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事例から学ぶ中小企業のブランディング
中小企業だからこそできる、丁寧なブランドづくり。
限られた資源を活かし独自の魅力を丁寧に伝え続けることで、強いブランドを築きます。
事例から学ぶ中小企業のブランディング
中小企業が独自の価値や魅力を伝えるためのブランド戦略を、実際の事例を通じて学びます。大企業のように莫大な広告費やリソースがない中でも、中小企業ならではの強みや工夫を活かしたブランディングは十分に実現可能です。

中小企業ブランディングのポイント
中小企業におけるブランディングでは、単に広く認知度を高めることよりも、まずは「誰に、どのような価値を届けるのか」を明確にすることが重要なポイントです。 加えて、お客様に「なぜ自社が選ばれるのか」という理由、すなわち他社にはない独自の強みや魅力(=差別化)をしっかりと築くことが、ブランド形成において大きなポイントとなります。限られたリソースの中でも、自社の「らしさ」や「こだわり」を丁寧に伝えることで、共感を得られるブランドを育てていくことができます。
中小企業のブランディング事例7選

競争が激化する市場において、中小企業が選ばれる存在になるためには、商品やサービスの品質だけでなく「ブランド」としての価値をいかに伝えるかが重要です。限られたリソースでも、自社の強みを見極め、理念や世界観を一貫して発信することで、顧客からの共感や信頼を得ることができます。
ここでは、実際にブランディングに取り組んだ中小企業の7つの事例をご紹介します。商品ブランディングから事業・企業・採用ブランディングまで、多彩なケースを通じて、成果につながるブランドづくりのヒントを見つけていただければ幸いです。
商品ブランディング事例|日進医療器株式会社[NACTUS]
車いす市場で高いシェアを誇る日進医療器様が、新たに開発したのは「上半身を自由に使えるユーザー」に向けた5種類のアクティブ車いす。私たちはその製品群のネーミングやロゴ開発、Webサイト、コンセプトカタログ制作など、総合的なブランディングを担当しました。
ヒアリングを重ねる中で浮かび上がってきたのは、同社の強いこだわりです。機能性においてこれまでの技術を集結させただけでなく、スタイリッシュなデザインで他社との差別化を狙うという明確な挑戦がありました。 そこで私たちが掲げたのは「ほっこりさせるクリエイティブは禁止」というルール。車いすはその性質上、優しさや温かみを表現しがちですが、今回はあえてその枠を超え、「とがったかっこよさ」を軸にデザインを追求しました。その結果、展示会でもひときわ目を引く存在となり、ブランドの新たなスタートを高く評価いただくことができました。
▶︎学びのポイント
・ブランドコンセプト:前に進み続ける人へ。
・ネーミング:NACTUS(ナクタス)
・タグライン:強い。軽い。美しい。
・ロゴ:曲線と直線を融合させた滑らかなフォルム。洗練されたラインが高い操作性と、機能美を象徴
・ブランドサイト:スペックや機能面も丁寧に紹介し、ユーザーが比較・検討しやすい構成に
・ポスター:製品の多様性と魅力を、視覚的にわかりやすく伝えるクリエイティブ
・製品カタログ:ブランド訴求と情報提供の両面を兼ね備えた構成
・撮影ディレクション:日常の中にある“やりたい”を後押しする製品であること伝える

事業・商品ブランディング事例|はちみつ工房

施設の移転・リニューアルに伴い、施設コンセプト・ロゴ・新製品となる蜂蜜酒のネーミング・Webサイト・パッケージなど、VI刷新に伴うはちみつ工房のリブランディングを実施しました。商品を販売するのではなく、はちみつ体験を提供・販売するという考えのもと、はちみつの「おいしさ」と、はちみつ工房の「楽しさ」を伝える、シンプルで誰にでも分かりやすく優しいクリエイティブ表現を目指しました。
▶︎学びのポイント
・コンセプト:商品を販売するのではなく、はちみつ体験を提供・販売する
・ロゴ:「はちみつを五感で楽しむ」というコンセプトを5つの花びらで表現
・タグライン:はちみつとミード(蜂蜜酒「ミード」を、商品ブランドの主役に)
・パッケージ:はちみつと水だけで醸造された品質の高さや高純度なイメージ
・施設:ロゴをシンボルにシンプルで親しみのあるデザインに
・ブランドサイト:素材や製法へのこだわり、生産者の想い、レシピなど多角的な情報提供
・リーフレット:ブランドに品格をもたらす、上質で洗練されたイメージに
・紙袋:素朴な中にも温かみを感じさせるクラフト紙のようなやさしい紙質の紙袋
事業ブランディング事例|ゆめいろ・なないろ保育園

2009年の保育事業立ち上げから園児も保育士も集まり、事業として堅調に成長してきた、ゆめいろ・なないろ保育園。一方、5年先、10年先を見据えたとき「ただ待っているだけではなく保護者から選ばれる保育園になる必要がある」という想いから、リブランディングを実施。各園の園長先生とワークショップを行い、保育理念・保育方針・保育目標とコンセプトを策定。次いでロゴやWebサイト、ステーショナリーなど、VI刷新を図りました。
▶︎学びのポイント
・保育理念:原点に立ち返り、あるべき姿を言語化
・保育方針:大切にしてきた思いを、3つの方針として定義
・保育目標:ありたい姿・目指す姿を4項目として策定
・コンセプト:保護者や保育士たちに伝えたい思いをお手紙のように
・メッセージ:「子どもたちの未来を一緒につくりたい」という思いを言語化
・Webサイト:保育園ならではのかわいらしさや遊び心もデザイン
・リーフレット:理念やコンセプトをまっすぐに伝え、園での一日が伝わるようデザイン
・名刺・封筒:コンセプトコピーを配し、園が大切にする想いが伝わる・届くシンプルなデザインに
事業ブランディング事例|整体院/整骨院toreta

お客様のためにできること。お客様に伝えていくべきこと。それらを考え抜いた結果、リブランディングを実施。新ブランドは「整体院/整骨院toreta」。お客様が最も喜ぶ瞬間を想起したとき、このネーミングが浮かびました。従来までは自費診療の整体院として運営していましたが、リブランディングを機に保険診療を導入し、リポジショニングを実施。地元地域を中心に、多くのお客様に永く愛される整骨院ブランドを目指します。
▶︎学びのポイント
・ネーミング:お客様が最も喜ぶ瞬間=痛みの改善から「toreta」を開発
・コンセプト:toretaの技術と思いをメッセージにして発信
・ロゴ:角が丸くなり、お客様が「笑顔になる」様をシンボル化
・店舗サイン:トーン&マナーを統一し、本質的なメッセージで訴求
・Webサイト:痛くない整体を意識して、親しみやすさのある優しいトーンに
・リーフレット:清潔感のあるシンプルな情報構成で誰にでも分かりやすく
・名刺・診察券:トーン&マナーを統一しブランド想起を促すデザインに
企業ブランディング事例|不動産業|株式会社東京ミライズ

創業から10周年を契機に、リブランディングを実施。各部署から選任されたプロジェクトメンバーとのワークショップからミッション・ビジョン・バリュー、そしてブランドコンセプトを策定。ワークショップを通じて導き出した「お客様の理想の人生を実現するためのパートナーでありたい」という想いをブランドのコアに、VI開発へとつなげました。
▶︎学びのポイント
・ミッション:ドクターが抱える課題を解決へと導き、人生のパートナーであり続ける。
・ビジョン:理想を実現する人生を増やし、医療と経済の活性化に貢献する。
・バリュー:「資産」をつくる。「人生」を支える。「パートナー」になる。
・タグライン:理想の人生を、ともに描く。
・ロゴ:ミッションを、2地点をつなぐ架け橋をモチーフに表現
・Webサイト:4つの事業を具体的に伝えること、コンサルタントを数多く紹介すること、安心感を与えること。
・会社案内:企業として大切にする想いやスタンスが伝わる構成
・企業紹介動画:事業案内や5年間の業績をアピール。お取引いただくドクター4名へのインタビューを収録。
・名刺・封筒:コーポレートカラーを差し色に、上品でシンプルな構成に
企業ブランディング事例|警備業|株式会社アクティサポート

アクティサポートは、新たなValuesとして「力強い警備」と「美しい警備」を掲げ、ブランド全体を刷新しました。ロゴマークを起点に、会社案内パンフレット、コーポレートサイト、ブランドムービー、名刺・封筒といったステーショナリーツールまで、一貫した世界観で統合。Purpose「その道を通る、その場所を訪れるすべての人の、今日と未来を守る。」のメッセージを核に、警備という社会インフラを担う誇りと使命を、内外に力強く発信しています。
さらに、社員総会のオープニングを飾った動画や、リブランディングの軌跡を収めたメイキング映像を制作。社員一人ひとりに理念を浸透させ、組織全体に一体感を生み出すインナーブランディングも実現しました。アクティサポートは、これからも“警備の未来”を切り拓き、社会に新たな安心と価値を提供し続けます。
▶︎学びのポイント
・パーパス:その道を通る、その場所を訪れる、すべての人の今日と未来を守る。
・ミッション:高品質な警備で安全確保と事故防止を実現するプロフェッショナルであり続ける。
・ビジョン:安全と安心と笑顔を、すべての人に。
・バリュー:力強い警備で、安全を守る。美しい警備で、安心を創る。
・ブランドコンセプト:いい未来を、いい警備から
・ロゴ:警備の確かな実行力(強さ)と洗練された所作(美しさ)という両面の特性を、2色の帯で表現
・コーポレートサイト:ビジュアル優位なデザインで、ユーザーを魅了するサイトに
・ブランディング動画:ブランドや姿勢を直感的かつ感覚的に伝える
・会社案内:シンプルで上質なデザインを心がけ、自社をアピールできるツールに
・名刺・封筒:ロゴマークのカラーやラウンドフォルムを取り入れ、ブランドイメージを統一
・撮影ディレクション:各種警備サービスの様子を撮影。質の高い警備の様子を撮り下ろし
採用ブランディング事例|建築業|株式会社細田組

人手不足が顕著な建設業界において、若手の採用が大きな課題となっていました。当初は採用動画制作のみのご依頼でしたが、求職者との接点となるコーポレートサイト及び採用サイトのリニューアルから手掛けることに。社業や社風を表す「つなぐ」をキーワードにWebサイトを構築し、親しみやすさと安心感を伝える地域に根ざした企業ブランドへとリブランディングを図りました。
▶︎学びのポイント
・コンセプト:人と人の縁を大切にする同社の中核にある「つなぐ」を策定
・コーポレートサイト:採用強化に向け、親しみやすさと安心感を伝えるデザインに
・採用サイト:「つなぐ」をテーマに仕事のやりがいや魅力を発信
・採用動画:「見たことのない私」になれることを、採用動画を通じて求職者にアピール
・採用ポスター:認知拡大から企業イメージ向上を図り採用強化
中小企業がブランディングで取り組む5つのこと

中小企業が持つ強みや魅力を正しく伝え、顧客や地域から長く愛される存在になるためには「ブランディング」が欠かせません。大企業のように多額の広告費を投じられなくても、自社の独自性を見極め、ターゲットに合った価値を一貫して発信していくことで、信頼と共感を築くことができます。
ここでは、中小企業が実際に取り組むべきブランディングの基本ステップを5つに整理し、具体的な視点をご紹介します。
1.企業の「らしさ」を見つける
まず大切なのは、企業の「らしさ」を見つけることです。それは、他の企業にはない自社独自の価値や魅力を明らかにする作業でもあります。「なぜこの事業を始めたのか」「どのような想いで続けてきたのか」といった、創業の背景や企業の理念、これまでの歩みや思いを丁寧に振り返り、伝えていくことが大切です。
2.ターゲットを明確化する
「誰に価値を届けたいブランドなのか」は最重要要素のひとつです。特に中小企業の場合、限られたリソースで効果的なコミュニケーションを効率的に行うためには、「万人に受け入れられる商品・サービス」を目指すのではなく、具体的な人物像(ペルソナ)に向けた価値訴求が不可欠となってきます。誰に向けたブランドなのかがはっきりすればするほど、コアターゲットの共感を得やすくなり、結果として強いブランドへと成長させることができます。
3.ストーリーを語る
単に商品やサービスの特徴を伝えるだけでなく、企業や商品にまつわる「ストーリー」を語ることも大切です。創業のきっかけ、苦労してきた過程、商品開発へのこだわり、地域やお客様との関わりなど、企業の背景には多くの想いや出来事が存在します。こうしたエピソードを言葉にして伝えることで、ブランドへの共感や信頼を生み出し、ブランドに「人間らしさ」や「温かみ」が加わります。
4.一貫性のある情報発信を図る
ブランドイメージを消費者に正しく伝えるためには、すべての情報発信において一貫性を保つことが重要です。企業のロゴやカラー、トーン、メッセージ内容などが媒体ごとにバラバラでは、顧客に混乱を与え、ブランドの信頼性が損なわれてしまいます。すべてのタッチポイントで統一された表現を行うことで、ブランドの印象が強く記憶され、認知度や信頼感の向上につながります。
5.継続的な取り組みを実施
ブランディングは一度行って終わりではなく、中長期的な視点での継続的な取り組みが大切です。市場や顧客ニーズは常に変化するため、企業のブランドも時代に合わせて進化していかなければなりません。ブランド評価や見直しを定期的に行い、顧客からのフィードバックを反映させることで、信頼関係を強化し続けることができます。地道な努力はやがて、差別化された強いブランドに進化します。
まとめ:事例から学ぶ中小企業のブランディング
自社の強みや独自性を明確にし、ターゲットの共感へとつながるストーリーを一貫して発信し続けることで、限られた資源でも信頼されるブランドづくりを行うことができます。
ブランディングは難しく感じるかもしれませんが、まずは自社の「らしさ」を丁寧に見つめ直すことから始めてみてください。その強みや価値を大切に、一歩ずつ着実に発信を続けることで、必ずお客様の共感と信頼が積み重なり、魅力あるブランドが育っていきます。焦らず、自分たちらしいブランドづくり志しましょう。
東京のブランディング会社 パドルデザインカンパニー

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/プロデューサー
ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。
Producer
CEO 豊田 善治
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