大手企業の守り方と、中小ベンチャーの戦い方。

競争地位に応じた、市場シェア獲得戦略を学びます。

Introduction

競争地位戦略

競争地位戦略とは、米国の経営学者フィリップ・コトラーが提案した競争戦略理論で、「同業界内における競争上の地位により、取るべき戦略の定石が異なる」という考え方を提唱しています。マーケットシェアの観点から企業をリーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つに類型化し、競争地位に応じた戦略目標を提示しています。

業界内のトップ企業「リーダー」

リーダーとは、業界内で最大の市場シェアを占めているトップ企業であり、良質な経営資源を豊富に有する企業を指しています。価格変更、新製品導入、流通範囲、プロモーションなどの多方面で他社をリードしており、業界内で最も認知度の高い企業であると言えます。市場シェア率の維持または拡大には、市場規模の拡大が不可欠となり、新たな市場獲得を図ります。
また、新たな企業に新規参入されないよう、参入障壁や移動障壁を築くなど、業界全体の利益を守ることで自社の利益を獲得していきます。リーダー企業の基本戦略は「全方位戦略」であり、戦略定石には前記した①市場の拡大(周辺需要の拡大)の他、②非価格対応、③同質化、④最適シェア維持があります。

①市場の拡大(周辺需要の拡大)

周辺需要の拡大とは、市場規模の拡大を図ること。リーダー企業は競合他社に比べ良質な経営資源を有しており、業界内で最も認知度が高いことから、市場規模が拡大することで必然と市場シェアの獲得が可能となります。
例えば、夜のシャンプーに加え「朝シャンプー」が日常化することで、シャンプーの消費量は二倍になります。一般的に朝と夜で異なるシャンプーを使用する人は少ないと思えることから、朝シャンプーの市場を開拓することで、売上の向上と市場シェアの獲得が同時に達成できます。

②非価格対応

非価格競争とは、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーなどの下位企業が繰り広げる価格競争に安易に応じないことを指しています。業界平均価格が下落すると、最も影響を受けるのは、市場シェア率の高いリーダー企業です。このことから、どの業界においてもリーダー企業から価格競争を持ちかけることは、一般的にありません。

③同質化

同質化とは、チャレンジャー企業が行ってきた差別化戦略に対し、リーダー企業が豊富な経験資源を持ってそれを模倣し、チャレンジャー企業の差別化戦略を無効化する戦略です。
同質化競争は、経営資源の豊富さや認知度の高さ、そして市場シェア率の高さなど、あらゆる点で優位に立つリーダー企業に圧倒的有利に働くため、同質化することでさらに市場シェアの獲得を図ることができます。

④最適シェア維持

最適シェア維持とは、自社が最も顧客化したい消費者層のシェアを維持することを指しています。市場シェアは必ずしも高い方が良い訳ではなく、投資コストと収益性のバランスで測らなければなりません。50%のシェアを60%に伸ばすための投資コストと、70%のシェアを80%に伸ばすための投資コストは同様ではなく、100%に近づくほど効率が下がります。また、シェア率が高くなるほど、企業が顧客化を望まない消費者も取り込むことになり、経営効率の悪化を招く恐れが生じます。さらに、独占禁止法の問題が生じ、様々なコストが生じる懸念が生じます。

準トップ企業「チャレンジャー」

チャレンジャーとは、業界で2-3番手に位置する準トップ企業であり、リーダーに挑戦し常にトップの座を狙う企業を指しています。市場シェアの拡大には、競合他社への攻撃が不可欠となり、攻撃対象の弱点をつくなどしてシェア獲得を図ります。チャレンジャー企業の主な戦略は次の3つです。

① 直接対決:リーダーと同様の領域で真っ向から勝負を挑みシェア獲得を図る
② 背面攻撃(競争範囲の拡大):リーダー企業がまだ強化していない領域に着目し、シェア獲得を図る
③ 後方攻撃:自社よりシェアの小さな企業からシェアを奪う

上記のいずれであっても、リーダー企業との差別化、コスト競争力、ブランド優位性などは不可欠であり、リーダー企業に同質化されない差別化戦略を図らなければなりません。

ニッチな領域に特化する「ニッチャー」

ニッチャーとは、業界全体のシェア率は高くありませんが、ニッチな領域に特化することで特定市場での高い支持を得ている企業を指しています。量的な経営資源ではリーダー企業やチャレンジャー企業に勝らなくとも、経営資源を特定領域に集中投下することで、優れた技術・ノウハウ・サービス、そして仕組みなどを構築し、特定市場においての高シェア率を獲得していきます。取り扱い製品や販売チャネルを限定するなど、専門化することで高収益を目指します。

最も多くのライバルを抱える「フォロワー」

フォロワーとは、チャレンジャーのようにシェア率NO1を狙う位置になく、ニッチャーのように特定市場での独自性も有さない企業を指しています。多大な経営資源の投下が難しいため多くは業界リーダーに追随し、上位企業の模倣により合理的な経営を図ります。最も多くのライバルを抱えるのがこのフォロワーであり、競合他社からの攻撃や報復を回避しながら、市場シェアの獲得を図ります。フォロワー企業の主な戦略は次の2つです。

① 経験の蓄積からオリジナリティを生み出す
② 模倣にアイデアを付帯してオリジナリティを生み出す

上記のいずれであってもオリジナリティは不可欠であると言えます。模倣であっても、全くの模倣ではなく、そこに少しの工夫を加えることで差別化が生み出されることが多々あります。大切なのは、消費者が価値と感じる、他社との明らかな違いを生み出すこと。小さな積み重ねから、差別化戦略を図ることが重要です。

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