無意識な消費者心理が、ブランドの意志になる。

人を動かす隠れた心理「顧客インサイト」の考察を伝授します。

Introduction

顧客インサイトとは

インサイトは直訳すると「洞察・発見・見抜く力」などの意味を持ち、マーケティングで用いられる顧客インサイト(消費者インサイト)は「顧客ですら自覚していない意識や欲求(本人すら自覚していない本音)」を指しており「人を動かす隠れた心理」とも言い換えることができます。多くの市場が成熟期を迎え、熾烈な競争を繰り広げる現代において顧客インサイトの発見は、ブランディングの最重要要素であると言っても過言ではありません。
一方、顕在化しているニーズ、例えば「短時間で食事を済ませたい」「楽して痩せたい」「快適に眠りたい」などのニーズに対しては、既に様々な企業が新商品・新サービスを開発し成功を納めています。もちろん、既存市場に対しさらなる優位性を持って参入し、市場シェア獲得を図るもの選択肢のひとつですが、何かしらの「差」を持って新規参入したとしても、近い将来には価格競争に巻き込まれることは必然だと言えます。
だからこそ大切なのは、新たな顧客インサイトを発掘し、競合他社との明らかな「違い」をつくること。そして、唯一無二のブランドとして市場に参入し、消費者に選ばれることが重要なのです。

まだ満たされていない潜在ニーズ「アンメットニーズ」を探る

一方、顕在化しているニーズに対し供給されている様々な商品やサービスだけでは、まだ満たされていないニーズを「アンメットニーズ」と言いますが、このアンメットニーズを捉え、ブランド戦略を策定することで、新市場を創造・開発していくことも可能になります。
例えば、どの街にもひとつは存在するスポーツジムですが、消費者の多くは「痩せる」ことを目的に入会しながらも「長く通い続けられない」結果から、目的を達成することができずにいる事実がありました。そのアンメットニーズを捉え、フィットネス市場にパーソナルトレーニングのサービスを持って新規参入したのが「RIZAP」です。RIZAPは「人は変われる。」を証明する。の理念のもと、「結果にコミットする」のコンセプトを掲げ広告キャンペーンを打ち出し、大成功を納めました。
ここで注意すべきは、ブランディングにおける「顧客インサイトの考察」や「アンメットニーズの探索」は、一過性の広告キャンペーンとは全く別物であるということ。一時的な集客に向けた響きの良いキャッチコピーづくりではなく、ブランドの根幹として定めるための顧客インサイトやアンメットニーズの分析であることを忘れてはなりません。

顧客インサイトの発掘に向けた「ターゲット・セグメント」

顧客インサイトを発掘するためには、どのような顧客をコアターゲットとするのか「ターゲット・セグメント」を定義することが先決です。基本的なターゲット・セグメンテーション方法には、性別、年齢(年代)、居住地、趣味・趣向、使用頻度などがありますが、ブランディング戦略考察の際は、さらにもう一歩踏み込んで考察することが大切です。消費者はブランドを選択する際、いくつかの要素が購買決定要因(KBF)になっていると考えられますが、その代表的な項目には以下3点があげられます。

(1)製品・サービスの価値観

消費者が製品・サービスに持つ価値観は、その製品・サービスカテゴリーに対する関心の深さが大きく関与すると言われています。例えば、一般的に趣味・嗜好に関連する製品・サービスは顧客の関心が深く、高い価値観を持っていると言われており、消費者は製品・サービスが提供する機能と価格のバランスに加え、ブランドの付加価値が製品・サービスの購買決定要因となることから、ブランド力が大きな影響を与えると言えます。

(2)知識・情報の深さ

消費者が製品・サービスに持つ知識・情報の深さも、購買決定要因のひとつだと言われています。例えば、パソコンやルーターなどの電子機器は専門用語が多く、製品購入にはある程度の専門知識が必要になりますが、知識・情報を深く持ち合わせる消費者は、自身が必要とするスペックを自己判断し、有名・無名に関わらず製品購入することができます。一方、知識の浅い消費者は、製品に対する判断をブランド力で補う傾向があります。つまり、ブランドにとってコアターゲットになりうる層であると言えます。

(3)価格の許容範囲

価格の許容範囲は、その製品・サービスに対して消費者がどの程度まで支払いしても良いと考えるかの範囲です。価値観と通ずる部分も一部ありますが、同じ価値観を持つ消費者でも、実際の支払いとなるとその許容範囲により製品選択は大きく変化します。 例えば、自動車の基本的な機能は移動手段であり、安全で故障がなく、燃費よく移動できる条件が揃っていれば問題ないはずですが、そこに価値観が加わり、価格の許容範囲が影響して選ばれていくことから、製品戦略価格戦略を加味してターゲット・セグメントを定義することが大切です。

ブランド戦略策定におけるターゲット・セグメントにおいて注意しなければならないのは、ブランドを購入するすべての顧客がターゲットではない。という点です。ここで設定しなければならないのは、ブランドが最も重要と考える顧客タイプ(コア・ターゲット)であり、その顧客に対して最大の満足を提供するブランディングを図ることではじめて、他社と差別化されたエッジの効いたブランドを創出することができます。

顧客インサイトの発掘に向けた「ペルソナ設定」

ターゲット・セグメントを定義した後、以降の顧客インサイト発掘に向け、ペルソナ設定を行うことも大切です。具体的なペルソナが定めることでブランディング・プロジェクトチーム内の認識のズレを補正し、コアーゲットの共通認識を持つことができるほか、ユーザー視点の精度向上へとつながり、アンメットニーズの分析がしやすくなります。

顧客インサイトの発掘に向けた「購買決定要因(KBF)」の考察

消費者の購買決定要因には、前記する「製品・サービスの価値観」「知識・情報の深さ」「価格の許容範囲」のほか、「デザイン性」「機能性」「評判」「ブランド力」「アフターサービス」などがあり、その消費者のライフスタイルや趣味・趣向により異なります。事業や製品・サービスにより購買決定要因は様々ですが、「なぜ消費者がその商品・サービスを購入したか」を深く理解することが顧客インサイトの発掘につながります。

カスタマージャーニーで顧客体験を分析する

カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを認知し、興味を抱き、調べ、購入するまでの体験と、購入後の行動を分析し、ひとつにまとめた一覧表です。消費者の顧客体験をそのプロセスに沿って「認知(接点)」「思考」「行動」「感情」の4軸に落とし込むことで、顧客体験を詳細まで分析していきます。このカスタマージャーニーのプロセスは、大きく分類すると3つの段階に分けることができます。

●第一段階の「知る」では、どのようにしてブランドを知り、理解を深め、購買行動までにどのような心理に至ったのかを分析していきます。その際、どのようなメッセージを受け取ったか、その結果、どのような心理に至ったのかを分析していくことが大切です。
●第二段階の「買う」では、比較・検討の末、どのように最終決定し購買行動に至ったのか、またどこでどのように購入したのかを分析していきます。
●第三段階の「関わり」では、購入後ブランド使用体験を経て、ブランド評価がどのように変化し、どのようなブランドロイヤルティが形成されたのか、また、その後どのような行動に至ったのかを分析していきます。

こうして顧客体験を細部まで分析し、各プロセスにおける心理状態を深く理解することで、アンメットニーズを探り、顧客インサイトを発掘していきます。

ここまで顧客インサイトの発掘手法をご紹介してきましたが、アンメットニーズの発見や顧客インサイトの発掘は、容易ではありません。素晴らしい発見から仮説を立て、検証を繰り返し、確証を経てブランディングへと進む段になると、また懸念が生じてくるなど、リリースまでに幾度となく検証を繰り返すことになります。ですが、これは正しい思考であると言えます。どこまでもしつこく、繰り返し検証を重ね、精度の高い顧客インサイトを定義することが、強いブランドをつくる大きな要因となるのです。

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