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商品・サービスブランディングにおける「ブランドメッセージの重要性」
魅力的に価値が伝われば、自然と広がり、自ずと売れる。
商品・サービスブランディングを行う際に用意したいブランドメッセージの種類や制作方法について解説します。
商品・サービスブランディングにおいて必要なブランドメッセージ
商品やサービスにおけるブランドが確立されることで、企業の営業活動には大きな競争優位が生まれ、安定的かつ高い収益が可能になります。顧客は、ブランドが提供する価値に信頼を寄せており、たとえ他社より価格が高くても、その価値に納得し、繰り返し購入するようになります。このような顧客は「ロイヤル・カスタマー」としてブランドに忠誠を示し、事業の収益性をより強固なものにしてくれます。
そのため、商品・サービスのブランディングにおいては、タグライン、ブランドストーリー、ブランドプロミス、キャッチコピーなどのブランドメッセージの開発は不可欠な取り組みだと言えます。これらのブランドメッセージを通じて訴求されるブランド価値は、ブランド・コミュニケーションの質を高め、プロモーションを通じて他にはない独自のポジション構築に貢献します。結果として、その価値は広告や口コミを通じて迅速かつ広範囲に伝わり、市場における認知と信頼を効果的に広げることができます。
また、ブランディングは決して大企業だけのものではありません。むしろ中小企業においては、ニッチな市場にターゲットを絞り、際立った特徴を持つブランドを構築することで、大手企業とは異なるポジショニングを確立し、参入障壁を築くことが可能です。
さらに、差別化が難しいとされるB2B商品・サービスにおいても、ブランドメッセージを活用することで、単なる製品スペックの違いだけでなく、そこに込められた想いや背景にあるストーリーを伝えることができ、他社との明確な違いを打ち出す有力な手段となります。
このように、ブランドメッセージは、顧客との信頼関係を築き、長期的な事業成長を実現するための不可欠な要素です。

商品・サービスのブランドメッセージ事例
◉緑茶飲料
・綾鷹:茶葉ひらく、香り立つ旨み
・伊右衛門:淹れたてのような緑、味、香り
・お〜いお茶:本物のおいしいを、茶畑から。
◉化粧品
・インテグレート:まいにちにLovelyを♡
・KATE:自分を縛る、ルールを壊せ。
・DHC化粧品:肌本来の生命力をあなたへ
◉喫茶店
・喫茶室ルノアール:都会のオアシス
・心にもっとくつろぎを
・ドトール:ドトール、のち、はれやか。
ブランドメッセージの活用シーン

ブランドメッセージは、企業や商品・サービスの価値や姿勢を伝える重要な要素であり、さまざまな場面で活用されます。とくに対外的なコミュニケーションだけでなく、社内の意識統一にも大きく貢献するため、その活用範囲は非常に広範囲にわたります。
具体的には、コーポレートサイト、採用ツール、会社案内、広告・販促物、プレゼン資料、商品カタログ、SNSや動画などのデジタルメディアなど、あらゆるタッチポイントで使用されます。これらの媒体を通じて、一貫したメッセージを発信することで、ブランドイメージの統一と強化を図ることができます。
ブランドメッセージが多様なツールに効果的に落とし込まれることで、顧客や求職者、取引先、従業員など、あらゆるステークホルダーとの関係性が深まり、企業全体の信頼性と価値向上に寄与します。
◉ブランドサイト / サービスサイト
ブランドサイトやサービスサイトは、特定のブランドやサービスの魅力を発信するためのWebプラットフォームであり、企業が提供する製品・サービスを支える重要なインフラストラクチャーとして機能します。同時に、ユーザーが必要な情報や機能へアクセスするための「窓口」としても、大きな役割を担っています。
これらのサイトは、その性質上、セキュリティ対策やパフォーマンスの最適化、ユーザビリティの向上といった技術的な配慮が求められます。しかし、それだけではなく、UI/UXの質を高めることでユーザーの満足度を向上させ、ブランド体験の質そのものを向上させることが重要です。
さらに、ブランドサイトやサービスサイトを通じて、ブランドメッセージを明確に伝えることで、他社との違いやブランドに込めた想いを効果的に表現することができます。これにより、ユーザーとの信頼関係が深まり、ブランドへの共感や愛着を育む「ブランドロイヤルティ」の向上にもつながります。
つまり、ブランドサイト・サービスサイトは単なる情報提供の場ではなく、ブランド価値を体現し、ユーザーとの関係性を強化するための戦略的なコミュニケーションツールであると言えます。
◉商品・サービス案内パンフレット
商品・サービス案内パンフレットは、製品やサービスの特徴・概要・価格・使用方法などを分かりやすく掲載したツールで、紙媒体だけでなくデジタル形式でも活用されています。魅力的な写真やイラストを用いて視覚的に訴求しながら、ブランドメッセージを組み合わせることで、製品・サービスの価値を直感的かつ印象的に伝えることができます。
パンフレットには、特徴や機能の詳細、価格表といった情報を網羅的に盛り込むことで、読み手の理解を深め、購買意欲の向上につなげます。また、ターゲットとの能動的なコミュニケーションを実現できる媒体であるため、展示会や商談会、各種イベントなどの場での配布にも適しており、効果的なマーケティングツールとして高く評価されています。
加えて、このパンフレットは商品・サービスブランディングを支えるツールとしても重要です。ブランドメッセージを通じて、他社との違いや独自の価値を明確に打ち出すことができるため、ブランドコミュニケーションやプロモーション活動において欠かせない役割を果たします。
つまり、商品・サービス案内パンフレットは、単なる紹介資料ではなく、顧客との信頼構築やブランド価値の訴求に直結する、戦略的な情報発信ツールであると言えます。
◉販促ツール
販促ツールとは、テレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアから、地域に根ざしたローカルプロモーションまで、商品やサービスの魅力を広く伝えるために活用される、さまざまなマーケティング手法やツールの総称です。その種類は多岐にわたり、企業のマーケティング戦略によって使い分けられます。
こうした販促活動において最も重要なのは、ブランドと消費者が接するあらゆるタッチポイントにおいて、統一されたブランドメッセージを継続的に発信することです。一貫性のあるメッセージを伝え続けることで、ブランドに対する認知が高まり、顧客からの信頼や期待も自然と醸成されていきます。
結果として、ブランドの魅力が効果的に伝わり、新たな顧客の獲得や、既存顧客との関係強化にもつながるため、販促ツールの活用には、戦略性とブランドメッセージの整合性が欠かせません。
◉ブランド動画 / コンセプト動画
ブランド動画やコンセプト動画は、企業の理念や製品・サービスの核心となる想いを映像で表現し、視聴者にわかりやすく、感情に響く形で伝える重要なコミュニケーションツールです。実写映像はもちろん、アニメーションやCGなど多様な制作手法を用いて、メッセージの具体化と視覚化を実現します。
完成したこれらの動画は、コーポレートサイトやブランドサイトへの掲載だけでなく、広告キャンペーンや展示会、各種イベントなど、さまざまなシーンで活用されます。ブランドの世界観を直感的に伝える効果的な手段として、高い訴求力と柔軟な活用性を持つ映像コンテンツとなります。
商品・サービスブランディングにおけるブランドメッセージのつくり方

商品・サービスのブランディングにおいて欠かせないブランドメッセージの作り方について、4つのステップに分けて詳しくご紹介いたします。ブランドメッセージは、商品の価値や企業の想いを的確に伝えるための重要な要素であり、その構築には戦略的なアプローチが求められます。各ステップを順を追って理解し実践することで、より魅力的で共感を呼ぶブランドメッセージを効果的に作り上げることができます。
ブランドメッセージのつくり方①|調査・分析

自社商品・サービスが今日現在、どのポジションに位置するのかという「現実」と、どこを目指したいかという「理想(目指す姿)」を、「自社」「顧客」「競合」の3つの視点で、できるだけ正確に把握していきますが、多くのブランドは、「理想」と「現実」に大きなギャップが生じています。
ここで大切なのは、「理想」の実現にはどのような課題があるのか、どうすればその「課題」を克服してブランド価値を高めることができるのかを分析し、実行に向け計画していくことです。理想を求め、課題を解決し、現実のギャップを埋め、価値を高めていく。この繰り返しが、理想とするブランディングにつながります。
ブランドメッセージ開発では、社内アンケートやワークショップで「理想」と「課題」の明文化を図り、自社商品・サービスの特徴や優位性を分析していきます。分析フェーズでは、フレームワーク(PEST分析、SWOT分析、3C分析、STP分析など)を用いると、客観的な自社分析が可能となります。
◉PEST分析
PEST分析(マクロ環境分析)とは、経営学の第一人者として知られるフィリップ・コトラーが提唱するフレームワークのひとつで、マクロ環境の代表とされる「政治・法律(Political Environment)」「経済(Economic Environment)」 「社会(Social Environment)」「技術(Technological Environment)」の観点から、業界全体の将来を予測するために活用されます。

◉SWOT分析
SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を、強み(Strength)、弱み (Weakness)、機会(Opportunity)」、脅威(Threat)の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法のひとつです。ここでは主に、自社の強みや市場にある機会を抽出していくことで、自社らしさを明らかにしていきます。

◉3C分析
3C分析とは、企業を取り巻く環境を分析する際に用いられるフレームワークのひとつで、PEST分析、ファイブ・フォース分析ともに、企業戦略策定に向けた環境分析の際に用いられます。3Cはそれぞれ、「顧客・市場(Customer)」、「自社(Company)」、「競合(Competitor)」の3つの視点から、顧客の動向を念頭に市場と競合を分析し、事業領域における成功要因とリスク要因を導き出していきます。ここでは主に、他社との違いや自社優位性を抽出していくことで、自社の強みを明らかにしていきます。

◉STP分析
STP分析は、セグメンテーション(市場の細分化)、ターゲティング(ターゲット市場の選定)、そしてポジショニング(自社ブランドの立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字から名付けられた分析法で、マーケティング論で知られる現代マーケティングの第一人者「フィリップ・コトラー」が提唱したフレームワークです。STP分析を活用することで、よりブランドポジショニングを的確に行うことができます。

ブランドメッセージのつくり方②|ペルソナ設定

ブランドの究極は、「具体的な一人を喜ばせることができるかどうか」にあります。では、「具体的な一人」とはどんな人物なのか、どんな性格で、どのような日々を過ごしているのか。そうした深い考察を行うことで、ターゲットが何を求めているのかをより細部まで想像することができるようになります。そのターゲット設定のために行われるのが「ペルソナ設定」です。
◉ペルソナとは
ターゲットの代表的な一人を具体化した、象徴的な顧客像のことを指しています。ペルソナ設定を行うことで、コアターゲット像が明確化されることは大きなメリットだと言えますが、社内の別部署にペルソナを共有することで、ターゲット像の意思統一が図れるというベネフィットも生じます。
ペルソナは、実際には存在していない人物ですが、性別、年齢、住まい、職業、年収などの人口統計学的属性(デモグラフィック)から、価値観、趣味、趣向、ライフスタイルなどの心理的属性(サイコグラフィック)まで、あたかも本当に存在するかのように、リアリティのある人物を設定していきます。できるだけ「本当にいそうだ」と思わせるような設定をすることで、ブランドに携わる人がそのペルソナに共感できたり、その人を喜ばせたいと思う気持ちが湧き、ブランドの質を向上させられる効果もあります。
ブランドメッセージのつくり方③|ポジショニング設定

数あるブランドから選ばれるためには、自社ブランドの違いを明確に示さなければなりません。そのための第一歩として、自社ブランドが目指すポジションを設定します。その後、「商品・サービスの魅力」や「ターゲットが何を求めているのか」、「競合他社と比べて優位なところ」を改めて整理し、今後ブランドが目指していくポジションを設定します。つまり「〇〇といえば自分たちのブランド」と言われる〇〇を探していく作業です。
例えば「自動車といえばトヨタ」という言い方だけでなく、より細分化し「エンジンが優れた自動車といえばホンダ」「デザインが優れた自動車といえばマツダ」「軽自動車といえばスズキ」など、特徴を細分化することで自分たちだけのポジションを設定することができます。
ブランドメッセージのつくり方④|メッセージ開発

設定した自社のブランドポジションを、ペルソナにとって魅力的なメッセージに変換します。商品・サービスのブランドメッセージ作成では、主語が自社になってしまいがちなため注意が必要です。
「主語が自社」とは、例えば「これだけの栄養素が入っている」「たくさんの機能を搭載している」という商品やサービスのスペックの凄みを押し出している状態です。受け手が周辺の商品・サービスに詳しい人物である場合は効果を成すこともありますが、前情報がない状態だと興味関心が湧きません。
ブランドを通し、どのような変化が起こるのか、どのような経験ができるのか、ターゲットにとってのメリットやベネフィットが伝わるブランドメッセージを作成しましょう。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/プロデューサー
ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。
Producer
CEO 豊田 善治
東京のブランディング会社

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。