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価格戦略

pricing strategy

価格戦略

商品の違いが、
価格の差となる。

商品・サービス供給において最も重要な要素となる「価格設定手法」を学びます。
価格戦略の重要性

価格戦略は、企業収益に直接的に多大な影響を及ぼし、顧客の購買意欲にも直接的な影響を与えることから、4P戦略のなかで最も重要な要素であると言えます。企業はターゲット市場の需要を見据え、適正利益の確保とのバランスをとりながら、戦略的に価格設定を行う必要があります。

●価格設定

製品価格は様々な要因の影響を受け設定されていきますが、通常、製造コストを製造数で単価割した価格が低限となり、顧客が認める適正価格(カスタマー・バリュー)が上限となります。また、競争環境、買い手の販売力、売り手の依存度、スイッチング・コストなどの要因が影響します。

製造コストと損益分岐点

製品価格の設定では、特殊な場合を除き、製造コストが価格設定の低限となるのは言うまでもありません。しかし中には、潜在的にある広い市場を一気に獲得する場合などに、期間限定でのキャンペーンを打ち出し、製造コストを下回る低価格戦略を行う事があります。これは、市場シェアの獲得により製品の生産数が増加するにつれて、一製品あたりの生産コストが低下することを前提としているのが通常であり、そこには必ず潜在的な広い市場が存在します。

●カスタマーバリュー

価格設定は顧客が適正価格と認めるカスタマーバリューが上限となります。企業の設定する製品価格がカスタマーバリューを上回ると、製品供給力が極端に下がり、市場に製品を浸透させることができないばかりでなく、競争他社の参入が容易となり、市場シェアを一気に奪われてしまう危険性が高まります。

●競争環境

価格設定を検討するうえで大きく影響を受けるのが競争環境です。特に差別化のしにくい製品の場合、競合他社よりも高い価格設定を行えば競争力が極端に下がり、製品供給は容易ではなくなります。逆に低い価格設定を行えば競争力が極端に高まり、製品供給は加速度的に増加します。競争環境に左右されず価格設定を行いたければ、自社製品を差別化し、価格とは別の製品価値を付加して行かなければなりません。主な付加価値には、「機能」「デザイン」「ブランド」「サービス」等があげられます。また価格設定は、競合他社の影響を受けやすく価格競争に陥りやすいこともあり、自社製品のポジションを見定め、将来性を加味して検討して行かなければなりません。

●スイッチングコスト

価格設定は、直接的な要因だけでなく、間接的な要因としてスイッチング・コストも影響を及ぼします。スイッチング・コストとは、買い手が仕入れ先を変更する際に発生する「手間」や「労力」を指しており、システム開発などはシステムを熟知している開発元から他社に切り替えることによるリスクが高く、また新会社に移行する手間が計り知れないことからスイッチング・コストの高い製品であると考えられ、中長期でのサービスを視野に入れた価格設定がなされる事が多くあります。

3つの価格設定方法

市場に流通する製品は、製造コストやカスタマーバリューから設定されています。その設定方法は多種多様で、製品の数だけ細分化されると言っても過言ではありません。では、主にどのように設定されているのか、詳しくご説明していきます。

●コスト志向での価格設定

コスト志向での価格設定とは、製造コストに利益を上乗せして価格設定を行う方法です。扱う商品やサービスにより3つの価格設定方法があり、製造コストに利益を上乗せする「①コストプラス価格設定」、製造価格に一定額の利益を上乗せして価格設定を行う「②マークアップ価格設定」、事業規模を想定し一定の利益が確保できるよう価格設定を行う「③ターゲット・リターン価格設定」があります。

①コストプラス価格設定
コストプラス価格設定とは、製造コストに利益を上乗せして価格設定を行う手法で、原価志向の価格設定手法の一つです。売買契約は成立しているものの、契約外の追加コストを要するシステム開発や、事前にコストのはっきりしない建築業界などで多く用いられます。コストプラス価格設定の問題点は、原価に応じて価格設定を行うことから、売り手側にコストダウンの意識が働きづらい点にあります。売り手が快適に対して強い交渉力を有している際には、買い手に対し追加請求を行う場合もあります。こうした事が起きないよう、描いては事前に支払い上限を定めるなど、明確な取り決めをしておく事が大切です。

②マークアップ価格設定
マークアップ価格設定とは、製造価格に一定額の利益を上乗せして価格設定を行う手法で、原価志向の価格設定手法の一つです。主に流通業で用いられており、製品特性によりマークアップ度合いが異なります。薄利多売型の最寄品(コモディティ)では利幅が薄く、反対に高級型の専門品では高い利幅が設定される事が多いと言えます。

③ターゲット・リターン価格設定
ターゲット・リターン価格設定とは、事業規模を想定し、企業が目標とする一定の利益が確保できるよう価格設定を行う手法です。製造設備の稼働率が価格設定に大きく影響する自動車業界などで採用されています。

●ニーズ志向での価格設定

ニーズ志向での価格設定とは、市場ニーズに合わせ価格設定を行う方法です。ニーズ志向での価格設定には、マーケティング・リサーチなどにより市場のニーズと市場の価格帯を見つけ出し、ターゲット・セグメントに優位に働く価格帯を設定する「①知覚価値 価格設定」、顧客層、時間帯、場所によって異なった価格帯を設定していく「②需要価格設定」と大きく2つの方法があります。

①知覚価値 価格設定
知覚価値 価格設定とは、マーケティング・リサーチなどにより、市場のニーズと市場価格帯を見つけ出し、製造コストを照らし合わせて価格を設定していく手法です。この段階でもし製造コストが高い場合には、仕様変更など製造コストの見直しを行い、市場価格帯での価格設定ができるよう見直していきます。企業利益を最大化するためには、この市場価格帯を見つけ出し、顧客が適正価格であると認識させるための「イメージ創り」や「ブランディング」など、あらゆる活動を行っていく必要があります。

②需要価格設定
需要価格設定とは、顧客層(学生、社会人、男性、女性など)、時間帯(日中のアイドルタイム、深夜時間帯など)、場所(エコノミー、ビジネス、ファーストなど)によって異なった価格を設定していく手法です。携帯電話業界では通話料や基本料の「学割」、電気事業社では「深夜料金」など、需要価格設定を複合的に行っていることが分かります。また、OEM製品と一般製品では、中身は同じ製品であっても価格設定が異なり、近年では、イトーヨーカドーやセブンイレブンを運営するセブン・アイ・ホールディイングスがOEM製品に力を入れ、製品の低価格化と利益の最大化を図っているのが分かります。

●競争志向での価格設定

競争志向での価格設定には、競合複数社の価格競争で売り手を決定していく「①入札価格」、競合他社の価格設定を十分に加味したうえで、自社製品の価格設定を行う「②実勢価格」と大きく2つの方法があります。

①入札価格
入札価格とは、予め策定された仕様や一定基準に従い、競合複数社の価格競争で売り手を決定していく手法です。買い手は、入札によって最も低価格で参入できる売り手を探すことができる一方、価格だけで判断せざるえないことから、技術・能力的に劣る業者を選定せざるをえないという弊害が起こっているのも事実です。

②実勢価格
実勢価格とは、競合他社の価格設定を十分に加味したうえで、自社製品の価格設定を行う手法で、多くの業界で用いられています。プライスリーダーが存在する業界では、プライスリーダーが価格設定を行い、2番手以下の企業はプライスリーダーの価格設定を元に、競争他社の状況を踏まえて価格設定を行います。

製品ライフサイクルに合わせた価格設定

「価格設定」では、価格設定要因(製造コストと損益分岐点、カスタマーバリュー、競争環境、スイッチング・コスト)や、価格設定手法(コスト志向での価格設定、ニーズ志向での価格設定、競争志向での価格設定)をご紹介してきましたが、製品ライフサイクルに合わせた価格設定も視野に入れなければなりません。

●導入期の価格設定

製品ライフサイクル初期の導入期における価格設定には、販売量の増加と反比例し製造コスト単価が下がることを想定した「ぺネトレーション・プライシング」、参入初期に高価格を設定することで早期の資金回収を行い、以降、ローリスクで低価格化打ち出していく「スキミング・プライシング」と、大きく2つの方法があります。取り扱う製品・商品や業界により傾向が異なることから、自社業界や製品にどちらが適切かを見極める必要があります。

①ぺネトレーション・プライシング
導入期の価格設定では、販売量の増加と反比例し製造コスト単価が下がることを想定した、ぺネトレーション・プライシング(市場浸透価格設定)が行われることが多くあります。製造総量が増加することで生産プロセスは効率化され、同時に原材料の大量仕入れが行われることで、製造コスト単価を著しく下げる手法で、かつて日本の電機メーカーによる海外進出の際には、ぺネトレーション・プライシングが採用されました。 ペネトレーション・プライシングは、低価格で参入することで、市場を拡大すると同時に一気に市場シェアを獲得することを目的とした価格戦略で、中長期で利益の最大化が見込まれる反面、参入当初は先行投資が嵩むことから、ハイリスク・ハイリターンな戦略であるといえます。

②スキミング・プライシング
スキミング・プライシングとは、参入初期に高価格を設定することで早期の資金回収を行い、以降、ローリスクで低価格化を打ち出していく価格戦略です。巨額な先行投資を必要とする製品製造で用いられる方法で、製品開発をいち早く行った企業が用いることができます。スキミング・プライシングは、他社製品との差別化が明確で、市場競争の心配が少なく、価格の高低にニーズが左右されない場合にのみ採用することができ、生産財・産業財など、BtoB製品の価格設定に多く見られる戦略です。

●成長期の価格設定

製品は成長期になると生産数が著しく増加します。すると生産ラインは効率化され、大量仕入れによる原価コストの削減から製造コスト単価が下がり、企業が得る利益もピークを迎えます。この時期には、競合の新規参入が相次ぎ、競争激化による市場シェア争いにより価格は低下傾向となっていきます。また同時に、セグメント毎のサービス向上が行われます。この段階になると、企業は適切なタイミングで自社製品のポジションを見直し、新たなマーケティング戦略を検討しなければなりません。

●成熟期の価格設定

製品価格は成熟期になると低下の一途を辿ります。しかし値下げを行う場合も注意が必要で、品質やサービスの低下を招いてはいけないのはもちろんのこと、製品イメージを崩した価格戦略は、低価格=低品質のイメージを植え付けてしまう事から、絶対に避けなければなりません。また、一度引き下げてしまった製品価格を再び上げることは容易ではなく、顧客が納得する適切な理由がなければ、客離れが進んでしまうことは明らかです。 企業は価格変更による様々な影響を念頭に置いたうえで、慎重に検討していくとともに、顧客へのプロモーションにも細心の注意を払わなければなりません。

●衰退期の価格設定

衰退期になると、需要の低下から売上の減少が始まります。衰退期になると値下げしても需要の回復が見込めず、衰退の一途を辿ることから、各企業はいち早い在庫処分を目指し、値下げの競争が起こります。当然、利益率も低下の一途を辿るため、企業は「雇用問題」及び「既存顧客の問題」の解決を図りつつ、撤退のタイミングを図らなければなりません。

価格戦略 成功の秘訣

企業のキャッシュ・フローに直接影響を与える価格設定は、マーケティング戦略の要であるといえます。新製品開発時はもちろんのこと、製品ポジショニングや、製品ライフサイクルに合わせた価格戦略の見直しを定期的に行い、市場シェアと企業利益の最大化を図ると同時に、柔軟な姿勢で市場を見据えていくことが、価格戦略 成功の秘訣です。

●低価格戦略や価格の見直しにより成功しているブランドの一例


➡︎マクドナルド(ファストフード)
マクドナルドは、景気動向を加味した様々な価格戦略を取り入れています。例えば、500円のバリューセットや100円マックによる集客が代表的な例に挙げられます。また、2004年には、注文を受けてからハンバーガーをつくり、出来立てをお渡しする「メイド・フォー・ユー(Made For You)」をほぼ全店に導入し、その美味しさと比例した値上げに成功しています。

➡︎ファーストリテイリング[ユニクロ](アパレル)
コスト・リーダーシップ戦略で、業界全体の広い顧客をターゲットに、他社のどこよりも低コスト実現をすることにより競争優位に立つ「ユニクロ」。同時に高品質も兼ね備え、世界で認められるブランドとなりました。2006年には、20代後半から30代前半の若いファミリー層をターゲットとした新ブランド「GU」を立ち上げ、低価格戦略で市場シェア獲得を目指しています。

➡︎ニトリ(家具・インテリア・生活雑貨)
「お値段以上」のキャッチフレーズで、高品質な商品を低価格で販売し、成功を収めているニトリ。地方大型路面店やショッピングモールへの出店で圧倒的な集客力を誇り、今や日本を代表する家具・インテリア・生活雑貨メーカーとなりました。

➡︎QBハウス(ヘアカット専門店)
シャンプー、ブロー、パーマ、カラーリング等といった、従来の理美容室で行うサービスを一切省く事で低コスト化と、スピードアップ(10分という圧倒的短時間でのヘアカット)を図り、成功を収めています。

➡︎サイゼリア(ファミリーレストラン)
大手ファミリーレストランのイタリア料理店であるサイゼリアは、殆どのメニューが500円以下と、圧倒的な低価格でのメニュー提供で成功を収めています。また、ドリンクバーやワインなども提供し、ファミリーレストランとしての市場ニーズも満たしています。

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