企業は、経営理念に基づきビジョン(目標・構想・未来像)の実現に向け、ミッション(使命・目的・任務)を果たして行きますが、どのような方法でミッションを果たしていくかには、企業戦略の策定が重要な要素となります。
めまぐるしく環境が変化する現代において、ライバル(競合他社)に対する持続的な自社優位性を築く必要があるのはもちろん、限られた資源を最大限に有効活用し、5W1H(いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How))を明確に定めるなど、何に注力していくかの方針が不可欠であるからに他なりません。
経営理念、ビジョン、企業戦略には階層があり、ピラミッドの頂点にあたる上位概念から順次決定して行くことで、理に叶う戦略策定を行うことが可能となります。
企業戦略の策定に不可欠な「ビジョン」や「ミッション」ですが、その意味合いは似て異なるものであると言えます。まず「ビジョン」とは、直訳すると「目標、構想、未来像」などと訳されます。これを企業のビジョンとした場合には
・組織として目指す方向性
・組織としてありたい姿
・組織が目指す未来の目的地
と置き換えることができます。
具体的に何をするかを策定するものではなく、「将来こうありたい」など、企業としての目標を明確に示すことで、ステークホルダーに自社の存在意義を明確に伝えていくことができます。これにより、ビジョンに共感する投資家や従業員が企業に集い、ひとつの目標を目指し企業運営を果たしていくことができるようになります。
次に「ミッション」とは、直訳すると「使命、目的、役割、任務、存在意義」などと訳されます。ビジョンの達成に向け企業は、ミッションを果たしていきます。企業がその経営を通じて、何を成し遂げたいかを明文化したもので、このミッションがあることではじめて、ビジョンを明確に掲げることができるとも言えます。また、ミッションを全従業員が深く理解することで「なぜこの業務を行うのか」に理解・納得が得られることから、ミッションの策定は企業経営に不可欠な基礎的な考えであると言えます。
経営者の思いから策定される、ビジョン(目標・構想・未来像)やミッション(使命・目的・任務)から企業戦略を実行していくと、実務において少なからず現実とのギャップが生じてきます。企業は戦略策定にあたり、理想と現実とのギャップを埋めていくために、自社はもちろん、競合他社や市場を深く理解しなければなりません。その際、多く活用されるフレームワークが「3C分析」や「SWOT分析」です。
経営理念やビジョンを前提として、「外部環境分析:環境の与える機会と脅威」や「内部環境分析:自社の強みと弱み」の分析を行い、業界における自社のポジショニングや、自社が市場とするターゲット市場のセグメンテーションを行うことではじめて、現実的な経営戦略を策定することができるようになります。
また、戦略から具体的な戦術に落とし込み実施した際は、PDCA(課題抽出から改善)を繰り返し行い、戦略・戦術の見直しを常に行っていかなければなりません。
近年、経営に数値的な解釈を加え、KGI(Key Goal Indicator)、KPI(Key Performance Indicator)などで客観的な分析を行うことも一般的となってきましたが、一方で数値化することや分析することばかりに意識が集中し、現場の実情や現場からの声を軽視してしまうことや、現場の状況を感じ取る能力が劣ってしまうケースが問題視されています。これを「分析麻痺症候群」と言います。
分析麻痺症候群に陥ると、分析すること自体が目的になってしまうマーケティング分析や、使い道のないデータ分析を繰り返し行い、結果、時間や費用のロスを招くばかりでなく、現場と本社スタッフの間に不信感が生じるなどの問題が発生します。
大切なのは、分析はPDCAの一部であることを念頭に置き、現場の実情や現場の声を踏まえ、分析からトライ&エラーまでをスピード感を持って積み重ねることに他なりません。ゴールを見失わないこと。これが重要なポイントです。