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周年は経営の転換点|ブランド再構築に活かす戦略的アプローチ
企業の節目を、未来への起点に。
理念の再定義から社内浸透、ブランド発信まで。周年を契機に変える周年戦略を解説します。
なぜ「周年」は経営の転換点になるのか
企業にとって「周年」は、単なる記念の年ではなく、過去と未来をつなぐ経営の転換点です。また、創業からの歩みを振り返ると同時に、「これから何を目指すのか」「自社の存在意義は何か」を見つめ直すタイミングでもあります。
社会や市場、働き方の変化が加速する今、企業の理念やブランドもまた、進化が求められています。周年という節目をどう活かすか。それが、次の成長を左右する重要な分岐点となります。

経営の“節目”はブランドの“節目”でもある
創業から積み重ねてきた年月は、企業の信頼と実績の証。一方、「過去の延長線上でいいのか」という問いも生まれます。周年は、経営の原点に立ち返り、企業が何を大切にしてきたのか、そしてこれからどこを目指すのかを改めて見つめ直す好機です。この節目をどう捉えるかで、以降のブランド価値が決まります。
変化の中で求められる「再定義」
社会構造や価値観が大きく変化する今、企業には「なぜ自社は存在するのか」という根源的な問いへの明確な答えを求められています。市場環境の変化、顧客の価値観の多様化、社員の意識の変容。そのどれもが、過去のメッセージそのままでは届かないものにしています。
だからこそ、周年という節目を機に、自社の存在意義・理念・提供価値を改めて定義し直すことが大切で、これからの企業経営を支える重要なステップとなります。
周年がもたらす3つの変革機会
企業にとって周年は、単なる節目ではなく、成長の方向性を見直す絶好の機会です。理念や価値観を再確認し、これからの時代にふさわしいブランドの在り方を再定義する契機となります。周年がもたらす3つの機会は次の通りです。
【機会1】理念の再構築
Vision / Mission / Valueを整理し、全社員が共有できる「企業の羅針盤」を再構築。
【機会2】社内文化の再浸透
過去の歩みを可視化し、社員一人ひとりの誇りと一体感を醸成。
【機会3】社外発信の刷新
新たなブランドストーリーを社会に発信し、企業の存在価値を再評価してもらう。
周年を「ブランド再構築」に活かす3つのステップ

周年は、過去を振り返るだけでなく、企業の未来を再設計するチャンスです。理念体系を見直し、ブランドの核となる価値を再定義し、社内外に一貫したメッセージとして発信することで、周年は「記念」から「進化」へと変わります。
ここでは、周年事業をブランド再構築に活かすための3つのステップを紹介します。
【Step1】理念とブランドの棚卸し
まず必要なのは、企業の“原点”を見つめ直すこと。創業の想い、社史、沿革、理念などを改めて整理し、「自社らしさとは何か」「どんな価値を社会に提供してきたか」を掘り下げます。
この段階で見えてくる“変わらない本質”と“これから変えるべき部分”が、リブランディングの起点になります。
【Step2】ブランドストーリーの再構築
周年は「過去→現在→未来」を一つの物語でつなぐ機会。理念を軸に、未来へ向けたメッセージを明文化し、キービジュアル、タグライン、周年動画などを通して、言葉とビジュアルの両面でストーリーを可視化します。
単なるデザインではなく、「想いを伝える体験」を設計することが大切です。
【Step3】社内外への統合的発信
周年ロゴ、特設サイト、周年動画、記念誌、イベントなどを組み合わせ、インナーブランディング(社内)×アウターブランディング(社外)を統合的に展開することが大切です。
経営メッセージを軸に、全社員・顧客・社会が“共感できる物語”として発信することで、周年は単なる式典から「共有体験」へと昇華します。
周年をブランド再構築の起点に/経営視点で設計するプロジェクト戦略

企業の周年は、単なるお祝いの場ではなく、ブランドを再構築し、社内外に未来へのビジョンを共有する絶好のチャンスです。
ここでは、周年プロジェクトを「経営課題」として捉え、戦略的に成功へ導くための設計ポイントを紹介します。
経営直轄での進行体制から、社員・社外を巻き込む仕掛け、理想的なチーム編成、そして1年前からの段階的なスケジュール設計まで。企業価値を高める周年のつくり方をご提案します。
経営直轄で進めるべき理由
周年事業は、単なる記念イベントや広報施策ではありません。経営・人事・広報・営業など、全社を巻き込んだ「経営課題」として取り組むべき重要なプロジェクトです。
トップ自らが明確な意志とメッセージを発信することで、プロジェクトの方向性が明確になり、社内外に強い共感と一体感を生み出します。
社内外を巻き込む企画設計
成功のカギとなるのは、「社員が主役になれる仕掛け」を用意すること。
例えば、「社員の声でつくる記念動画」「感謝のメッセージ投稿キャンペーン」「周年アワード」など、参加する人が自然と“自分ごと化”できる企画が効果的です。
対外的には、取引先や地域との共創イベントを通じて、感謝の気持ちと未来への展望を届けることが、ブランド価値向上へとつながります。
プロジェクト体制と進行管理
理想的な体制は、社内委員会と外部ブランディングパートナーの共同チーム。
社内の想いや歴史を大切にしながら、外部の専門知見と掛け合わせることで、戦略とクリエイティブが融合し、ブランドとしての一貫性ある発信が実現します。
スケジュール設計のポイント
周年プロジェクトは、最低でも1年前からの準備が必要です。
以下5つのフェーズで段階的に進めることで、計画性と戦略性を持ったプロジェクト運営が可能になります。
1.理念の整理
企業の原点や存在意義を見つめ直し、ブランドの核となる理念・ビジョン・バリューを再定義します。
2.企画の立案
周年の目的やターゲットに合わせた施策を立案し、社内外への波及効果を見据えた全体設計を行います。
3.コンテンツ制作
周年ロゴ、記念動画、周年誌、特設サイトなど、ブランドを体現する各種コンテンツを制作します。
4.社内展開
社員参加型の企画や発信を通じて、周年の意義を社内に浸透させ、共感と一体感を醸成します。
5.対外発信・公開
記念イベントや広報活動を通じて、ブランドの進化や想いを社外に発信し、企業価値の向上を図ります。
周年ブランディングが生み出す「持続する価値」/社内外に残る成果と資産

周年ブランディングは、一過性のイベントにとどまらず、企業に長期的な価値をもたらす戦略的な取り組みです。
社員の理念理解やエンゲージメント向上といった「内なる力」の強化に加え、社外に対してはブランド再評価や信頼構築といった「外への発信力」も向上させます。
さらに、周年で制作したロゴ・動画・Webサイトなどは、“使い捨て”ではなく“資産”として活用することで、周年後もブランドの記憶と価値を継続して育てていくことが可能です。
社内にもたらすポジティブな変化
周年プロジェクトを通じて、企業の理念が改めて共有され、社員一人ひとりの理解と共感が深まります。その結果、エンゲージメントの向上や帰属意識の醸成につながり、「誇りを持って働ける組織」が育まれていきます。
社外との信頼関係とブランド価値の強化
周年をきっかけに、自社の歩みやビジョンを外部に発信することで、ブランドが再評価され、新たな共感を得る機会となります。
また、企業姿勢を明確に伝えることで、採用力の強化や取引先・顧客との信頼深化にもつながります。
周年後も生き続ける“ブランド資産”
周年で制作したロゴ、動画、特設サイトなどは、イベント終了後も継続して活用可能な重要なコンテンツです。
これらを単なる記念品で終わらせず、企業ブランドを象徴する資産として運用することで、中長期的な価値を創出します。
成功企業に学ぶ「周年×リブランディング」事例

企業にとって「周年」は、過去の功績を称えるだけでなく、これからの未来にどう挑むかを示す重要なタイミングです。
近年、周年を単なる記念行事としてではなく、経営の再設計やブランド価値の再構築に結びつける動きが加速しています。
ここでは、周年を“経営の節目”として活かした企業の実践事例とともに、理念の再定義からブランドの再構築、社内外への波及戦略までを、体系的に解説します。
100周年×リブランディング|シモダL&C株式会社
創業から100年という節目に、シモダL&C株式会社は「つなぎ、つくり、こたえる。」という新スローガンを掲げ、大きなブランド変革に挑みました。さらに、グループ4社の経営統合を契機に社名を刷新し、新たなステージへと歩みを進めています。 このリブランディングでは、企業理念「企業は永遠なり」をロゴに昇華し、「S」が重なり合うデザインによって“お客様と共創する姿勢”を象徴。また、周年サイトやブランディング動画等の制作を通じて、社員の声・歴史・未来像をひとつの物語として発信しています。
100年の歩みを起点に、次の100年へとつながる「共創と成長」のブランド体験を形にしたこのプロジェクトは、単なる記念にとどまらず、新たなブランド価値を社会に示す力強いメッセージとなっています。
50周年×リブランディング|鎌ケ谷巧業株式会社
創立50周年を迎えた鎌ケ谷巧業は、節目を単なる「お祝いの場」にとどめず、次の50年への挑戦としてブランドを刷新しました。
新たなキーメッセージ「まっすぐ、強く。巧であれ。」を掲げ、鉄骨製造という本質的な技術力の価値をあらためて可視化。社員の声や現場の姿を大胆に捉えた動画、ブランドブック、記念誌、Webサイトなどを通じて、「ものづくりへのこだわり」と「未来への志」をブランドの言葉とデザインで一貫して伝えています
このプロジェクトは、50年の歩みを「礎」として、次なる成長の飛躍へと向かう企業姿勢を、ブランドとして鮮明に社会に示したものです。
70周年×ブランディング|ポーライト株式会社
粉末冶金技術のグローバルリーディングカンパニーであるポーライト株式会社は、創業70周年を迎えるにあたり、これまでの歩みへの感謝と、未来への新たな決意をブランド改革として具現化しました。
周年ロゴには「成長」「変化」「チャンス」のコンセプトを込め、「0」の文字に光のモチーフを取り入れることで、未来へ向かって架け橋を描き出しています。
さらに、社員とそのご家族へ向けたブランドブック、記念バッジ、オリジナル記念グッズなど、社内・社外それぞれに向けた“共有の物語”を丁寧に設計。従業員一人ひとりが日々のものづくりに誇りを持ち、家族とその価値を語り合えるきっかけづくりとしても機能しています。
このプロジェクトは、70年の技術と信頼を礎に、次の70年へ向けたブランド生まれ変わりの宣言です。ポーライトは、過去を敬いながらも、常に未来を創り出す企業として、新たなステージへ歩みを進めています。
まとめ|周年は「進化の起点」
周年は単なる記念ではなく、企業の未来を再構築する経営の転換点です。理念やブランド価値の再定義を通じて、社内文化の浸透と社外への発信を強化する絶好の機会となります。実際に、シモダL&C・鎌ケ谷巧業・ポーライトといった企業は、周年を起点にリブランディングを実行し、次のステージへと歩みを進めています。こうした成功事例は、周年を“進化の起点”として活かすヒントに満ちています。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/プロデューサー
ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。
Producer
CEO 豊田 善治
東京のブランディング会社 パドルデザインカンパニー

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。




