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企業ブランディングにおける「ブランドメッセージの重要性」
姿勢や魅力の言語化から、独自性を端的に伝える。
企業ブランディングに不可欠となるMVV、ブランドコンセプト、タグラインとその制作方法について解説します。
明確なメッセージを発信し、ステークホルダーから信頼され、愛される企業へと成長していくために。
企業が永続的に発展していくためには、単に事業を継続するだけでなく、社会の一員としての存在意義を認められ、関係者から共感と支持を得ることが不可欠です。そのためには、企業としての姿勢や価値観を、明確なメッセージとして継続的に発信し、ステークホルダーと誠実に向き合い続ける姿勢が求められます。
本稿では、企業ブランディングにおいて欠かすことのできない要素である「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」をはじめ、ブランドの核となる「ブランドコンセプト」、そしてその想いや世界観を端的に表現する「タグライン」について、それぞれの役割や意味、さらには効果的な制作の進め方について解説していきます。これらの要素は、企業の本質を言語化し、社内外に一貫したメッセージを届けるための基盤となるものです。
企業ブランディングにおいて不可欠なブランドメッセージ

企業ブランディングにおいて、ブランドメッセージは極めて重要な役割を担っています。それは、企業が持つ姿勢や価値、魅力を的確な言葉で表現し、ステークホルダーに対して一貫して伝えることで、社会的な認知度の向上や企業イメージの確立を図ることに寄与するためです。また、明確なブランドメッセージは、社員の意識やモチベーションを高め、組織全体の結束力を生み出す力も持っています。
こうした理由から、企業ブランディングを行う際には、企業が大切にしている信念や姿勢、価値観といった独自のアイデンティティを、誰にでも伝わる形で端的かつわかりやすく表現することが求められます。そのために重要となるのが、ミッションステートメント、タグライン、ブランドコンセプトといったブランドメッセージの構成要素です。これらは企業の本質を言語化し、社内外に対して一貫した想いやビジョンを届けるために不可欠な存在であり、強固なブランド構築の基盤となります。
ブランドの核をつくる、MVVという指針。

MVVとは、企業や組織の存在意義や価値観を言語化した「ミッション・ビジョン・バリュー」のことを指します。社会に対してどのように貢献するのかを示す「ミッション」、将来どのような姿を目指すのかを描く「ビジョン」、そして大切にする価値観や行動指針を明確にする「バリュー」。この3つは、企業のコアとしてブランドメッセージの土台となり、ブランディングにおける一貫性と説得力を生み出します。
大手企業のMVV /タグライン事例
◉MVV / タグライン事例[キリンホールディングス]
・Mission:キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します
・Vision:食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
・Value:熱意・誠意・多様性〈Passion. Integrity. Diversity.〉
・Tagline:よろこびがつなぐ世界へ
◉MVV/タグライン事例[日立グループ]
・Mission:優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する
・Vision:日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします。
・Value:和・誠・開拓者精神
・Tagline:Inspire the Next
◉MVV/タグライン事例[リクルート]
・Mission:Follow Your Heart
・Vision:まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。
・Value:新しい価値の創造・個の尊重・社会への貢献
・Tagline:まだ、ここにない、出会い。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の役割と策定・見直しの重要性
MVVとは、企業の存在意義や将来像、価値観を明確に示す「ミッション・ビジョン・バリュー」の3要素を指し、企業活動における“軸”となるものです。
・ミッションは「企業がなぜ存在するのか」
・ビジョンは「どこを目指すのか」
・バリューは「どのような価値観を大切にしているのか」
これらを明文化することで、社員一人ひとりが企業の方針を理解し、行動の指針とすることができるようになり、組織全体の意識統一が図ることができます。
現在MVVが未策定である場合は、まず自社・競合・市場の現状を的確に把握することから始める必要があります。そのための手法として有効なのがワークショップの実施です。経営層や担当者を含む関係者が集まり、3C分析やSWOT分析といったフレームワークを活用して自社の特徴や強みを言語化し、企業の「らしさ」を見出します。その上で、発見された独自性をミッション・ビジョン・バリューへと落とし込み、企業の根幹を形づくります。
一方、すでにMVVがある企業であっても、それがブランドメッセージの基盤として機能しているかどうかを見直すことが大切です。具体的には、
・ミッション・ビジョン・バリューに一貫性はあるか
・社会環境や市場の変化に沿った内容か
・現在の経営方針とズレが生じていないか
こうした観点から再検証を行い、少しでも違和感やギャップがある場合には、内容の修正・再構築を検討します。MVVは企業の本質を表すものであり、ブランドメッセージの土台となるため、策定も見直しも極めて重要なプロセスです。
誰に、何を届けるか。ブランドの軸をつくるコンセプト設計の重要性。
ブランドコンセプトとは、「誰に対して」「どのような価値を提供するのか」という企業の意図を、社内外で共有するための中核となるメッセージです。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)によって明らかになった自社の「らしさ」を基に、それに価値を見出す明確なターゲット層を設定し、自社が市場の中で目指すべきポジションを言語化していきます。
ブランドは、対象とする層が広すぎると個性がぼやけ、誰の心にも響かない、平凡な存在になりがちです。そのため、自社の立ち位置をより具体的に示すブランドコンセプトの策定は、競合他社との差別化を図るうえで欠かせない要素といえます。
また、ターゲットと提供価値を明確にすることにより、社内におけるあらゆる企業活動にも一貫性が生まれます。ブランドコンセプトは、単なるマーケティング用の言葉ではなく、企業全体の意思統一と方向性を支える指針として、非常に重要な役割を果たします。
“らしさ”を言葉に。共感を生むタグライン開発。
タグラインは、ブランドコンセプトをもとに、自社の独自性や強みを端的に伝える、企業からのメッセージです。企業の価値をひと言で伝えるこの言葉は、社内外にブランドの世界観を共有し、共感を呼ぶ重要な役割を担っています。
タグラインを開発する際には、「誰にでもわかりやすく、従業員や顧客が共感できる内容」であること、そして「当たり前のことを言っていないか」という視点が大切です。
たとえば、食品業界で「安全」や「高品質」を掲げても、それは業界全体の前提条件にすぎません。他社との差別化を図るためには、「どのように安全なのか」「どのような品質が強みなのか」といった具体性や独自性を掘り下げる必要があります。
当たり前の言葉を、自社ならではのストーリーやこだわりを込めた言葉に昇華させることで、はじめて強いブランドメッセージとして機能するタグラインとなります。
ブランドメッセージの活用シーン

一度開発されたブランドメッセージは、企業とステークホルダーとのあらゆる接点、すなわちすべてのタッチポイントにおいて効果的に活用されます。ブランドメッセージは単なる言葉ではなく、企業の価値や理念を伝えるための軸となるものであり、その浸透と活用を通じて、企業の一貫性あるイメージ形成や信頼構築に大きく寄与します。
ここでは、そうしたブランドメッセージが実際に活用される主なコミュニケーションツールについてご紹介します。これらは、社内外を問わず幅広いシーンで用いられ、ブランド価値を高めるための重要な手段となります。
◉Webサイト(コーポレートサイト/ブランドサイト)
会社概要や沿革、CSR、サステナビリティなどの会社案内をはじめ、事業案内、採用情報、IR情報、プレスリリースなどが掲載されるコーポレートサイトは、すべての企業に不可欠な、企業の顔とも言えるWebサイトです。企業の掲げるミッション・ビジョン・バリューやブランドコンセプトを掲載することでステークホルダーに正しく、もれなく思いを伝え、企業のイメージアップから価値向上や信頼獲得を図るなど、事業活動の重要な役割を果たします。
◉会社案内パンフレット
企業が自社をアピールするために作成する会社案内パンフレット。企業のミッション・ビジョン・バリューをはじめ、事業内容、製品やサービス紹介、そして会社概要・沿革・経営方針などが記載されます。
会社案内パンフレットは、企業の印象やイメージを形成するために重要な役割を果たします。また、新卒採用や業務提携先など、企業との関わりを持つ人々に対して、企業の情報を提供するためにも活用されます。一般的に会社案内パンフレットは紙媒体で作成されますが、近年ではデジタル媒体としても提供されることが増えています。
デジタル媒体の場合、動画やアニメーションなどの多様な表現方法を埋め込むなど、幅広く活用することができます。企業のイメージを形成するために会社案内パンフレットは重要なツールであり、企業の方針やスタンスを的確に表現することが求められます。
◉コンセプトブック
コンセプトブックとは、お客様・取引先などへ、会社情報とは別に「企業の想い」や「製品・サービスのコンセプト」をメインとてまとめあげたパンフレットなどの冊子で、イラストや写真、文章などを使い想いが伝わるよう構成していきます。周年事業などのイベント時に、周年の感謝や今後の方針及び決意表明を行うなど、改めて「企業らしさ」を社内外に伝える冊子としても活用されます。
◉ブランディング動画
ブランディング動画は、「企業の想い」や「製品・サービスのコンセプト」をメインとして映像化し動画を通して伝えるツールで、実写・アニメーション・CGなど、企画の具現化に向け多様な手法で制作されます。制作したブランディング動画は、コーポレートサイトやブランドサイトに公開される他、広告、イベントなどでも広く活用されます。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/プロデューサー
ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。
Producer
CEO 豊田 善治
東京のブランディング会社

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。