従業員との信頼関係なくして、ブランディングは為し得ない。

企業の成長やブランド価値提供に多大な影響を及ぼす、従業員の「ブランド・エンゲージメント」とは。

Introduction

ブランド・エンゲージメントとは

エンゲージメント(Engagement)は、英訳すると約束、契約、婚約、関わりなどの意味を持ちますが、ブランド・エンゲージメントでは、企業の活動やブランドに対する人々の深い関係性を意味しています。企業は、広報や広告などのタッチポイントを通じてブランドの魅力をターゲットに伝えていくことで、ブランドロイヤルティを高め、ブランド・エンゲージメントを強化していきます。
ブランド・エンゲージメントは、大きく分けて「従業員のブランド・エンゲージメント」「消費者のブランド・エンゲージメント」の2つがあり、ブランディングにおけるブランド・エンゲージメントは、ブランドプロポジションを実践する「従業員のブランド・エンゲージメント」が特に重要であると言えます。

従業員のブランド・エンゲージメント

企業にとって従業員は、最も大切な経営資源のひとつであり、事業運営に不可欠な資産であると言えます。一方従業員にとって企業は、単なる“賃金を稼ぐための場所”ではなく、人生で最も大切な時間を費やす場所となります。企業内には、職場環境、人間関係、仕事の意義・やりがい、待遇、評価システムなど、企業と従業員を結ぶ多くの要素が点在しており、それら要素への従業員満足度(ES/ Employee Satisfaction)が企業に対する帰属意識・愛着・信頼関係に大きな影響を及ぼします。つまり、従業員のブランド・エンゲージメントは、企業と従業員を結ぶ要素の一つひとつが、従業員にとってどれだけ魅力的であるか、従業員のことをどれだけ考えられているか、で決まると言っても過言ではありません。

従業員のブランド・エンゲージメントがなぜ重要なのか

競争の激化する現代社会において企業は、他社との差別化を図り、自社優位性を築くことで消費者から選ばれています。また企業は、自社の商品・サービスに信頼や安心などのブランドを付加し、消費者がブランド体験をすることで、消費者の頭の中でブランドとの信頼関係を築いていきます。その際、消費者との信頼関係構築を実践するのは従業員に他なりません。だからこそ、従業員が企業や商品に愛着を持ち、ブランドに誇りを持つことが大切であり、従業員とのブランド・エンゲージメントはそのまま、消費者へのブランド・エンゲージメントに直結することから、ブランディングにおいて従業員のブランド・エンゲージメントが重要だと断言できます。

従業員のブランド・エンゲージメントが重要視される背景

グローバル化が進み、2019年にパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス(COVID-19)の影響も相まって、日本の働き方改革は急激な進歩を遂げました。また、終身雇用の概念が崩壊し、人材の流動化も激しくなっています。そんな時代において、従業員のブランド・エンゲージメントは企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。大きく3つの背景と、従業員のブランド・エンゲージ強化のメリットをご紹介します。

背景① 人材の流動化が激しくなっている

高度成長期に定着した終身雇用の概念は、既に崩壊したと言えます。ひとつの企業で「一生勤め上げる」労働者は稀で、転職や独立は今や当たり前の時代であると言えます。そんな時代において企業は、いかに優秀な人材を確保するかが重要であり、企業の未来を左右する最重要課題のひとつであると言えます。

➡︎離職率低下へとつながる
従業員のブランド・エンゲージメントが高い企業では、従業員の企業への帰属意識も高く、仕事にやりがいと誇りを感じているなど従業員のモチベーションが高いため、離職率が非常に低いと言えます。採用課題の優先度が高い企業こそ、何よりも先に従業員のブランド・エンゲージ強化を図ることが大切です。

背景② 働き方が多様化している

近年、急激な進歩を遂げた日本の働き方において、フレックス制度、裁量労働制、そしてテレワークの導入が当たり前の時代となり、すべての従業員がひとつのオフィスで緻密なコミュニケーションを図る働き方は、今や古い働き方となりました。特に、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方を尊重する「非対面型のテレワーク」は、従業員同士のコミュニケーションが必要最小限となり、先輩社員・上司との信頼関係構築や、従来まで行われていた上意下達、そしてOJT教育が難しくなっていると言えます。

また、先輩社員や上司とのコミュニケーションが最小化することで、社内の人間関係は以前よりも希薄になっています。社歴の長い従業員であれば比較的自分で解決できる悩み事も、社歴の浅い従業員は多くの不安を抱え、自分で結論を出すことが多くなります。そして、「企業から本当に必要とされているのか」「正当に評価されているのか」など、小さな不満を解消することなく、積み重ねてしまう傾向があるのも否めません。

➡︎モチベーション強化へとつながる
従業員のブランド・エンゲージが高い企業では、企業文化や風土を理解する先輩社員や上司が、社歴の浅い従業員への積極的なコミュニケーションを図る傾向が強いと言えます。また、企業との信頼関係が強いほど、他者を巻き込んだモチベーション向上施策が自発的に行われていきます。従業員のモチベーション向上に課題のある企業であればあるほど、いち早く従業員のブランド・エンゲージメント強化を図らなくてはなりません。

背景③ 市場での競争が激化している

スマートフォンが普及し、個人がSNS等で自由に情報発信できる現代において消費者は、以前とは比較にならない量の情報に接することができるようになり、消費のあらゆる選択肢が飛躍的に増加しました。さらに、AIの進化やグローバル化により、企業のライバルは国内から世界中へと拡大したことで、あらゆる市場で熾烈な競争が繰り広げられています。企業は生き残りをかけ、競合他社との差別化の必要性に迫られており、企業価値の明確化や優位性の具現化による「差別化されたブランド体験の提供」が急務となっています。

➡︎顧客満足度向上へとつながる
従業員のブランド・エンゲージメントが高い企業では、多くの従業員が仕事に誇りを持ち、やりがいを感じています。従業員のモチベーションが高ければ、提供する商品・サービスの品質も向上し、新しいアイデアも生まれてくるかも知れません。従業員のブランド・エンゲージメントは、顧客満足度に直結し、企業価値を高める重要な要素のひとつなのです。

従業員のブランド・エンゲージメント向上施策

従業員のブランド・エンゲージメントに強い影響を及ぼすポイントには、①理念の共感、②働きやすさ、③空間・設備、④やりがい、⑤成長機会、⑥人間関係、⑦評価制度、の7つが考えられます。これらのポイントを充実し、従業員満足度(ES)を高めることが、従業員のブランド・エンゲージメント向上につながります。ここでは、①から⑦に関する施策の考え方を端的にご紹介していきます。

①理念の共感

従業員が企業理念・経営理念を理解し共感しているほど、企業への帰属意識は高まり、モチベーションは向上すると言えます。そして理念を重視し、理念の実践を目指す経営手法が「理念経営(ビジョナリー経営)」です。理念経営では、ミッション・ビジョン・バリューを明文化し、自社の社会的役割や存在意義、価値観などの共有・浸透を図り、すべての従業員の意志統一を図ることで、組織の一体化を目指します。

②働きやすさ

ライフスタイルが多様化する現代において、従業員一人ひとりに合わせた働き方はとても重要なポイントになると言えます。ONとOFFをしっかりと線引きし、就業時間や就業場所に自由度を持たせる「フレックスタイム制」や「裁量労働制」を導入するなど、従業員のワーク・ライフ・バランスを第一に考えた仕組みづくりを行うことが大切です。すべての従業員が心身ともに無理なく働ける環境を整えることが、従業員との信頼関係構築の第一歩です。

③空間・設備

従業員が多くの時間を過ごす空間(職場環境)は、快適かつ健康で、就業意欲の湧き立つ空間でなければなりません。また、そのための設備も適切に配置し、不満のない職場環境を整えることが大切です。空気環境、温度管理、清潔感、そして遊び心など、従業員が「ここで働きたい」と思えるような空間づくりを行いましょう。

④やりがい

仕事そのものにやりがいを感じられる仕組みづくりをすることも大切ですが、部下からの意見を尊重・承認する、信頼して任せる、日頃の貢献を評価するなど、承認欲求を満たし、自尊心を高めることで、従業員の貢献意欲を高めることができます。仕事のやりがいは、認められ、必要とされることにあります。小さなことから積み重ね、褒める・認める・称賛する企業文化を形成することが大切です。

⑤成長機会

従業員の成長意欲は、企業へのブランド・エンゲージメントが大きく影響すると言えます。また、上席者の言動や伝え方にも左右されます。教育制度や研修はもちろん不可欠ですが、単に教えるだけでなく、双方向でのコミュニケーション施策を取り入れ、褒める・認めるなど、成長意欲向上に向けた上席者からのフィードバックも忘れてはなりません。小さな成功体験の積み重ねが、一早い成長機会へとつながります。

⑥人間関係

内閣府が2017年に行ったアンケート(※)によると、新卒入社の退職理由の第2位が「職場の人間関係の不調」となり、4人に1人となる23.7%が退職理由として挙げています。職場による人間関係は、コミュニケーションが不足するほど起こりやすくなるため、テレワークが当たり前となった現代において、特に注意すべき点であると言えます。社内のコミュニケーションを活性化させ、従業員同士の信頼関係を深めるには、ランチミーティングや懇親会など定期的にコミュニケーションの場を設けるほか、感謝の気持ちを紙に書いて伝え合う「サンクスカード」の活用などが有効です。また、メンター制度を設けるなど、社歴の浅い従業員の心のケアを丁寧に行うことも大切です。

※内閣府:特集 就労等に関する若者の意識

⑦評価制度

いくら努力をしても評価されない、結果を出しても正当に評価されない企業では、従業員のモチベーションは上がりようもありません。従業員のモチベーションを高め、ブランド・エンゲージメントを向上させるには、意見を尊重・承認する、信頼して任せる、普段の貢献を評価するなど、承認欲求を満たし、自尊心を高めることに加え、公平かつ透明性のある人事評価制度を取り入れることが大切です。売上を重視するばかり売上評価に偏る企業では、従業員は企業のために働くことはありません。能力・情意や、成果に至るまでのプロセスを適切に評価する制度があってはじめて、従業員のモチベーション向上及びブランド・エンゲージメント強化へとつながります。

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