ラインナップの充実と、新カテゴリーへの進出。

既存ブランドを活かしたブランドの成長戦略「ブランド・エクステンション(ブランド拡張)」とは。

Introduction

ブランド拡張

ブランド拡張(ブランド・エクステンション)とは、既に確立されたブランドを、他の製品や別カテゴリー拡張するもので、既存の市場に形態や機能の異なる商品を拡張する「ライン拡張(ライン・エクステンション)」と、これまでと全く異なる市場に既存ブランドを展開する「カテゴリ拡張(カテゴリ・エクステンション)」の大きく2種類があります。新規ブランドの立ち上げに必要な投資と時間を大幅に削減することができ、ローリスク、ハイリターンが見込める施策であると言えます。一方、ブランド拡張(ブランド・エクステンション)は既存ブランドの価値を損なう可能性を秘めており、実施には細心の注意が必要です。

●ブランド拡張のポイント

ブランド拡張(ブランド・エクステンション)は、ブランドの成長戦略として有効な施策であると言えますが、ブランド・ダイソリューション(ブランドの希薄化)のリスクを伴うため、以下の点など慎重な検討が必要です。

《ブランド・エクステンションの注意点》
・既存ブランドのブランド連想が、新カテゴリーに効果的か
・既存ブランドへの悪影響、マイナス要因はないか
・新カテゴリーへのブランド拡張は、既存ブランドへのブランド連想強化につながるか
・新カテゴリーへのブランド拡張が、ブランド連想への悪影響を与えないか
・他に適切な製品カテゴリーが存在しないか

7パターンのブランド拡張

ブランド拡張(ブランド・エクステンション)の方向性を検討する際は、そのブランドのカテゴリーと補完性のある製品カテゴリーをリストアップしてブラッシュアップすると最適なブランド拡張が見えてきます。過去にアメリカで発表された論文によると、ブランド拡張は7つのパターンに分類できたと言います。

①異形態へのブランド拡張

例えば、元々カップラーメンでブランド展開を行っていたメーカーが、「袋入りラーメン」にブランド拡張する、カップアイスでブランド展開を行っていたメーカーが「アイスバー」にブランド拡張するなど。食品の場合、特に異形態へのブランド拡張が多く行われています。

②原料・成分を利用したブランド拡張

例えば、元々コーラ飲料でブランド展開を行っていたメーカーが「コーラ飴」や「コーラアイス」にブランド拡張する、酸素水でブランド展開を行っていたメーカーが「酸素水の化粧水」や「酸素水の乳液」にブランド拡張するなど。原料・成分を利用したブランド拡張は、あらゆる業界で実施されています。

③カテゴリでのブランド拡張

例えば、元々アウトドアグッズを販売していたメーカーが「ウェア」「シューズ」にブランド拡張する、プリンやキャラメルなど乳製品でお菓子作りをするメーカーが「チーズ」にブランド拡張するなど。カテゴリでのブランド拡張は、アパレル業界や食品業界で特に多く見られるブランド拡張です。

④同一顧客へのブランド拡張

例えば、銀行が「クレジットカード」や「保険」「国債」などの金融サービス・金融事業を展開する、家電メーカーが「テレビ」「冷蔵庫」「エアコン」などにブランド拡張するなど。同一顧客へのブランド拡張は、家電ブランドやスポーツブランドで特に多く見られるブランド拡張です。

⑤技術・知識を活かしたブランド拡張

例えば、家電メーカーが「電動自転車」「電動自動車」「スマートフォン」「パソコン」にブランド拡張する、健康食品メーカーが「健康飲料」「ダイエットサプリ」にブランド拡張するなど。技術・知識を生かしたブランド活用は、ブランドの横軸展開として様々な業種・業界で実施されています。

⑥属性・特長を活かしたブランド拡張

例えば、美容整形外科プロデュースが「ダイエットマシン」にブランド拡張、スポーツ用品メーカーが「栄養ドリンク」にブランド拡張など。ブランド力を生かした異業種へのブランドは、サービス業から食品やサプリメントへの展開で特に多く見られるブランド拡張です。

⑦イメージからのブランド拡張

例えば、インテリアブランドin The Room監修の「分譲マンション」、帝国ホテル監修の「レトルトビーフカレー」、和菓子の老舗メーカーとらやが手がける「TORAYA AN STAND」など。従来からのブランドイメージを活用した異業種へのブランド拡張は、あらゆる業界で一種のトレンドとなっていると言えます。

ブランド拡張のリスク「ブランド・ダイリューション」

ブランドは安易に拡張すると、ブランドのポジショニングが不明瞭となり、ブランドが希薄化するブランド・ダイリューションを引き起こす可能性があることから、戦略的かつ計画的な拡張を行わなければなりません。また、ブランド拡張には限度があり、売り上げ拡大の可能性と現行のブランドに悪影響を及ぼすリスクがあることも視野に入れなくてはなりません。

●ブランド価値とブランド・ダイリューション

ブランド拡張において大切なのは、ブランド・ロイヤルティの高い消費者(顧客)が、なぜそのブランドを選び続けているのかを考慮することです。例えば、高級自動車として知られるフェラーリは生産台数を制限し「なかなか手に入らない希少な商品」により、その価値を維持し続けています。また、激安小売店として知られるドン・キホーテは、「どこよりも安く商品を提供する」コンセプトを徹底することで、小売店における激安店のブランドイメージを維持し続けています。このように、ブランド・アイデンティティ(ブランドの独自性)を維持・継続することこそが、ブランド・プロミス(ブランドが消費者にする約束)を果たすことにつながり、ブランド力を維持し続けるための大原則となります。これを踏まえ、以下にブランド力低下につながる、ブランド・ダイソリューションの一例を紹介します。

《ブランド・ダイソリューションの一例》
・高級化粧品メーカーが安価な化粧品シリーズを展開した結果、高級化粧品のブランド力が低下する。
・最先端IT企業が金融、飲食など多角展開した結果、最先端のブランドイメージが崩壊する
・老舗和菓子店が流行の洋菓子店を展開したが、高い評価を得られず、本体のブランドイメージが低下する
・音響メーカーが新カテゴリーに進出したが、本来の高音質が再現できず、本体のブランドイメージが低下する
・くつろげるカフェがファストカフェを展開した結果、本来のコンセプトと乖離し、ブランドイメージが低下する
・行列ができる飲食店が多店舗展開した結果、いつでも食べられる身近な店となってしまいブランド力が低下する

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