがどのような位置付けにあるのかなど、ブランド階層やブランド同士の関係がひと目で分かるよう図解などを行います。

③ブランドポジショニング
自社ブランドが市場においてどのような位置付けであるのかを、4現象のポジショニングマップを用い示します。ブランドガイドラインにブランドポジショニングを明記することで、自社独自性がブレることなく、競合ブランドとの差別化を意識させます。

④ ブランドパーソナリティ
ブランドパーソナリティは、ブランドの持つ個性を人格に例えて表現・形容したもので、企業の社風とも重なります。ブランドパーソナリティをブランドガイドラインに明記することで、以降のブランド運用や新商品開発の中核を共有することができます。

2.バーバル・アイデンティティ(VI)

①ブランドステートメン
ブランドステートメントは、ブランドの掲げる理念や使命を言語化したもので、パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー、そして行動指針(クレド)などが挙げられます。ブランドとしての理想や使命、ブランドらしさを持続するために、ブランドステートメントはブランドガイドラインに不可欠な要素のひとつです。

②ブランドコンセプト
ブランドコンセプトは、「日々果たしていく使命や目的をメッセージ化したもの」を指しており、ブランドの掲げるミッションと通じる部分があります。ブランドコンセプトを掲げることで、すべてのステークホルダーとブランドイメージの共有を図ることができます。

③ブランドストーリー
ブランドストーリーは、ブランドコンセプトと同様の意味を持つブランドの物語です。ブランドへの思い、ブランドの志、ブランドのこだわりや哲学、ブランドが顧客に与える利益、ブランドと顧客の関係性、ブランドが誕生するまでの過程、ブランドの歴史など、ブランドの価値観をすべてのステークホルダーと共有することで、ブランドへの共感を醸成していきます。

④ トーンオブボイス
トーンオブボイスは、ブランドが発する言葉に接したすべての人に、ブランドの印象を残すための語り口調を定義したものです。トーンオブボイスをブランドガイドラインに明記することで、言語から感じるブランドの印象を統一することができます。

3.ビジュアル・アイデンティティ(VI)

①トーン&マナー
トーン&マナーとは、ブランドスタイルの基本的なルールを定めたもので、ルック&フィールとも呼ばれます。ブランドデザインのトーン&マナーのすべてが戦略的に統一されて初めて、消費者は企業・商品ブランドを直感的に認識できるようになり、顧客はブランドらしさに愛着を持つことができるようになるため、トーン&マナーの策定はブランディングに必要不可欠な取り組みのひとつだと言えます。

②ブランドエレメント
ブランドエレメント(ブランド要素)には、ブランド名、ブランドロゴ、サウンドロゴ、ブランドスローガン、キャラクター、ブランドカラー、パッケージなど様々なものがあり、それらをブランドガイドラインに正しく明記することで、あらゆる制作物を一貫した世界観で展開することが可能となります。

③デザインシステム
デザインシステムには、名刺・封筒などの基本的なコミュニケーションツールのデザインフォーマットから、Webサイトのヘッダー・フッターやカタログデザインのレギュレーション、SNSやその他広告への展開を想定したブランドシンボルの配置規定及び、写真・イラスト・タイプフェイスなど、ブランドの統一された世界観を展開するためのあらゆる規定がされています。ブランドガイドラインにおいて最も細かく規定されるのがデザインシステムであり、企業によっては100ページを超えるボリュームで規定されることもあります。

誰もが直感的に理解できる、ブランドガイドラインを目指すこと

ブランディングは、ブランドにおけるあらゆる独自性を定め、内部ステークホルダーで共有し、正しく運用することが大切です。そのためには、ブランドガイドラインはできる限りわかりやすく、見やすく、そして魅力的なものでなくてはなりません。企業規模が大きくなるにつれ、ブランドガイドラインはより複雑になっていく傾向にありますが、大切なのは誰もが直感的にブランドの世界観を理解できることにあります。
ブランドガイドライン制作時には、ブランドガイドライン・ユーザーの立場に立ち、いかに簡潔に、分かりやすく、伝わるブランドガイドラインをデザインするかを追求することが、正しいブランド運用への近道となります。

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