コミュニケーション形成から、モチベーション向上を図る。

環境変化に適応する、現代のリーダーシップを学びます。

Introduction

時代とともに変化するリーダーシップ論

アイオワ研究(レビンのリーダーシップ類型)、オハイオ研究、ミシガン研究(リッカートのマネジメント・システム論)を前記では紹介してきましたが、リーダーシップ論は時代とともに変化を遂げています。

1940年代では、リーダーシップは先天性な要因が強く、生まれながらにしてリーダーであるとされていましたが、アイオワ研究でリーダーシップ行動論が提唱され、リーダーシップは言動やマネジメントのあり方で持ち合わせることができるとして現在にも引き継がれています。次いで1950年代に行われたオハイオ研究では、体制づくり重視型のリーダー、配慮重視型のリーダーの研究が行われ、それぞれのリーダー特性とフォロワー感情の傾向が提唱され、現在のリーダーシップ理論の礎となっています。

また、ミシガン研究(リッカートのマネジメント・システム論)で1960年代に提唱された、リーダーシップに関わる管理システムの4分類では、現代における企業・組織のリーダーシップ像を明確に4分類していることから、自社組織を客観視することで分析することのできる大変有意義な理論であると言えます。
一方、こうした行動理論もまた、1960年代になると限界が指摘され、「どのような状況下においても唯一普遍で最適となるリーダーシップは存在しない」という疑問から「どのような状況下であればリーダーシップを発揮し続けられるのかの検証が行われ「条件適合理論」が提唱されました。これを踏まえ、さらに進化した以降のリーダーシップ理論を紹介していきます。

条件適合理論に基づくコンティンジェンシー理論

「どのような状況下においても唯一普遍で最適となるリーダーシップは存在しない」という前提から1964年にフィドラー(F.Fiedler)により提唱されたのが、条件適合理論に基づくコンティンジェンシー理論です。企業・組織は、周囲の環境や状況が常に変化し、状況に応じた臨機応変な対応が求められるのと同様に、リーダーシップのあり方においても、決められた方法を続けるのではなく、状況に応じてリーダーシップ・スタイルを変化させる必要があるとして、リーダーのタイプを大きく二つに分類しています。

●職務志向と人間関係志向

リーダーシップ・スタイルは、タスク中心に指示を行う「職務志向」と、人間関係を重視し指示を行わない「人間関係志向」に大きく二分類され、状況に応じてその強弱が調整されるとしています。ここで言う「状況」は、人間関係における得手・不得手(好き・嫌い)を指しており、それぞれの個性に合わせリーダーシップ・スタイルを変化させる必要がある。と言う点が重要なポイントだと言えます。

また、リーダーシップ・スタイルを評価する指針として、LPC(Least Preferred Coworker=最も嫌いな同僚)という指標を定めており、LPC指数が高いリーダーは、苦手な同僚とも友好な関係を築くことのできる「人間関係志向」、逆にLPCが低いリーダーは、苦手な同僚との人間関係よりも職務遂行を優先する「職務志向」として分類されるとしています。

さらにLPCの評価は、以下3つの状況変数(評価軸)が影響していると考えられており、「LPC×状況変数」により、リーダーシップによりあげられる成果が決まるとされています。
◉状況変数01:リーダーが支持されているか
◉状況変数02:仕事が構造化されており課題が明確か
◉状況変数03:リーダーに権限が与えられているか

LPCの高いリーダーは、人間関係構築については高い数値を出しやすいため、より高い成果をあげるためには「仕事の構造化と課題の明確化」や「メンバーのタスク管理」が必要になり、一方LPCの低いリーダーは、業務遂行以前に「メンバーとの人間関係及び信頼関係を構築」し、メンバーからの支持を得た後に「仕事の構造化と課題の明確化」を図ることが重要であると言えます。

コンセプト理論に基づく5つのリーダーシップ・スタイル

コンセプト理論は、状況に応じてリーダーシップ・スタイルを変化させる必要があるとして「条件適合理論」を継承した理論であり、環境変化に応じたリーダーシップのあり方をさらに深掘りし、具体的なリーダーシップを以下の5つのスタイルに分類しました。

●企業・組織を力強く牽引する「カリスマ型リーダーシップ」

カリスマ型リーダーシップとは、カリスマ的な才能を持ち、並外れた行動力と発想力、そしてメッセージ発信力で企業・組織を力強く牽引していくリーダーシップです。代表的な人物にはAppleのスティーブ・ジョブズ氏、Microsoftのビル・ゲイツ氏、日本国内においては楽天の三木谷浩史氏、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏などが挙げられます。

カリスマ型リーダーシップにおいて重要なのは、いかにして周囲にカリスマ性を認知してもらうかにあります。カリスマと認知されるためには、日頃の言動はもちろん、組織を牽引するビジョンの発信、ビジョンの実現に向けた並外れた行動力、そしてリスクを恐れないチャレンジ精神、さらには現実的かつ客観的な評価スキルを持ち併せ、組織全体のモチベーション源泉となる人間性や人徳が不可欠であると言えます。

カリスマ型リーダーシップは、組織を急成長させる原動力となる大きなメリットがある一方、リーダーの影響力が強すぎることで生じるリーダーへの依存や、後継者育成の問題などが生じる懸念を孕んでいます。

●変わるべき時に力強く発揮される「変革型リーダーシップ」

変革型リーダーシップとは、企業・組織の発展に向け、経営方針を抜本的に見直すなど、企業・組織が変革に迫られた際に発揮されるリーダーシップです。代表的な人物には、日産自動車のカルロス・ゴーン氏、日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸氏、良品計画の松井忠三氏、日本航空の稲盛和夫氏などが挙げられます。

変革型リーダーシップにおいての要点は、リーダーシップ=変革能力とし、管理能力=マネジメントと明確に区別している点にあります。また、変革を必要とする状況下において必要なリーダーシップは、①方向を定めること、②部下を目標に向けること、③部下のモチベーションを高めること、の3点に集約し、部下の自発的な行動を促し行動変容を促すことこそリーダーシップであるとしています。

また、変革型リーダーシップにおいて重要なのは、ビジョンを明確に定め、最初に明示することだとしています。ビジョンとは具体的なゴールであり、ゴールに到達した状態を明確化することで、部下のモチベーション向上を図り、行動変容を促します。

変革型リーダーシップ理論の代表的な学者である、ミシガン大学ビジネススクール教授のノール・M・ティシー(Noel M.Tichy)は、「企業・組織が長期的に勝ち続けるために変革型リーダーシップは必要なものである」と述べており、早い段階で小さな成功をもたらすことができたり、その積み重ねにより、さらに大きなブレイクスルーを実現できるメリットがあるとしています。
一方、カリスマ型リーダーシップ同様に、組織を牽引するビジョンの発信、ビジョンの実現に向けた並外れた行動力、そしてリスクを恐れないチャレンジ精神、さらには現実的かつ客観的な評価スキルが必要となることから、次世代リーダーの育成には多大な時間を要する点が難点として挙げられます。

●感情レベルに働きかける「EQ型リーダーシップ」

EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、直訳すると「感情的知能指数」となり、「心の知能指数」と呼ばれています。そのEQに着目したリーダーシップがEQ型リーダーシップです。20世紀末期にアメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)により提唱されたこのEQ型リーダーシップは、「部下の感情を正しく導くことで、組織運営を良い方向に導く」という考えに基づいています。

EQ型リーダーシップは、メンバーとのコミュニケーションが不可欠とされており、以下4つのポイントから成り立っており、①から④を段階的にクリアすることではじめて、EQ型リーダーシップを適切に発揮することができます。
①自分の感情を認識する
②自分の感情をコントロールする
③他者(メンバー)の気持ちを認識する
④人間関係を適切に管理する

メンバーを理解し、信頼関係を構築するには、共感が必要です。共感するためには、まず自分の感情を認識し、コントロールできなくてはなりません。また、メンバーの気持ちを認識することも重要です。これらができて、はじめて人間関係を適切に管理することが可能となり、価値観を共有しながら組織を率いるリーダーシップを図ることができるのです。

●ファシリテーション型リーダーシップ

ファシリテーション型リーダーシップとは、メンバー個々の自主性を尊重し、メンバーの積極性を高めるとともに意見や情報を引き出すファシリテーションを行いながら全体を牽引していくリーダーシップです。
ファシリテーション型リーダーシップにおいて重要なのは、リーダーによる意見の押し付けや指示命令を行うのではなく、自身は中立な立場で、メンバーを主体に意見や情報を引き出す点にあります。時には会議などの場で発言を促したり、議論をまとめたり、意見や情報を提供してくれたメンバーを鼓舞したり、メンバーが自主的かつ積極的に言動を起こしたくなるようサポートしてくことが大切です。

ファシリテーション型リーダーシップには、議論の場において自身の感情をコントロールし、メンバー個々の意見を尊重しながら結論に導いていく「場のまとめ役」としてのスキルが求められます。会議においては、会議の目的とゴール設定、そして意思決定プロセスをあらかじめ明確に定め、メンバーに共有することも重要なポイントだと言えます。

ファシリテーション型リーダーシップは、メンバー主導の組織運営となるため、メンバーのモチベーション向上にとても効果的であると言えます。一方、メンバーの意見の取りまとめができなければ、議論が堂々巡りとなるばかりか、意見の対立からメンバー同士の軋轢を生み出すことにつながる危険性も孕んでいるため、リーダーは適切なスキルを身につけるとともに、日頃からメンバーとの信頼関係を築き、協力したくなる人間関係を構築する必要があります。

●サーバント型リーダーシップ(支援型リーダーシップ)

サーバント型リーダーシップとは、「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という奉仕の精神に基づくリーダーシップで、部下を中心に考えた組織運営を行います。個々のメンバーとの信頼関係を重視し、部下の話に耳を傾け、気持ちを理解した上で個々のモチベーションに気を配りながら協力して目標達成を図ります。例え失敗しても、メンバーを責めるのではなく、それを学びに変える環境づくりを行うなどが特徴です。

サーバント型リーダーシップは、現代社会において最も重視されるリーダーシップのあり方だと言われており、上司・部下との信頼関係が築けることでチームが一体となり目標達成に尽力し、結果的に高い生産性を生み出すことができます。それだけでなく、退職率低下にもつながることから、企業運営に必要不可欠なリーダーシップであるとも言えます。

対照的なリーダーシップには「支配型リーダーシップ」があります。支配型リーダーシップでは、リーダーの強い意思のもと、リーダー自身の考え方や価値観を貫き、部下を管理・命令することで組織を動かしていきます。強制型リーダーシップとも呼ばれ、社員の主体性よりも会社の方針を重視したリーダーシップのあり方でした。高度成長期における多くの日本企業は、この支配型リーダーシップが主流であったと言えます。時代が変わり、社会がグローバル化することでビジネスの目まぐるしい環境変化が起こる現代では、人材にも多様性が求められるようになり、必然と支配型リーダーシップから、サーバント型リーダーシップに移行してきています。

企業・組織にサーバント型リーダーシップを取り入れる際には、まずは経営層からその精神を持つことが重要です。また、顧客や従業員満足度の向上を最優先課題に置き、上司から部下へとその精神や考え方を徐々に浸透させていきます。顧客との接点を最も多く持つ一般社員を最上位に、逆ピラミッド型を想定した組織づくりを行い、経営者は管理職を支え、管理職は一般社員を支える組織を目指すことが大切です。

EQ型の6つのリーダーシップ・スタイル

現代のリーダーシップ理論で重要となるポイントは、「リーダーシップは個人の資質やスキルだけでなく、他者や環境により変化させる必要がある」という考え方です。EQ型のリーダーシップでは、そのリーダーシップ・スタイルを6つに分類し、状況に応じて6つのリーダーシップを使い分けることが大切である、と提唱しています。

●01.ビジョン型リーダーシップ

方向性を示すことで、部下の感情を上向かせ、企業・組織を良い方向へと導いていくリーダーシップです。チーム全体で共通の目標を設定するなど、組織としてのコミットメントを生み出す点がポイントです。

●02.コーチ型リーダーシップ

部下の長所・短所、得て・不得手などを対話を通して引き出し、自覚を促すプロセスからメンバーをサポートするリーダーシップです。自覚に基づいて行動目標の設定をサポートする点がポイントです。

●03.関係重視型リーダーシップ

業務目標の達成よりも、メンバーの感情面のケアを重視したリーダーシップです。メンバー一人ひとりのメンタルケアを行うことでチーム内のコミュニケーションを円滑にし、組織の結束を強めていく点がポイントです。

●04.民主型リーダーシップ

個別対話やグループミーティングなど、メンバーとのコミュニケーションに多くの時間を割き、メンバーの考え方をヒアリングしながら方向性を決定していくリーダーシップです。メンバーの意見を徴収することで、摩擦なく意思決定をチーム内に共有することができる点がポイントです。

●05.ペースセッター型リーダーシップ

リーダーが部下に高レベルのパフォーマンスを求めるだけでなく、それを自らがやってみせることで「できる」ことを背中で見せていくリーダーシップです。メンバー全員が有能でモチベーションが高い場合に際立った成果を上げることができる点がポイントです。

●06.強制型リーダーシップ

メンバーに対し一方的に指示・命令を行う一方、理由を説明しない強制的なリーダーシップです。組織内の不協和音を招く懸念が高い一方、緊急時など危機的状況を乗り切る場面では効果的に働くことがある点がポイントです。

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