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欲求とモチベーション要因

desire and motivation

欲求とモチベーション要因

欲求を満たすことで、
人を活かす経営を図る。

人間の持つ欲求とモチベーション要因を、1つの法則と5つの理論から学びます。
欲求を紐解く
「マズローの法則(欲求の5段階説)」

マズローの法則とは、アブラハム・マズローが考案した心理学論で、人間は成長しながら低次の欲求を満たし、高次の欲求へと移行していき、その欲求は5段階のピラミッドのように構成されていると提唱しました。マズローの欲求5段階説、自己実現理論、などと呼ばれることもあり、次の欲求を持つためには、低次の欲求を全て満たしていなければならないとしています。また、この欲求の充足順序は不可逆的で、高次の欲求が満たされないからと言って、それよりも低次の欲求によって動機づけされることはないとしています。これらは欲求の充足順序であり、動機づけの強さを表した段階説ではありません。例えば、生理的欲求や安全の欲求は、低次の欲求ですが、生死に関わる欲求であるため、強く働きます。

●Stage01_生理的欲求(食欲・睡眠欲など)

5段階のうち、最も低次な欲求は「生理的欲求」です。食欲・睡眠欲など、生命維持に不可欠な欲求であり、基本的・本能的な欲求に該当します。人間はどんな時でも、最低限この生理的欲求を満たすことが最優先であり、生理的欲求が満たされて初めて、次の階層となる「安全の欲求」を求めるようになります。

●Stage02_安全の欲求(住居・衣服・貯金など)

次の段階は「安全の欲求」です。安全や安定を求め、危機回避や健康維持に必要な住居や衣服を求めます。安定した最低限の暮らしを確保したい、という欲求と捉えると分かりやすいかもしれません。安全の欲求は、生理的欲求と同様に、生命維持に不可欠な欲求であり、基本的・本能的な欲求に該当すると言えます。ま安全の欲求が満たされて初めて、次の階層となる「社会的欲求」を求めるようになります。

●Stage03_社会的欲求(友情・協同・人間関係など)

次の段階は「社会的欲求」です。所属と愛の欲求とも呼ばれ、集団への所属や連帯感、友情や愛情などを求めます。社会的欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなると言われています。社会的欲求は帰属欲求でもあり、人間の帰属欲求が生存や安全に次いで基本的な欲求であることが分かると言えます。
ここまでStage01から03までの欲求は、外的に満たされたい願望からくる低次欲求に該当し、Stage04以降の欲求は、内的に満たされたい願望からくる高次欲求に変わります。

●Stage04_尊厳の欲求(他人からの尊敬・評価・昇進など)

ここからは、内的に満たされたい願望からくる高次欲求となり、次の段階は「尊厳の欲求」です。自尊の欲求とも呼ばれ、地位や名声を求め、他人から尊敬されたい、または自尊心を満たしたい願望から承認欲求が生じます。尊厳の欲求が社会的欲求の次に生じるのはごく自然な流れであり、自信が帰属する組織やグループから称賛されたい願望が生じるのは当然の事であると言えます。

●Stage05_自己実現の欲求(自分の潜在的能力を最大限発揮して創造的活動がしたいなど)

そして、マズローの法則(欲求の5段階説)の最上位にあたるのが「自己実現の欲求」です。自己開発によりスキルを高め、潜在能力を最大限発揮して満足を得たいと願う欲求で、報酬で満足するのではなく、自己実現の行動そのものが目的となるため、絶え間なく動機づけがなされます。簡単にまとめると、自分で掲げた目標をクリアできる喜びをモチベーションにする、という事になります。
会社組織では、この自己実現の欲求を持った人材を求めるケースが多く見られますが、そのためには会社組織がStage01〜04までを高い水準でクリアし、その人材がStage05の自己実現の欲求に不安なく取り組める状況を整え、目標達成に専念できる環境を準備する必要があると言えます。

●Stage06_自己超越の欲求(他者や社会のために行動したいなど)

Stage05までがマズローの法則(欲求の5段階説)ですが、マズローは晩年、5段階欲求のさらに上の欲求「自己超越の欲求」が存在すると提唱しました。自己超越の欲求は、目的の遂行・達成だけを純粋に求める領域で、見返りを求めることも、エゴもなく、ただ目的のために没頭する「他者や社会のために行動したいと願う欲求」だと言えます。真のイノベーションは、この自己超越の欲求から生まれる、と言っても過言ではないかも知れません。

モチベーションを3段階に分類した
「アルダファーのERG理論」

アルダファーのERG理論とは、マズローの法則(欲求の5段階説)をもとに、1972年にクレイトン・アルダファーが著書内で提唱したモチベーション理論です。マズローの法則との相違点は、欲求を「存在(Existence)」「人間関係(Relatedness)」「成長(Growth)」の3区分とした点、そして、それぞれの欲求は並立するとした点の2点にあります。ちなみに、ERG理論は、存在(Existence)・人間関係(Relatedness)・成長(Growth)のそれぞれの頭文字に由来しています。

●Disire01_存在欲求(物質的・生理的な欲求を全て含み、飢え、賃金、労働条件など全てに対する欲求)

存在欲求(Existence)は、人間として存在するための低次欲求と言われています。マズローの法則(欲求の5段階説)では、最も低次となる生理的欲求や、次いで低次となる安全欲求に該当します。

●Disire02_人間関係の欲求(家族・友人・上司・部下・敵などとの関係を良好に保ちたいという欲求)

人間関係の欲求(Relatedness)は、他者との人間関係を持ち続けたい欲求です。社会的に他者と相互的な関係を続けることで、欲求を満たすことができると言われています。マズローの法則(欲求の5段階説)では、安全欲求や社会的欲求、そして尊厳の欲求に該当します。

●Disire03_成長欲求(自分の環境に創造的・生産的な影響を与えようとする欲求で、充実感を求める欲求)

成長欲求(Growth)」は、人が本来持ち合わせている“成長し続けたい”と願う高次欲求です。マズローの法則(欲求の5段階説)では、尊厳の欲求や自己実現の欲求に該当します

性善説と性悪説に基づく
「マクレガーのX理論・Y理論」

マクレガーのX理論・Y理論とは、マズローの法則(欲求の5段階説)を準用して1950年代後半にアメリカの心理学・経営学者ダグラス・マクレガーによって提唱された、人間観・動機づけに関わる2つの対立的なモチベーション理論です。
低次の欲求に基づくX理論では「人間は生来怠け者で、命令されたり強制されなければ仕事をしない」としている一方、高次の欲求に基づくY理論では「人間は生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」という人間観で構成されています。

●X理論:性悪説に基づく人間観

・生来怠け者で仕事嫌い
・命令・強制されないと仕事をしない
・責任回避をしたがる、命令されたい

➡︎運用方法:命令・強制で管理し、目標が達成できなければ処罰といった「アメとムチ」によるマネジメント手法が有効。X理論の人間は、低次の欲求しか持たないため、アメが有効であり、放置すれば怠けるため、命令と強制などムチが必要となる。

●Y理論:性善説に基づく人間観

・生来仕事好き
・目標達成に向けて自ら努力をする
・条件次第で責任を取ろうとする

➡︎運用方法:魅力となる目標と責任を与え続けることにより、従業員を動かしていく「機会を与える」マネジメント手法が有効。Y理論の人間は、高次の欲求でのみ動くため、意思決定に参加させるなど、能力を認め、評価し、よりスキルを必要とする任務に着けるなどが必要となる。


生活水準が高いレベルで安定し、生理的欲求や安全欲求などの低次欲求が基本的に満たされている現代の日本において、X理論は対象人物の欲求に適合しないことから、Y理論に基づいた管理方法の必要性が高いと考えられます。

動機づけ要因にアプローチする
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

バーズバーグの動機づけ・衛生理論(二要理論)とは、仕事における満足と不満足を引き起こす要因を2つの独立した欲求に分類し、人間が仕事に満足感を感じる要因と、不満足感を感じる要因は全くの別物であるとする考え方で、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱しました。2つの独立した欲求には、衛生要因(苦痛を避けようとする動物的な欲求)と、動機づけ欲求(心理的に成長しようとする人間的な欲求)があり、モチベーション向上には後者の動機づけ欲求を高めるべきであると唱えています。

●衛生要因

不満を防止することはできるが、満足をもたらしモチベーション向上までは至らない要因。具体的には、会社の方針と管理、上司の監督、監督との関係、労働条件、給与、同僚との関係、個人の生活などが挙げられます。

●動機づけ要因

満足をもたらし、モチベーション向上から積極的な態度を引き出す要因。具体的には、達成感、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長などが挙げられます。


不満要素となる衛生欲求をいくら取り除いても、満足感やモチベーションの向上にはつながりません。また、満足感をもたらし、モチベーションを向上するには、動機づけ要因を満たす必要があります。ハーズバーグは動機づけ要因を特に重視していますが、決して衛生要因を軽視しているわけではありません。衛生要因と動機づけ要因を理解したうえで衛生要因を満たし、動機づけ要因にアプローチすることが大切であることを説いています。

マクレランドの達成動機説

マクレランドの達成動機説とは、アメリカの心理学者デイビッド・C・マクレランドが1976年に提唱したモチベーション理論のひとつであり、作業場における従業員には、達成動機(欲求)、権力動機(欲求)、親和動機(欲求)の3つの主要な動機または欲求が存在するとしました。その後、さらに回避動機(欲求)を追加して4つの動機または欲求が存在すると提唱しました。

●達成動機(欲求)

達成動機(欲求)の強い人間の特性を次の3つとしました。
①仕事の達成に生きがいを感じる
②中程度のリスクを好む
③成果に対するフィードバックを求める

●権力動機(欲求)

権力動機(欲求)の強い人間の特性を次の4つとしました。
①責任を与えられることを楽しむ
②他者から働きかけられるよりも、他者をコントロール下におき影響力を行使しようとする
③競争が激しく、地位や身分を重視する状況を好む
④効率的な成果よりも信望を得たり、他者に影響力を行使することにこだわる

●親和動機(欲求)

親和動機(欲求)の強い人間の特性を次の3つとしました。
①人の役に立とうと努力する
②他者からよく見てもらいたい、好かれたいという願望が強い
③心理的な緊張状況には一人では耐えられなくなる傾向がある

●回避動機(欲求)

回避動機(欲求)の強い人間の特性を次の2つとしました。
①失敗を恐れて適度な目標をあえて避けようとする
②批判を恐れて周囲に合わせようとする

適応・順応、そして統合から成長へ
アージリスの未成熟・成熟理論

アージリスの未成熟・成熟理論とは、マズローの法則(欲求の5段階説)をベースに、パーソナリティ(個人の人格)が未成熟から成熟に向かおうとする欲求が動機づけにつながり、モチベーション向上を生み出す要因になると提唱したものです。アージリスは、個人の内面バランスがとれた状態を「適応(adjusted)」と呼び、個人と外部環境のバランスがとれた状態を「順応(adapted)」と呼んでいます。そして人間は、様々な環境の中で「適応」と「順応」を繰り返しながら成長していく、としています。さらに、個人がそれぞれの環境に適応・順応した状態のことを「統合(integration)」と呼び、統合された状態が理想的な姿であるとした上で、統合状態で目標達成することで「自己実現の達成」が成され、人間ははじめて成長すると述べています。

アージリスは、このような成長の過程を「未成熟・成熟理論(マチュリティ理論)」として解説しており、個人の人格は未成熟から成熟に向かおうとする欲求により変化すると述べています。具体的には次の通りです。

成長に不可欠な職務拡大と職務充実を
バランスよく考える職務設計

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論(二要理論)、アージリスの未成熟・成熟理論、マクレガーのY理論にある通り、人は成長したいと願う欲求により動機の強さが大きく変化すると言えます。このことから、モチベーション向上には適切な職務設計が不可欠です。職務設計には仕事の幅を軸とする「職務拡大」と、仕事の深さを軸とする「職務充実」があり、自己実現の観点を考慮した場合「職務領域を、広く深くする」のが良いと考えられます。しかし実際には、広く・深くなる職務は難易度が高いため、動機づけ要因が弱くなりがちです。これらを考慮して、「バランスの取れた広さと深さ」で職務設計をする必要があります。

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