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企業間取引と垂直統合

vertical integration

企業間取引と垂直統合

内製化を図ることで、
今までに無い成果を。

企業間取引の関係性と事業拡大に向けた
垂直統合、戦略的提携、M&Aを学びます。
企業間取引と垂直統合

製品やサービスが市場に供給されるためには、バリューチェーンに含まれるすべての活動が実行される必要があり、企業や組織は、バリューチェーンに含まれる活動のうち、自社で行う活動と他企業・組織に依存する活動の範囲を定めなくてはなりません。このうち、企業・組織が自社で行う活動範囲を「垂直統合度」と言い、垂直統合度が広ければ広いほど、事業範囲が大きくなります。
この「垂直統合」は、同一製品分野において取引関係にある分野への進出を意味しており、企業・組織は、バリューチェーンに含まれる活動を他企業・組織に依存するか、垂直統合により事業拡大を図り自社事業とするかを判断していきます。
企業・組織が事業拡大を図る際、最も成功可能性が高いのがこの垂直統合度の拡大であり、現存の技術・知識・経験などを活かすことでマーケティング資源の有効活用ができるほか、現存ブランドとのシナジー効果により市場への浸透を容易にするなど、事業リスク低減にもつながります。

垂直統合のメリット

垂直統合は、多角化戦略と比べ圧倒的にリスクが低く、大きなメリットの傍受できる成長戦略であると言えます。事業領域の拡大による売上向上はもちろんのこと、現存事業とのシナジー効果により利益率の改善やサービスの向上を図ることもできるほか、自社でのコントロール可能領域の拡大や自社裁量領域の自由度が高まることで、マーケティング戦略の多様化を可能にします。ここでは、垂直統合で得られる主なメリットを紹介していきます。

●メリット01:仕入れコストの削減による利益率の改善

内製化することで、外部組織との利害関係が解消され、そこに生じる取引コストの削減から利益率の改善を図ることができます。また、外部組織との力関係により生じる仕入れのリスクや販売のリスクが低減するため、安定した利益率の確保を可能にします。

●メリット02:自社裁量領域の拡大に伴う市場競争力の強化

内製化することで、自社でのコントロール可能領域が拡大することから、市場における自社裁量の自由度が高まります。これにより、マーケティング戦略の多様化が可能となり、市場競争力の強化を図ることも可能となります。

●メリット03:新たな市場からの情報入手により事業戦略の多様化が可能に

垂直統合で川上又は川下への市場が拡大することにより、従来まで入手することが困難であったあらゆる情報の入手が可能になります。これにより、市場にある顕在化したニーズの把握も容易となるほか、潜在的なリクスも予め察知することを可能にします。

垂直統合のデメリット

垂直統合には多くのメリットがありますが、その反面、デメリットも存在します。企業・組織は、事業戦略に基づきメリットとデメリットの双方を測り、垂直統合の可否を判断しなければなりません。ここでは、垂直統合で生じる可能性のある主なデメリットを紹介していきます。

●デメリット01:活動集約におけるコスト削減が受けられなくなる

内製化により一定以上の生産活動を行うことができない場合、規模の経済が働く外部組織に生産活動を依存する方がコスト削減を生み出すケースがあります。このことから企業・組織は、内製化によるコスト削減と外部組織に生産活動を依存した場合を比較し、慎重な判断を行う必要があります。

●デメリット02:事業拡大によるコア・コンピタンスの低下

事業領域が拡大することで、自社が得意とする専門領域が希薄になり、ブランド力の低下を招くことがあります。また、経営資源の分散が生じることで特定領域での能力向上が困難となり、結果、市場競争力の低下を招くケースがあります。このことから企業・組織は、自社の経営資源を見極め、中期経営計画を策定するなど、慎重な判断を行う必要があります。

●デメリット03:市場にある新製品や新技術を導入しづらくなる

内製化することで生じる設備投資や経費の増加から、同領域の生産活動においては、たとえ優れた製品であっても、外部組織の生産活動により誕生した新製品や新技術の導入がしづらくなります。結果、従来の活動領域において市場競争力の低下を招くケースがあります。このことから企業・組織は、自社の事業戦略や製品戦略を改めて検証し、自社が目指すビジョン・ミッションに照らし合わせ、慎重な判断を行う必要があります。

市場取引における契約方法

企業や組織が、事業運営に必要とする資源の供給を他企業や組織に依存している(または依存していく予定)の場合、企業はその資源の重要性と取引コストの大きさから、その資源を供給する企業との契約方法を決定していきますが、契約方法は大きく4つの手法に分けて考えることができるとされています。

●スポット市場契約

スポット市場とは、現物の受け渡しが売買契約の成立と同時になされる市場のことを指しており、売り手と買い手の合意により、製品又はサービスの取引量・価格・納品時期が決定されていきます。スポット市場では、同様または類似する製品又はサービスの売買が活発に行われることから、優良な売り手が多数存在しており、買い手は、良質な製品又はサービスを低コストで仕入れることが可能となります。

●完備契約

完備契約とは、将来起こり得る事態を予め想定し、取引主体の権利と義務を詳細に定める契約のことを指しており、契約履行の有無を監視することで契約満了を確認する必要のある契約方法です。将来起こり得る可能性のある、あらゆる事態を予め想定する必要があるだけでなく、契約内容に記された義務が履行されない場合は契約違反として処置する必要があるため、管理・実行共にとても難のある契約方法だと言えます。

●逐次契約

逐次契約とは、一定期間の完備契約を締結し、契約満了後に同様の再契約を繰り返し締結していく契約方法です。一定期間を設けることで、将来起こり得る可能性のある不測の事態にも臨機応変に対応できることから、レンタル契約やサービス契約をはじめ、ライセンス契約などにも多く採用されている契約方法です。

●関係性に基づく契約

上記にあげた「スポット市場契約」「完備契約」「逐次契約」に加え、組織間の信用や担当者間の信頼関係、倫理の遵守などにより円滑かつ効率的に遂行されている状況を指しています。業務的な契約だけでなく、そこに人間関係が構築されることで各種契約の弱点を補強し、お互いにとって最良の結果を生み出すことができると言えます。

他社協業による資源調達「戦略的提携」

企業・組織が、事業運営にあたり重要度の高い資源を他組織に依存している場合、その資源をより良い条件で入手できるよう、常に改善を図らなければなりません。資源の獲得には、垂直統合の他、様々な選択肢があり、時間適切迫、投資コスト、投資リスクなどを鑑みたうえで、最良の手段を講じていく必要があります。垂直統合にあたり投資コストと投資リスクが高い場合、資源獲得の改善に向けた選択肢のひとつとして「戦略的提携」があります。オハイオ州立大学・経営学部のジェイ・B・バーニー氏が提唱した戦略的提携の定義では「2つ、もしくはそれ以上の独立した組織が、製品・サービスの開発、製造、販売などに関して協力する場合」としており、その理論では、戦略的提携を大きく3つのカテゴリーに分類しています。

●業務提携

業務提携とは、特定の分野を限定して複数の企業が、業務上の協力関係を持つことを指しています。業務提携には、技術開発・技術供与を始め、生産、資材調達、物流、人材交流、販売促進など様々な提携方法があり、相互の企業が経営の独立性を保ちながら、独立した組織をつくらずに契約を通して企業間の協力を図るという特徴があります。

●資本業務提携

資本業務提携とは、業務提携に伴い対象企業に対して資金注入を行い、対象企業の議決権を得る提携手法を指しています。資本提携により通常の契約よりも堅固な協力関係を構築することが可能となることから、将来に渡り安定的な取引を可能にするだけでなく、垂直統合で生じる様々なリスクを回避することができます。資本業務提携には、垂直統合や多角化で生じる時間の短縮をはじめ、製品技術、生産技術、ノウハウ、特許などの技術資源の獲得、工場、設備、生産システム、生産ノウハウなどの生産資源の獲得、販売チャネル、店舗、倉庫、ブランドなどの販売資源の獲得、経営者、技術者、研究者、販売員などの人的資源の獲得など、様々な経営資源の獲得など、多くのメリットを得ることができます。

●ジョイント・ベンチャー(JV)

ジョイント・ベンチャー(JV)とは、複数の企業が相互の利益のために共同で事業を行うことを指しています。また、共同出資により合弁会社を設立し、技術、設備、人材などを提供し合い事業を行うケースもあります。代表的な例として、大規模な建設工事を複数の企業で請け負う共同事業などがあります。

企業買収による資源の獲得「M&A」

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、合併と買収という意味を持ちます。広義には複数の企業・組織が一つの目標に向けて協力することを指しており、狭義には複数の企業がひとつになる合併や、企業買収による経営統合のみを指しています。日本では狭義の「企業買収」を指すのが一般的であり、狭義の企業買収は「分割」「買収」「合併」の3つに分類されます。

●分割

企業買収における分割とは、事業に関して有する様々な権利や義務を、新設する法人に移転するか、買収側企業に承継させる手法で、英語ではカンパニー・スプレッド(company split)と呼ばれます。分割は大きく2つの形態に分類されています。

■新設分割:会社を複数の法人格に分社化し、組織・事業・資産を新設法人に移転します。
■吸収分割:どちらか一方の企業の組織・事業・資産をもう一方の企業が継承します。

●買収

企業買収における買収とは、買収側の企業が経営権を買い取る手法で、英語ではアクイジション(Acquisitions)と呼ばれます。中小企業のM&Aにおいて最も多く行われる手法で、近年では高齢化による事業継承などでも数多く実施されています。買収は大きく2つの形態に分類されています。

■事業譲渡:企業が運営する事業のうち、一部の事業のみを譲渡します。
■株式取得:企業の株式の50%以上を買い取ることで、経営権を取得します。

●合併

企業買収における合併とは、2つ以上の企業をひとつの法人格に統合する手法で、英語ではマージャーズ(Mergers)と呼ばれます。売却企業は合併されることで消滅し、買収側企業の一部として再スタートを切ることになります。合併は大きく2つの形態に分類されています。

■新設合併:新設法人を設立し、ひとつの新たな法人格として再スタートを切ります。合併に参加した法人は解散し全て消滅します。
■吸収合併:合併に参加したひとつの法人格にその他法人格が吸収されます。被吸収側の企業は解散し消滅します。

M&Aの分類

アメリカ公正取引委員会では、M&Aを「水平型M&A」「垂直型M&A」「製品拡張型M&A」「市場拡張型M&A」「コングロマリッド型M&A」の5つに分類しています。

●同業種・同業態の企業が買い手となる「水平型M&A」

競合企業の買収が「水平型M&A」にあたります。水平型M&Aの多くが本業へのシナジー効果を見込んで行われ、なかでも「規模拡大」や「エリア拡張」を目的とするケースが大半です。買収により企業規模が拡大することで得られるスケールメリットや、業界シェアを高めることでプライスリーダーとして市場優位性を得るなど、水平型M&Aでは多くのメリットを獲得できます。また、規模拡大によりブランドの露出度が高まり、認知度向上にも寄与することから、ブランディングへの好影響も期待できます。

●製造から販売までワンストップサービスを狙う「垂直型M&A」

資源の供給企業や販売先(顧客)の買収が「垂直型M&A」にあたります。垂直型M&Aの多くが利益率改善を見込んで行われますが、その他「シナジー効果」「シェアの拡大」「技術力の向上」「サービス向上」「情報の入手」「リスクヘッジ」など、多くのメリットを獲得することができます。その反面、規模の経済が働く外部組織への依存で得られるコスト削減が得られなくなるケースや、事業領域の拡大により自社事業の専門性が希薄化し、ブランド力の低下を招くケースなどデメリットも存在します。

●製品ラインナップの拡張から市場シェア獲得を目指す「製品拡張型M&A」

既存製品を補完する製品ラインを得るための買収が「製品拡張型M&A」にあたります。企業・事業を買収することで今までにない新たな技術を獲得し、製品ラインナップの拡張から市場シェアの獲得を目指します。

●市場拡大から売上向上を図る「市場拡張型M&A」

現存事業の周辺市場を獲得するための買収が「市場拡張型M&A」にあたります。水平型M&Aとコングロマリッド型M&Aの中間にあたるM&Aで、技術やサービスに一部関連性はあるが市場が全く異なるケースなどが該当します。例えば、自動車メーカーがオートバイメーカーを買収する、ユニセックスを市場とする美容室が、メンズを市場とする理容室を買収するケースなどが該当します。

●異業種進出を狙う「コングロマリッド型M&A」

買収、被買収企業間に戦略的な関連性のない買収が「コングロマリッド型M&A」にあたります。コングロマリッド型M&Aの場合、現存事業とのシナジー効果は見込めないため、事業を多角化することで企業価値全体を高めることを目的にM&Aが行われます。そのため、被買収企業の売却価格と事業の採算性が計られることが大半です。

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