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企業の活動領域を定めるドメイン

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企業の活動領域を定めるドメイン

集中することで、
自社の強みを周知する。

活動領域を策定することで共通認識を高め、
経営資源の集中投下から経営効率を最適化。
企業の活動領域を定めるドメイン

企業は、企業としてのビジョンを定め、そのビジョン達成に向け事業を展開していきますが、限りある経営資源をいかに有効活用できるかが成否に多大な影響を及ぼすことから、一定の活動領域を定め、経営資源の集中投下を行なっていかなければなりません。それがドメインです。ドメインは、全社レベルで定める「企業ドメイン」と、事業レベルで定める「事業ドメイン」の2つが存在します。

●企業ドメイン

企業ドメインとは、企業が定めた自社の活動範囲や競争領域のこと。企業ドメインは企業理念やビジョン、自社の強み、市場ニーズなどに応じて定義され、定めた活動範囲に対して経営資源の集中投下が行われます。企業ドメインの定義は、自社の存続や成長に多大な影響を与える、とても重要なファクターだと言えます。
一方、企業ドメインを定義しないまま、多角化経営を行う企業も存在しますが、その企業にはどのような強みがあり、どのような市場ニーズに応えられるのかが不明瞭になる傾向があることから、多角化経営を行う企業であっても、ある一定の段階で広義な企業ドメインを定めるなどを行うケースが大半だと言えます。

●事業ドメイン

事業ドメインとは、企業が定めた自社事業の活動範囲や競争領域のこと。企業ドメインが企業全体の活動領域を定義するに対し、事業ドメインは事業の活動領域を定義するものとなり、企業ドメインは事業ドメインの上位概念となります。
企業活動に複数の事業を営む多角化企業の場合、包括的な企業ドメインのもと、事業ごとにさらに具体的な事業ドメインが定義されます。事業ドメインが定義されることで、ライバルとなる競合他社が明確化され、業界における自社事業の課題も明確化されてきます。これにより、いつ、どのように経営資源を投下していくかを企画し実行していくためのプランニングができるようになるため、事業ドメインの定義は、事業運営にとって必要不可欠なファクターであると言えます。

➡︎ドメインの定義の留意点

ドメインの定義が広域すぎると経営資源が分散し管理に難が生じる他、企業・事業の一体感が薄弱することから、事業継続が困難になります。一方、ドメインの定義が狭域すぎると、1つの事業での失敗のリスクが高くなるだけでなく、成長を限定してしまう可能性が生じます。
このことからドメインを定義する際は、将来、自社が向かう方向性や、現在保有している経営資源及び外部資源の活用を念頭に、自社の強みを最大限に発揮できる活動領域を注意深く見定め、広域すぎず、狭域すぎない企業・事業ドメインを決定する必要があります。

<ドメインの定義要件>
○適度な拡張性があること
○将来の事業の方向性を視野に入れていること
○自社の強みが活かせること
○全てのステークホルダが納得できること

ドメインを定義するメリット

企業ドメイン・事業ドメインを定義することで、①意思決定者の注意を限定する、②経営資源の集中投下を可能にする、③組織の一体化、④ドメインの共通認識、などのメリットが生じます。

①意思決定者の注意を限定する

企業活動・事業活動の領域を定めることで、意思決定者の注意を限定し、経営資源の集中投下を可能にします。また、適度な拡張性を持った企業ドメイン・事業ドメインを定義することで、意識の分散化を回避するだけでなく、過度な集中化も回避することができます。

②経営資源の集中投下を可能にする

企業が事業展開を行う上で必要な人(人材のスキルや能力)・物・金・情報などの経営資源を明確にし、その投下先を限定することができます。また、メンバー間の共通理解促進にもつながり、コア・コンピタンス(中核能力)の規定を企業メンバーと共有し、明確化することができます。

③組織の一体化

経営者が企業ドメイン・事業ドメインを定義する(内的アイデンティティの形成をする)ことで、組織として向かうべき方向性が明確となり、企業メンバーとの一体感形成を促進することができます。
また、企業ドメイン・事業ドメインが策定され外部に発信する(外的アイデンティティを形成する)ことで、企業としての社会的な存在意義を明確にし、ステークホルダの理解・納得・共感の促進を図ることができます。

④ドメインの共通認識

内的アイデンティティを「経営者側の定義」、外的アイデンティティを「メンバーの定義(環境側の定義)」と言い、内的アイデンティティと外的アイデンティティが形成され、経営者とステークホルダ双方の共通の認識が取れることを「ドメイン・コンセンサス(ドメインの共通認識)」と言います。
定義された企業ドメイン・事業ドメインは、経営者側だけでなく、ステークホルダに理解・納得して受け入れてもらうことで初めて意味を成すと言えます。

ドメイン定義で留意すべき
「物理的定義」と「機能的定義」

ドメインの定義は大きく①物理的定義、②機能的定義、に分けられます。物理的定義は製品そのものや技術などの物理的側面からドメインを定義する方法であり、物理的定義を行なってしまうと、日々環境が変化する現代においては時代とともにいずれ陳腐化する危険性があるため、機能的側面からドメイン定義するべきとされています。

①物理的定義

製品やサービスそのもの、または製品・サービスの基盤となる技術など「物理的な側面からドメインを定義する方法です。製品やサービス及び技術は、時代とともにいずれ陳腐化することから、自らのドメインを狭めてしまう危険性があるとされています。

②機能的定義

製品・サービスが提供する機能や価値など、ベネフィットの側面からドメインを定義する方法です。機能的な側面からドメインを定義することで、適切な範囲をドメイン領域として定めることができ、将来における事業拡大にも適応しやすいとされています。

➡︎企業が衰退する要因「マーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)」

マーケティング学者T・レビット博士が発表した論文「マーケティング近視眼」によると、物理的定義により企業ドメイン・事業ドメインを狭めてしまう過ちをマーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)と形容しており、一旦は成功した企業が衰退する原因はこの「マーケティング近視眼」にあるとしています。

代表的な例として挙げられているのが、米国における鉄道です。米国の鉄道会社は物理的定義により自らの事業を「鉄道」と定めたことにより、旅行客や貨物輸送など、市場が急拡大し多様化していく環境に対応できず、結果、トラック、バス、飛行機など、鉄道以外の輸送機を使う後発企業に市場を奪われ衰退して行きました。もし鉄道会社が「機能的定義」により自らの企業ドメイン・事業ドメインを「輸送サービス」と定義していたら、豊富な資金力とブランドのアドバンテージから、旅行事業、トラック配送事業、旅行事業など、輸送サービスを包括的に扱う企業として進化できたはず、と言及しています。

もうひとつの代表的な例としてハリウッドの映画産業を挙げ、「映画産業」と定義するのではなく、「エンターテインメント産業」と定義していれば、後発のテレビ、ラジオ、テーマパーク、ゲームなどのエンターテインメント事業者に市場を奪われることなく進化できたはず、と言及しています。

複数次元によるドメイン定義
(エーベルの三次元事業定義モデル)

会社や組織の活動領域を顧客志向の発想で、独立した3つの軸から定義していくためのフレームワークがエーベルの三次元事業定義モデルです。需要が供給を上回っていた生産思考の時代から、供給が需要を上回り顧客志向の時代に移り変わったことにより、現在ではこのエーベルの三次元事業定義モデルが代表的なドメイン定義として推奨されています。
このモデルの最大の特徴は、「どんな顧客に対し、どんな機能を、どのような技術によって提供していくのか」という顧客との接点にフォーカスしている点にあります。つまり、「コアターゲットは誰で、そのターゲットの望む価値は何か、そしてその価値を提供するための技術は何か」という順で定義していくことが顧客の視点に立った事業ドメインの定義が重要である。という考え方です。
これは、どんな優れた技術でも、顧客に望まれない技術であれば価値はなく、事業として成り立たないということを意味する、とても本質的な考え方であると言えます。
上記の通り、顧客、機能、技術の3つの軸を顧客志向で定義することにより、顧客志向が不可欠な現代における事業ドメインの定義が可能になります。

➡︎顧客層(誰に)

製品やサービスがコアターゲットとする市場、さらに言えばどのようなペルソナを持つ顧客層に対する商品か

➡機能(何を)

製品やサービスが満たすべき顧客ニーズ、そのターゲットが望む価値は何か

➡技術(どのように)

製品やサービスをどのような技術によって実現するのか、技術の面から取り組む事業範囲

市場環境の変化に伴う
ドメイン再定義の必要性

市場環境は、時代の変化とともに移り変わります。特にITやAIが目まぐるしく進化する現代においては、顧客ニーズも驚くほど早いスピードで変化すると言え、新たな製品やサービスが登場するたびにドメイン定義の再確認が必要になると言っても過言ではありません。
一方、創業時のドメイン定義と比べ、ドメイン再定義には現状とのギャップにより様々な問題点が生じるため、慎重かつ適切な判断が求められます。

●ドメイン再定義時の注意点

企業・組織は、企業の活動領域や事業領域を定めることで、初めてステークホルダーに自社の強みを明確に伝えることができます。また、「自社がなぜそのミッションを果たすのか、そして、その先に掲げるビジョンは何か」という基本理念のもと事業運営を行うことで、従業員やお客様を始めとする全てのステークホルダーとの共通認識を高め、信頼関係を構築することができます。
このことからも分かる通り、企業・事業ドメインの再定義は、ステークホルダーとの信頼関係の再構築と言っても過言ではないことから、理解・共感を得られるよう、細心の注意が必要です。

➡︎従業員の理解と協力

従来の企業・事業ドメインを再定義することで生じる現状業務とのギャップに対し、従業員の深い理解と前向きな協力は不可欠です。経営層からの一方的な通達による業務変更は、モチベーション低下を招くばかりでなく、離職率を高めます。ドメイン再定義の際は、従業員理解に必要な丁寧な説明と、協力・実行に必要な万全の教育を行うことが不可欠です。

➡︎顧客の理解と共感

従来までの事業ドメインに共感し、強い信頼関係で結ばれる顧客は企業の宝です。ドメイン再定義によって自社の魅力が低下しないよう、継承すべき要素、削除すべき要素、市場に求められる姿、自社のありたい姿などを綿密に検証し、顧客離れが生じることのないよう、細心の注意が必要です。

➡︎社会への浸透

10年継続する企業は10%以下と言われる現代において、10年、20年、30年と続く企業は、企業そのものや商品・サービスに多くのファンを抱えており、社会に認められている企業であると言えます。それは従来までの企業姿勢はもとより、企業としての強みが社会に浸透している結果だとも言い換えることができます。ドメイン再定義は企業のリブランディング同様、自社らしさの再定義でもあることから、積み上げた社会への信用が揺るぐことのないよう、新ドメインの浸透に向けたコミュニケーション戦略にも緻密なプランニングが不可欠です。

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