安心と信頼を具現化する企業ブランディング。

受注・採用強化に向けブランド強化を行った、建設業のブランディング事例を紹介します。

Introduction

建設業におけるブランディングの必要性

建設業における最大の課題は人材不足です。業界を挙げて積極的にDX化に取り組んではいるものの、大手ゼネコンから地場工務店に至るまで、少子高齢化の波を受け、現場管理職から職人まで人手不足は解消されていないのが現状です。一方、新築から改修工事に至るまで建設バブルは留まることがなく、日本経済の根底を支える一大産業であることは変わりありません。

そんな建設業におけるブランディングの目的は、大きく2つに分けることができると言えます。主に事業者向けのB2Bビジネスを営むゼネコンや下請け事業者は採用強化、個人向けのB2Cビジネスを行う事業者は受注拡大です。

いずれにせよ、信用・信頼・安心の企業ブランドを築くことで、中長期的な売上拡大に寄与する唯一の施策がブランディングであることに変わりはありません。だからこそ、戦略の根幹に他社との違いを明確に示すブランディングが不可欠だと言えます。

直近の課題によりMI(マインド・アイデンティティ)開発以降に取り組むブランディングの優先順位が前後する場合がありますが、課題解決に向け一歩ずつ着実な取り組みを重ねていくことが大切です。

ブランディングは独自性の言語化からはじまる

業種・業界を問わず企業ブランディングでは、ブランドの中核となるMVV(ミッション/ビジョン/バリュー)開発から手掛け、次いでブランドコンセプト、タグラインなどのメッセージシステムを構築していきます。なかにはVI開発(Webデザイン/パンフレット制作など)を先行したいとご要望を受けることがありますが、ブランドデザインにおいて重要なのは「何をデザインするのか」を正しく定義することにあります。そのため、ブランドの中核となるメッセージシステムの言語化から独自性(自社らしさ)を正しく定義し、定義された独自性をデザインで具現化することが大切です。

建設業界のブランディング事例

これまでパドルデザインカンパニーが手掛けてきた建設業界のブランディング実績より、「カジマ・リノベイト株式会社」、「株式会社横田海事」、「株式会社renoval」の3事例をご紹介します。

スーパーゼネコン鹿島建設のグループ企業でインフラの補修・補強を修事業とするカジマ・リノベイト様のブランディング・プロジェクトでは、MVV(ミッション/ビジョン/バリュー)やブランドコンセプトなどのMI開発からVI開発(Webサイト/会社案内パンフレット/ブランド動画など)まで一貫した施策を行い、採用強化に向けた企業ブランディングを行いました。また、横田海事様、renoval様のブランディング・プロジェクトでは、ブランドコンセプトの言語化からVI開発を行うことで、企業の信用・信頼度向上を図りました。そしてブランディングは、今日現在も継続して取り組み続けています。

なかにはVI開発(Webデザイン/パンフレット制作など)を先行したいとご要望を受けることがありますが、ブランドデザインにおいて重要なのは「何をデザインするのか」を正しく定義することにあります。そのため、ブランドの中核となるメッセージシステムの言語化から独自性(自社らしさ)を正しく定義し、定義された独自性をデザインで具現化することが大切です。

制作事例|カジマ・リノベイト株式会社|企業・採用ブランディング

鹿島グループの補修・補強専門会社として、社会の喫緊の課題である土木構造物の長寿命化に貢献するカジマ・リノベイト株式会社。全国各地の補修・補強工事、PC橋梁新設工事、一般土木工事に対応しています。1994年の設立以来、無借金経営を続ける安定企業です。

●ブランディングの経緯

老朽化した社会インフラの補修・補強ニーズの増加に伴い、積極的な採用を進めており、2030年までに150人規模の会社を目指すカジマ・リノベイト株式会社。さらなる採用強化に向け、コーポレートサイトのリニューアルを実施しました。また、2024年に30周年を迎えるにあたり、行動変容を促すことで会社の一体感や組織力を高めたいという想いがあり、CI再構築にも着手。自社の強みを再定義し、ミッション・ビジョン・バリュー、そして行動指針を定義しすると共に、VIリニューアルを実施しました。

●Webアンケートとワークショップを通して相互理解と一体感を高める

ブランディング・プロジェクトの発足にあたり、全社員を対象としたWebアンケートを実施。次いで、アンケート結果をもとに、ブランディング・プロジェクトメンバーとワークショップを行い、企業としての強みや目標、大切にしている想いなどについてディスカッションを重ねました。

●企業の中核概念となるMVV開発

MVVとは、役員及び社員など、全ての社内メンバーが一丸となり果たすべき「Mission(ミッション)」、企業の存在意義や目指す未来を示す「Vision(ビジョン)」、そして持つべき価値観を言語化した「Value(バリュー)」などのメッセージシステムです。従来まで曖昧であった自社ならではの独自性を正しく言語化することから、企業ブランディングは始まります。
Webアンケートとワークショップをもとに開発したミッション「人と技術を育み、社会インフラを維持し続ける。」、ビジョン「当たり前に続く日常を守り、未来へつなぐ。」、バリュー「限界をつくらない/期待以上で応える/次世代まで美しく/真っ直ぐに生きる/業界をリードする」を企業のMI(マインド・アイデンティティ)に掲げ、力強くリブランディングがスタートしました。

●ミッション開発

●ビジョン開発

●バリュー開発

●ブランドコンセプト開発

定義したMVVに基づき、社内外に向け発信するブランドコンセプト「安心を、もっと強く。」を策定。社内に問いかけるメッセージであり、社外に伝えて行きたい思いでもある、現在と未来を考慮したブランドコンセプトです。

●学生に伝えたい事を漏れなく掲載したコーポレートサイト

入札から始まる事業の性格上、コーポレートサイトは取引先・協力会社よりも採用強化を視野に入れた学生が主なターゲットとなります。そこで業界に詳しくない学生でも、同社の仕事内容や魅力が伝わるサイトを目指しリニューアルに着手。難しい技術や工法をわかりやすく図解して解説すると共に、補修・補強の対象箇所を街のイラストにマッピング。直感的な理解を促すコンテンツを充実させました。

コーポレートサイト

●イラストで端的に伝える会社案内パンフレット

企業の顔となる会社案内パンフレットは、ブランディングの観点からコーポレートサイトとトンマナを合わせ制作。ポケット付きの冊子とすることで、入社資料や技術資料、募集要項などを挟み込め、工事の入札や採用活動にも活用できるよう企画しました。事業領域を写真とイラストで端的に伝えるデザインとすることで、直感的な理解の容易な会社案内パンフレットに仕上げています。

●採用ブランディングから採用サイト制作へ

採用コンセプト「補修って、未来だ。」の開発を皮切りに、採用強化に向けた採用サイトを構築。社会的価値の見えづらい補修の仕事を、職種ごとに詳細まで掲載することで理解浸透を図り、採用後のミスマッチを予防します。社員インタビューや数字で見るコンテンツなども設け、同社のリアルを真っ直ぐに伝えていきます。

採用サイト

●ブランドムービー「補修って、未来だ。」

採用サイトのキービジュアル(ファーストビュー)にはブランドムービー「補修って未来だ」を配置。補修の仕事に興味を持ち、やりがいを覚えていく主人公を描きました。映像出演するキャストは全てモデルを起用し、実際の工事現場で撮影を実施。補修・補強の仕事に対する求職者の興味喚起を行うだけでなく、すべての従業員が自社の仕事に誇りを持てるよう、未来をつくる補修・補強業務の素晴らしさを描いています。

ブランドムービー

制作事例|横田海事株式会社|企業ブランディング

1981年の創業以来、東京湾を中心に港湾海運業を営む横田海事様。マリコン事業では、水深・水域を確保し、物流を生かす「浚渫」、陸と海をつなぎ、港の安全を守る「港湾土木」、水深・水域を確保し、物流を生かす「陸上土木」を、輸送事業では、多様な舟形と実績でニーズを満たす「曳航作業」を、リース事業では、自社機材とプロ人材のアウトソーシングを運営しています。他社で断られた難解な業務に対応できるよう自社船を改造するなど、お客様のニーズを叶える「クライアント・ファースト」を徹底されています。

●ブランディングの経緯

企業・事業の情報整備からVI統一を目的に、コーポレートサイト及び会社案内パンフレットの制作依頼を賜りました。東京湾や水門周辺でのドローン撮影には厳しい規制がかかり許可申請も複雑となるため、管轄省庁を廻り撮影許可を取得。工事作業の合間を縫って各種撮影を実施するなど、1年間の制作期間を掛け企業ブランドの具現化を図りました。

●VIカラー設定からコーポレートサイト制作へ

採用・営業強化に向けたVI開発の取り組みでは、コーポレートカラーをビタミンカラーのイエローに定義。情報のプラットフォームとなるWebサイトの開発に着手しました。訴求ポイントとなるのは保有設備の各種船舶。大型船の全体像が伝わるよう、ドローン撮影を実施しコンテンツ開発を行いました。撮影した画像は、TOPをはじめ各ページのビジュアルイメージとして使用し、力強いメッセージと共に自社の独自性・優位性を伝えて行きます。
スクロール時に上部固定されるナビゲーション内やフッターの上には「お問い合わせ」への導線を設置し、コンバージョン率の向上を促すなどPC表示・スマートフォン表示ともユーザビリティを意識したWebサイト設計を行っています。

コーポレートサイト

●営業強化に向けた会社案内リニューアル

営業促進・採用活動の兼用ツールとして会社案内パンフレットのリニューアルをご依頼を賜りました。一瞥しただけで事業内容が伝わるよう、表紙にはドローン撮影した運河での工事風景を採用。ド迫力のスケール感が伝わるようイントロ見開きには見上げ視点で撮影した大型クレーン船画像を掲載し、職人としての誇りとストロングポイントを併せて訴求。以降ページでは広範な船舶ラインナップとスペックを網羅し、全8ページに収めています。クレーン台船のスケール感と迫力を表現するために必要となる誌面の高さを、天綴じ仕様を用いることで実現しました。

制作事例|株式会社renoval|企業ブランディング

住宅リノベーション工事の請負と施工を行う株式会社renoval。古くなったものを取り壊して新しいものをつくるのではなく、古いものにしかない価値を活かし、今のライフスタイルにアレンジする。美しさと機能を両立させつつ、住む人の暮らしが見えるデザインを追求するリノベーション専門会社です。

●ブランディングの経緯

法人設立に伴う企業ブランディングに向け、ネーミング、ロゴ、Webサイト、ステーショナリーの制作をご依頼いただきました。リノベーションでなく、設備の修理でも良いので、まずは気軽に声をかけてほしい。お客様とじっくり時間をかけて向き合い、末長くお付き合いをさせて頂ける仕事がしたい。そう話す代表。そんなご要望から、ビジネスライクになりすぎないよう、「代表の思いやパーソナルが伝わること」をプロジェクトのテーマに掲げ、ブランディングプロジェクトがスタートしました。

●思いを凝縮したブランドコンセプト

キックオフオリエンテーションからミーティングを重ね、開発したブランドコンセプトは「住む人の暮らしをデザインする。」。新しいものをつくるのではなく、古いものを生かしながら最適化していくことで、新たな価値を付加していく。そんな思いを込めたブランドコンセプトです。

●小規模を逆手に取ったロゴデザイン

リノベーション(renovation)に新しい価値(value)を提供するという思いを込め、ネーミングは「renoval」に決定。次いで、ロゴマークの制作に着手しました。大手・中小を問わず、競合のあふれるマーケットでの法人立ち上げは、差別化や記憶してもらうことが大きな課題となります。
そこで、小さな規模感を逆手にとり、法人としてではなく、あえて代表個人のキャラクターをシンボル化したロゴマークを開発。メガネが印象的なイラストをロゴ化することで、親しみやすさを表現しました。

●ロゴマークの表情バリエーション

開発したロゴマークの運用に向け、表情バリエーションを開発。パンフレットや名刺などの紙媒体をはじめ、現場横断幕、サインボード、車両ステッカーなど、あらゆるシーンでロゴマークを活用できるよう、ユーモアのある表情をデザインしています。

●ステーショナリーの隅々までブランドイメージを統一する

名刺と封筒は、ロゴマークに合わせ、モノトーン調でデザイン。余計な装飾を行わない潔さが、清潔感と誠実さを醸し出しています。

●中長期運用を視野に入れたWebデザイン

ブランドコンセプト「住む人の暮らしを、デザインする。」をキービジュアルに起用したコーポレートサイトは、ホワイト基調のシンプルかつスタイリッシュなデザインに。長期的に古さを感じさせることのないデザインです。設立直後であるため実績はこれからですが、実績紹介ページをCMS化するなど、今後のコンテンツ充足を視野に入れたサイト構成となっています。

コーポレートサイト

ブランディング成功の要因は、メッセージの一貫性と継続性

ブランディングにおいて最も大切なのは、ブランドを実践するすべての従業員が、MI(マインド・アイデンティティ)を理解し実践すること。そして、その取り組みを継続することで、ブランドの市場価値を高めロイヤルティの高いファン層を形成していくことです。

カジマ・リノベイトでは、ミッションに「人と技術を育み、社会インフラを維持し続ける。」、ビジョンに「当たり前に続く日常を守り、未来へつなぐ。」、バリューに「限界をつくらない/期待以上で応える/次世代まで美しく/真っ直ぐに生きる/業界をリードする」を企業のMI(マインド・アイデンティティ)に掲げ、実践し続けることで、市場でのブランド価値向上を目指します。

また、ブランディング成功の要因は「メッセージの一貫性と継続性」にあると言えます。売上重視の一過性のプロモーションだけでなく、ブランドエクイティを高め、ブランドのファンを獲得し、ブランドロイヤルティを高めていくことで、市場で選ばれるブランドを育んでいくことが、中長期的に成長する強い企業づくりへとつながります。

特に経営資源が潤沢でない中小企業は、企業・商品の根本的な価値創出(ブランディング)を図ることがビジネス成功の秘訣です。