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企業ブランディングを成功へと導くフレームワーク
ブランド価値の整理に役立つ4つの「フレームワーク」
企業ブランディングを成功に導く、フレームワークの活用を伝授します。
企業ブランディングに有効なフレームワーク
商品やサービスの質だけでなく、企業そのものへの信頼や共感が購買の意思決定に大きく影響することから、企業ブランディングの重要性は年々高まっています。しかしその進め方や考え方には明確なフレームワークが必要です。フレームワークの活用は、企業ブランドに対する情報を整理して論理的に考察し、ブランドの魅力を効率的に伝達・浸透させるのに役立ちます。
企業ブランディングのフレームワーク4選

企業ブランディングを効果的に進めるためには、様々なフレームワークを組み合わせて活用することが大切です。これにより、ブランドの特徴や強みを明確にし、一貫性のあるメッセージ発信を可能にします。ここでは、企業ブランディングに役立つ代表的な4つのフレームワークをご紹介します。これらを適切に用いることで、ブランド価値の向上や市場での競争優位性の確立が期待できます。
1.ブランド・アイデンティティ・プリズム(Brand Identity Prism)
企業が顧客や社会にどのように認識されたいか、その独自性を指すのが「ブランド・アイデンティティ」です。このフレームワークは、ブランド・アイデンティティの定義に必要な要素を、プリズム(六面体)の形で整理します。ブランドの本質を多角的に捉え、一貫性のあるブランドイメージを構築するのに役立ちます。
◉ブランドの特徴 (Physique)
ブランドの物理的特徴。企業の事業内容、提供する製品・サービス、視覚的な要素(ロゴ、カラーなど)、ブランドメッセージなどが主な要素です。
◉文化 (Culture)
企業の価値観、行動規範、歴史など。顧客へのサービスにおいて、どのようなことを重視してきたかということをその企業の文化として捉えます。
◉個性 (Personality)
ブランドを人格化した際のイメージ。性格や特徴を明確にすることで、親しみやすく、人間味のあるブランドイメージを視覚化し社会に伝えることができます。
◉自己イメージ (Self-Image)
ブランドに対してターゲット層に抱いてほしいイメージ。顧客がブランドに対してどのようなイメージを抱いているかを調査した上で、理想イメージとの差異を確認します。
◉ブランドターゲット (Reflection)
ブランドがメインターゲットとする顧客属性。性別や年齢、住所や家族構成といった特性、価値観や趣味・嗜好などを網羅します。
◉関係性 (Relationship)
企業と社会とのつながり。両者がどのようなコミュニケーションを築き、どのような関係性を育みたいかを明確にします。
以上6つの側面において要素を書き出し、企業ブランドの実像を掴んだ上で有効なメッセージを考案・発信していきます。
2.バリュープロポジション・キャンバス(Value Proposition Canvas)
顧客への提供価値を指すのが「バリュープロポジション」です。このフレームワークは、企業の提供価値が、社会のニーズや課題にどのように応えられるのかを明確にするのに役立ちます。自社の強みだと認識していることと、顧客が求めていることの間のズレは多くの企業で見受けられるため、このフレームワークを通して両者のズレを認識し、顧客にとって的確で魅力的な情報発信を目指します。
バリュープロポジション・キャンバスでは、以下の6つの項目を書き出すことで、客観的な視点から情報を整理します。
※アレックス・オスターワルダーが著作「バリュー・プロポジション・デザイン」で提唱したフレームワーク。
《顧客セグメント》
◉顧客が解決したい課題 (Customer Jobs)
顧客(社会)が解決したい課題、達成したい目標、満たしたいニーズをリストアップします。機能的な欲求・感情的な欲求双方が含まれます。
◉顧客の悩み (Pains)
課題を解決するにあたって顧客(社会)が抱える障害、リスク、不満を特定します。
◉顧客の利益 (Gains)
顧客(社会)が期待する利益、望ましい成果を特定します。
《顧客への提供価値》
◉製品とサービス(Product & Services)
自社の製品やサービスをリストアップします。
◉顧客に利益を与えるもの(Gain Creators)
顧客が期待する利益に対応し、それをもたらす自社の製品やサービスの内容を書きます。
◉顧客の悩みを取り除くもの(Pain Relievers)
顧客の悩みに対応し、悩みを取り除ける製品やサービスの内容を書きます。
このフレームワークを活用することで、社会のニーズに合致した価値提供を行い、共感を呼ぶストーリーを発信することで、ブランドの魅力を効果的に伝達することができます。
3.SWOT分析
「SWOT分析」は、マーケティング活動においても使用されるフレームワークのひとつです。企業の内部環境と外部環境を分析し、ブランディング活動における強み、弱み、機会、脅威を把握するのに役立ちます。この分析結果に基づくことで、スムーズにブランド戦略を構築することができます。
◉強み (Strengths)
企業独自の技術、ノウハウ、ブランド力、人的資源などを分析し、積極的にアピールすべき点を明確にします。
◉弱み (Weaknesses)
改善すべき課題、社会からの批判を受けやすい点などを把握し、情報開示や対策を通じて信頼回復に努めます。
◉機会 (Opportunities)
社会的なトレンド、ニーズの変化、技術革新などを捉え、新たな情報発信の機会やブランド価値向上の可能性を探ります。
◉脅威 (Threats)
競合企業の動向、社会情勢の変化、ネガティブな情報拡散のリスクなどを認識し、適切な対策を講じます。

4.カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map)
顧客が製品やサービスを認知・検討・購入・利用する過程、そして購入後の体験を可視化するフレームワークです。このフレームワークを顧客だけでなく、より広範なステークホルダーとの接点において活用することで、ブランド体験全体をデザインし、一貫したメッセージの発信を目指します。
◉タッチポイントの洗い出し
顧客(またはステークホルダー)が企業と接触する全ての点(Webサイト、SNS、イベント、メディア記事、従業員の対応など)を洗い出します。
◉思考・感情・行動の分析
各タッチポイントにおいて、顧客(またはステークホルダー)がどのように考え、感じ、行動するかを分析します。
◉課題と機会の特定
各タッチポイントにおける課題や不満点、ブランド体験を向上させるための機会を特定します。
◉改善策の検討
特定された課題や機会に基づいて、情報提供の改善、コミュニケーション戦略の最適化、体験価値の向上策などを検討します。
このフレームワークを活用することで、顧客視点(あるいはステークホルダー視点)でブランドとの接点を理解し、各タッチポイントで一貫したブランドメッセージと体験を提供するための戦略を立案できます。例えば、SNSでの情報発信、イベントでのコミュニケーション、メディアへの露出など、あらゆるブランディング活動を通じて、ポジティブな体験を設計し、ロイヤルティを高めることに貢献します。

まとめ:フレームワークを活用して、強いブランドをつくる。

これらのフレームワークを単独で用いるだけでなく、企業の状況や目的に合わせて組み合わせることで、より効果的な戦略を立案することができます。たとえばSWOT分析で自社の現状と社会環境を把握した上で、ブランド・アイデンティティ・プリズムを用いて社会に伝えたいブランドイメージを明確化し、バリュープロポジション・キャンバスで社会が求める価値との接点を見出すといった流れも有効です。フレームワークを活用して、企業ブランディングを成功へ導きましょう。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなど5職種が在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/エディトリアルライター
企業の中核概念となるミッション/ビジョン/バリューの開発やタグライン、ブランドコンセプト、ブランドストーリーなどのMI(マインド・アイデンティティ)開発を担当。ブランドコミュニケーションにおいては、制作物の企画立案・コピーライティングのほか、取材・ライティングを担当します。
Senior Copywriter
Shimizu
東京のブランディング会社

パドルデザインカンパニーは、1998年創業のブランディングカンパニー。東京都港区南青山に本社を構え、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を中心に、北海道から沖縄まで日本全国に顧客を抱えています。取引業種・業界も幅広く、IT業界や製造業、商社、建築・設備業、金融・不動産、食品会社に至るまで、あらゆる業界のブランディングを手掛けています。
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