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モチベーション理論と目標設定の重要性

motivation theory

モチベーション理論と目標設定の重要性

動機づけの原動力は、
上司の言動に起因する。

モチベーション要因と目標設定の重要性を学びます。
動機づけ要因のプロセス「期待理論」

期待理論では、動機づけの要因だけでなく、そのプロセスからに着目したモチベーション理論を展開しています。「ブルームの期待理論」では「動機づけの強さ=期待×誘意性」によりモチベーション度合いが決まるとされており、「ポーターとローラーの期待理論」ではさらに9つの変数でモチベーション要因を紐解いています。
そこには、モチベーションに公平感を加えた「アダムスの公平理論」や、目標設定が高いモチベーションを生み出す「ロックの目標設定理論」などが深く関連しているとされており、多様化する現代のモチベーション要因掌握に向けた様々なヒントが隠されていると言えます。

●モチベーションの原理を紐解く「ブルームの期待理論」

ブルームの期待理論とは、1964年にビクター・ブルームにより提唱されたモチベーション理論のひとつで、人がどのようにして動機づけされるのか「動機づけの過程」に着目しています。動機づけの強さは、それをすることで得られる「成果への期待値」と「報酬の魅力」の積により決定されるとし、人間は期待価値の予想に基づいて行動するため、目標達成時の成果が魅力的であればあるほど、その目標達成に向かい動機づけされる、と主張しました。分かりやすく紐解くと、成果への道筋が明確化されていることを前提として、成果達成後に魅力的な報酬(代表例として後述例1の公表制度やインセンティブ、例2の昇進・昇格や昇給など)が得られることの確信があれば、人間は能動的に努力を行うと言うことです。

例1としては、「ここで努力して売上を上げれば成績No.1の栄光が得られるかもしれない」という思いが成果への期待値であり、「売上を上げることで、インセンティブ(歩合)を得られる」が報酬の魅力に該当し、モチベーションを高める要因となります。もし成績を公表する制度がなく、インセンティブが無いとなると、モチベーションは上がらないと言うことになります。

例2としては、「ここで努力すれば、資格取得(資格試験に合格)できるかもしれない」という思いが成果への期待値であり、「資格取得すれば、昇進と昇給が得られる」が報酬の魅力に該当し、モチベーションを高める要因となります。逆に言うと、資格取得できる可能性が低く、資格取得してもメリットが無いとなると、モチベーションは上がらないと言うことになります。

●高いモチベーションを生み出す期待の連鎖

また、職務遂行への努力が個人的報酬に結びつくと言う「期待の連鎖」と、報酬に対して個人が抱く「主観的な価値(誘意性)」により動機づけが決まると提唱されています。「期待の連鎖」を成立させながら、「主観的な価値」を満たす成果を実現するには、次の3点の明確化が不可欠であるとしています。

①魅力ある報酬の設定
②個人の実力や潜在能力に応じた適切な目標値(限界値)設定
③職務遂行に向けた明確な戦略策定

このブルームの期待理論を、L.W.ポーターとE.E.ローラーがさらに系統立て、9つの変数を使いモデル化することで、現在ではビジネスや教育の場面で広く活用されています。

●9つの変数でモチベーション要因を紐解く「ポーターとローラーの期待理論」

レイマン・ポーターとエドワード・ローラー三世は、ブルームの期待理論を系統立て、9つの変数を使いモデル化を行い1968年に新モデルを提唱しました。9つの変数には、①報酬の価値(誘意性)、②報酬の確立、③努力、④能力と資質(才能)、⑤役割認知、⑥成果、⑦外的報酬(インセンティブ、ボーナス、昇進・昇格など)、⑧内的報酬(達成感など主観的な価値や感情)、⑨満足、があり、それらの期待が連鎖することではじめて、モチベーション向上へとつながると提唱しています。

モチベーションに公平感を加えた
「アダムスの公平理論」

アダムスの公平理論とは、1965年にJ.ステーシーアダムスにより提唱された、個人の努力が公平に評価されているかどうかがモチベーションに影響を与えるとした公平理論です。人は自分か仕事に投入した全て(努力、経験、スキル、知識など。公平理論ではインプットという。)と、仕事から得たもの全て(昇進、昇給、特権・社会的地位の向上など。公平理論ではこれをアウトプットという。)の割合を比較して、両者の割合が同じだと感じた時に公平感を感じ、モチベーションを向上させると主張しています。

●過多評価で生じるモチベーションと行動例

逆に、自身と他者の努力あたりの評価が等しくない場合に不公平感を抱き、努力あたりの評価が等しくなるよう行動するモチベーションが生じるとしています。アダムスの公平理論は、自身が過多評価を受けた場合、評価に見合うモチベーションが生じるとした性善説と、自身が過小評価を受けた場合、不公平感を感じる性悪説が混在した理論であると言えます。

<過多評価で生じる行動の方向性→具体的な行動例>
①自己努力量の増加→仕事を増やす、仕事の質を高める
②他者努力量の減少要請→比較対象者の仕事を請け負う
③報酬の定義変更→金銭のみでなく、役職・職階・名声などを報酬に含める
④比較対象の変更→社内ではなく、他社と比較する
⑤比較の回避→退職する

目標が高いモチベーションを生み出す
「ロックの目標設定理論」

ロックの目標設定理論とは、目標がモチベーションに及ぼす効果を研究し、1968年にアメリカの心理学者ロックにより提唱された理論のひとつで、モチベーションの違いは、目標設定の違いによってもたらされているとした考え方です。本人が受け入れていることを前提に、曖昧な目標より明確な目標を設定した方が結果として業績は上がり、難易度の低い目標より高い目標を設定したほうが同様に業績は上がることが確認されています。
例えば、単に作業として黙々と業務をこなすより、目的や意味、そしてその仕事の意義を明確に理解した方が高いモチベーションを維持することができます。また、「とにかく出来るだけ頑張れ」と言われるより、「今日中に100件出来るよう頑張れ」と言われた方が目標が明確で具体的であり、目標の達成に向け高いモチベーションを維持することができます。その上でロックは、効果的な目標設定に向け7つのステップを紹介し、明確な目標設定を行うことで高いモチベーション維持が可能になるとしています。

①目的や課題を明確化する
②業績や成果の計測方法を明確化する
③達成すべき基準とターゲットを具体化する
④目標達成までの時間と範囲を明確に定める
⑤目標に優先順位をつける
⑥目標達成の困難度と重要度を定める
⑦目標達成に必要な調整を行う

また、動機の強さ(モチベーション)に影響を与える要素には、目標の難易度、目標の具体性、目標の受容度、フィードバックの有無の4つがあり、これらの要素を統合的に考える必要があるとしています。

●目標の難易度

ある程度、難易度の高い困難な目標が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。ただし、あまりにも難易度が高すぎて達成が困難だと諦めてしまう目標では、取り組む前から達成不可と認識されてしまい、動機づけにつなげることはできません。努力すれば達成できる可能性のある範囲で、できる限り高い目標設定をするのが適切な目標設定であると言えます。

●目標の具体性

定量的かつ具体的な目標が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。目標達成度の測定が容易であり具体的であれば、達成に向けて必要な努力も具体的に想像しやすく、実行手段が見えてくることがその要因であると言えます。

●目標の受容度

目標は、他者が一方的に押し付けるのではなく、本人が受け入れていることが重要で、本人が理解・納得する方が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。大切なのは本人がやりたいと思う気持ちであると言えます。

●フィードバックの有無

目標の達成度合いを定期的に確認し、目標の進捗度を示すことにより、高いモチベーションを維持することができます。自身では見えずらくなってしまう目標までの距離感や道筋を見失わないよう、定期的なフィードバックでフォローしていくことが大切です。


本ページでは動機づけ理論・モチベーション向上にまつわる理論を紹介してきましたが、従業員の動機づけ・モチベーション向上には、次の項目「現代における期待理論の効果的な応用」で記載する通り、目標達成に向けたサポートはもちろんのこと、定期的な面談を行い、対面で努力への称賛と承認を早期に行うことが大切です。

現代における動機づけ理論の
効果的な応用

仕事におけるモチベーション要因は近年とても複雑化しており、金銭的報酬だけで多様化するモチベーション要因を満たすのは難しい時代になっていると言えます。また、少子高齢化の影響からも慢性的な人材不足が続いており、役職者として主要ポストに任命すべき人材の不足や、中間管理職ポストの魅力が低下の一途を辿るなか、主観的価値に着目した報酬が不可欠であると言われています。

従業員にとって、金銭的報酬や役職などの物理的報酬の魅力は一時的なものであり、その企業への愛社精神が育まれるだけの価値を持たなくなってきていることから、企業は、利益追求から物理的報酬に偏り評価するのではなく、従業員それぞれが持つ価値観を考慮した評価制度や報酬を取り入れることが不可欠であると言えます。

具体例として、次の順で組織体制や評価制度を策定することで多様化するモチベーション要因の多くを満たすことができると考えられます。

① 部下が価値や魅力を感じる報酬を知る
② 日常のコミュニケーションから従業員との信頼関係を築く
③ 従業員のストレス削減を図る
④ 従業員それぞれの能力と資質(才能)に応じた目標設定を行う
⑤ 成果に対する魅力ある報酬の設定する
⑥ 職務遂行に向けた明確な戦略を策定する
⑦ 目標達成までの具体的な道筋をイメージさせる
⑧ 個々の従業員に目標達成に必要な裁量を与える
⑨ 従業員をよく観察し、目標達成に向け適切なサポートを行う
⑩ 定期的な面談を行い、対面で努力への称賛と承認を行う
⑪ 面談ではさらに客観的なフィードバックを行い、モチベーション維持や向上を図る
⑫ お客様の生の声をフィードバックするなど、客観的な評価も伝える
⑬ 成果に対し、承認欲求を満たす表彰制度や褒賞制度を設ける

これらを実施することで、物理的報酬だけでは満たせない社員個人の価値観に基づく心理的報酬を満たすことができ、従業員満足度の向上を図ることができます。一方、多様化するモチベーション要因を全て満たすのは容易で無いため、企業・組織・業種・業界・事業内容など、それぞれに適した「期待」と「誘意性」にアレンジして適応する必要があると言えます。

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