自社分析から採用戦略を策定し、優秀な人材獲得を目指す。

採用機会をもう逃さない。綿密な事前準備が結果へとつながります。

Introduction

自社を深く理解する

採用担当者がまず行うべきことは、自社事業・文化・組織体制など、過去・現在・未来について理解することです。「今さら言われなくとも充分に理解している」と感じる方も多いかもしれませんが、採用企業側の観点からではなく、マーケティングの観点(求職者や潜在求職者からの視点)での企業理解が採用マーケティングを行う上で不可欠となります。
また、自社分析では、求職者の行う企業研究の調査ポイントを念頭に、客観的な視点で自社を深く理解することが肝要です。

求職者の行う企業研究の調査ポイント

求職者が企業研究を行う際には、まず企業の基本的なプロフィールである「企業概要」や具体的な「事業内容」に加え、その企業が属する業界内での「位置づけ」や競合との関係性などを調査・確認します。また、「企業理念」や「代表者の特徴」から企業の価値観や経営方針を読み取り、志望動機へと紐づけていきます。
将来性の見極めには、「成長性」や「景況・経済動向による影響度」をチェックし、さらに企業が持つ「競争力」や差別化の要素、働きやすさに直結する「企業風土」、自分が担うことになる「職種」の特性や役割、「勤務条件」の詳細なども確認します。
加えて、企業が社会的責任をどのように果たしているかを示す「CSR(企業の社会的責任)」や「ダイバーシティへの取り組み」、さらには「関連企業」やグループ全体の構成なども広く視野に入れ、企業の全体像を多角的に理解することで応募企業を精査していきます。

◉どんな会社か「企業概要」を入念に調べる

求職者が企業選びをする際、最初に注目するのが「企業概要」です。企業概要は、その企業の全体像を把握するための基本情報が集約されたものであり、他社との比較を行う際にも重要な判断材料となります。たとえば、企業の設立年を確認することで、その会社の歴史や業界内での信頼性を推測することができます。長い歴史を持つ企業は安定した経営基盤を有している場合が多く、一方で新興企業であれば、成長性や柔軟性の高さが期待されることもあります。
また、資本金の額は、その企業の財務的な体力を知る一つの指標となります。資本金が大きい企業は、一般的に大規模な事業展開が可能であり、新規事業への投資余力もあると考えられます。さらに、株式公開(上場)の有無も重要なポイントです。上場企業であれば一定のガバナンスが求められるため、企業情報の透明性が高く、安定した職場環境が期待できます。

事業拠点に関する情報も働くうえで非常に重要だと言えます。全国または海外に拠点を持つ企業では、転勤や出張の可能性が高くなる一方で、多様な経験を積む機会にも恵まれることがあります。勤務地の柔軟性や希望勤務地への配慮があるかどうかも、事業拠点の分布からある程度読み取ることができます。
さらに、業績(売上高や営業利益/利益率)を把握することで、その企業の経営状況や成長性を判断することが可能です。特に営業利益率は、企業が効率的に利益を出しているかを示す指標であり、安定的に高い利益率を維持している企業は、経営管理や商品力に優れていると評価されます。

このように、企業概要は単なる情報の羅列ではなく、企業の歴史、規模、信頼性、働き方、将来性など、さまざまな面を読み解くための手がかりとなります。求職者にとっては、自分のキャリアビジョンやライフスタイルに合った企業を見つけるための重要な情報源であると言えるでしょう。

◉「事業内容」は?

求職者が企業研究を行う際、「事業内容」は特に重要なポイントとなります。事業内容を閲覧することで求職者は、企業がどのような商品やサービスを提供しているのか、それらがどのような仕組みで市場に届けられ、収益を生み出しているのかを大まかに理解することができます。
また、展開する商品やサービスの詳細を把握したうえで、企業が今後どのような方向性を目指しているのかといった将来のビジネス戦略も注目されています。

それらの商品・サービスが、個人消費者を対象にしているのか、法人(企業)を顧客としているのかを確認することで、その企業の市場でのバリューポジションやアプローチ手法を推測することができます。
加えて、企業の売上や営業利益の中核を担っている商品・サービスは何か、現在注力している新規事業や新分野への展開はどのようなものかといった、事業の内訳まで掘り下げることができれば、企業の強みや競争優位性への理解をより深めることができます。

このように、事業内容を丁寧に調べることで、その企業が「何で勝負しているのか」「どこに向かっているのか」「自分がその中でどう活躍できるのか」といった視点で、より現実的かつ納得感のある企業選びが可能になります。

◉「業界内での位置づけ」で将来性は?

求職者が企業選びをする際、「業界内での位置づけ」は、その企業の将来性を見極める上で非常に重要なポイントだと言えます。企業が属する業界全体の動向や、その中でのポジションを知ることで、今後の成長可能性や安定性をより具体的に判断することができるためです。

1.業界全体の成長性と動向
まず注目すべきは、企業が属する業界自体の成長性です。たとえば、IT・AI・再生可能エネルギー・医療・物流といった分野は、今後も市場拡大が見込まれている業界です。一方で、成熟しきった業界や市場縮小が懸念される業界もあります。業界全体の規模や成長率、法規制や技術革新の影響などを押さえることで、その企業が長期的に成長できる土台があるかを把握することができます。

2.業界内でのシェア・立ち位置
その上で、企業が業界内でどのような位置にあるかも大きな判断材料となります。たとえば、売上高や市場シェア、ブランド力、技術力などを見れば、その企業が「業界トップ層」「中堅」「ニッチな専門企業」といったどのポジションにいるかが分かります。トップ企業は安定性や社会的信頼が高い反面、競争が激しく変革が遅い場合もあります。一方、ベンチャー的な立ち位置の企業は成長余地が大きいものの、変動リスクもあります。

3.競合との比較
同業他社と比較して、どのような強みや差別化要因を持っているかを確認することも、将来性を判断する重要なポイントとなります。たとえば、独自の技術、特許、海外展開、新規事業への積極性など、他社にはない魅力がある企業は、今後の市場変化に強いと言えます。

4.業界再編や統合の流れ
業界によっては、再編・統合の動きが今後活発になることが想定できます。そうした中で、どの企業が主導的な役割を果たす可能性があるのか、あるいは買収・合併の対象になり得るのかなども、業界内の位置づけを通じて見えてきます。これは、企業の生き残り戦略やスピード感とも密接に関係しています。

このように、企業の「業界内での位置づけ」を正しく把握することで、その企業の安定性・成長性・独自性・将来の変化などへの対応力を、多角的に分析することできます。求職者が自身のキャリアビジョンと照らし合わせ、「この会社で何を実現できるか」を考える上でも、非常に大切な視点だと言えます。

◉「代表者の特徴」から読み取れる価値観は?

「代表者の特徴」から読み取れる情報は、企業の価値観や経営方針、さらには社風にまで深く関わってくるため、求職者にとって非常に重要なポイントとなります。具体的には、代表者の経歴や座右の銘、代表メッセージなどを通じて、その人物がどのような理念を持ち、どのように企業を導いているのかを知ることができます。

たとえば、過去に起業経験がある、外資系やスタートアップでのキャリアがある、あるいは技術職や営業職出身など、代表者のこれまでの経歴は、その企業の事業戦略や組織の方針に大きく影響している可能性があります。現場志向の経営者であれば社員の自主性や現場の声を大切にする風土があり、一方で金融や経営畑出身の代表であれば、数字やロジックを重視した運営が行われているかもしれません。
また、座右の銘や代表メッセージなどからは、経営者の価値観や信念が垣間見えます。たとえば「挑戦」「変革」「感謝」「誠実」といったキーワードが含まれていれば、それが企業のカルチャーや行動指針にも反映されている可能性が高いと言えます。このような価値観を理解することで、自分の考え方や働き方が企業と合っているかどうかを見極めるヒントになります。

このように、「代表者の特徴」は単なる人物紹介にとどまらず、企業文化や働く環境を理解するための貴重な手がかりとして見られています。

◉「企業理念」に共感できるか?

「企業理念」に共感できるかは、求職者がその企業で長く働くうえで非常に重要なポイントとなります。ミッション・ビジョン・バリュー(価値観)をはじめ、創業以来 大切にされてきた理念や精神を確認することで、その企業が何を最も重視し、どのような方向性を目指しているのかを、求職者は理解しています。

これらの理念や精神は、企業が日々の経営や社員の行動において最も大切にしている価値観を示しており、結果として企業文化や風土に深く根付いています。したがって、企業理念に共感できるかを見極めることは、自分の考え方や働き方がその会社と合っているかどうかを判断するための重要な手がかりとなります。

このように、企業理念をしっかりと把握し、自分自身の価値観と照らし合わせることで、応募先企業の理解を深めると同時にミスマッチ防止にも役立ちます。

◉「成長性」は見込めるか?

「成長性」が見込めるかは、企業の将来性を判断する上で非常に重要なポイントとなります。求職者は、売上高や営業利益の伸び率、新規事業の展開状況や事業拡大の計画などを確認することで、企業が持続的に成長できるかどうかを見極めています。

特に株式上場企業の場合は、一般に公開されている財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を活用して、経営の健全性や資金繰りの状況を詳細に把握することも可能です。これらの数字は、単に「現在の業績」を示すだけでなく、「将来にわたる成長可能性」や「経営の安定性」を判断するための重要な指標となります。

求職者は、目の前の状況だけでなく、企業の長期的な成長性や発展性にも注目して情報を集めるため、より誠実で納得を得ることのできる情報提供を行うことが重要です。

◉「景況・経済動向による影響度」に心配はないか?

「景況・経済動向による影響度」に不安がないかは、企業の安定性やリスク耐性を見極める上で必要な視点です。特に、売上高や営業利益の過去の推移を確認することで、景気変動や外部環境の影響に対して企業がどの程度強いのかを判断することができます。

たとえば、円高・円安など為替の変動が業績にどれほど影響を与えているのかを見ることで、企業のビジネスモデルが外的要因に左右されやすいかが見えてきます。輸出入に関わる企業であれば為替の影響は特に大きく、グローバル市場とのつながりが強い企業ほど、そのリスクをどうマネジメントしているかが注目ポイントとなります。

上場企業であれば、財務諸表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)を通じて、経営の健全性や資本構成、資金の流れなどを具体的に確認することも可能です。これらの情報を活用することで、企業がどれほどの外部変動に耐えうる基盤を持っているかを把握できます。優秀な人材は、企業の「今」だけでなく、将来的な経済環境の変化に対する柔軟性や耐久力も意識しながら、安心して働ける職場かどうかを見極めています。

◉「競争力」はあるか?

求職者の企業選びにおいて、「競争力があるか」はとても重要なポイントとなります。なぜなら企業の競争力は、将来的な成長性や安定性を左右する大きな要素であり、安心して働けるかの判断材料になるからに他なりません。

例えば、商品・サービスの開発力や技術力、品質の高さがどの程度あるのか、また、それらを支える供給体制や、販売ネットワークの整備状況、さらには、新しい商品やサービスの開発に対する企業の姿勢などが挙げられます。どれだけ積極的にイノベーションを追求しているかは、企業の将来性を測るうえで非常に重要なポイントだと言えます。
設立間もない企業においては、スピード感を持って新商品・サービスを市場に投入し、早期に主力事業を確立できるかが、その企業の成功を左右します。一方で、歴史の長い老舗企業であっても、時代の変化に応じて顧客ニーズを的確に捉え、新たなコンセプトの商品・サービスを生み出したり、既存製品の改良を継続して行っている企業は、今後も競争力を維持・強化していけると評価されます。

このように、企業の持つ競争力を多角的に見極めることで、その企業が市場の中でどのようなポジションにあり、今後も生き残り・成長していける力を持っているのかを判断することができます。求職者にとっても、自分の力を発揮できる土台があるかどうかを知るための大切な視点になると言えます。

◉「企業風土」が自分に適しているか?

求職者にとって、「企業風土が自分に合っているか」は、安心して長く働ける職場を見つけるうえで非常に大切な視点だと言えます。働く環境や組織文化は、日々のモチベーションや将来的なキャリア形成にも大きく影響するためです。

例えば、昇給・昇進の仕組みが年功序列型なのか、成果主義なのか、あるいは評価制度がどのように運用されているかといった点が、企業の価値観や人材に対する姿勢を表しています。また、女性の管理職比率や平均勤続年数、役職者の平均年齢などの数値からは、多様性の受容度や定着率、組織の新陳代謝の状態を読み取ることができます。
さらに、新入社員に対する研修制度やOJTの充実度も、人材育成にどれだけ力を入れているかを判断する重要なポイントとなります。特に、成長意欲の高い若手求職者にとっては、自己成長やキャリアアップのチャンスがあるかどうかが企業選びの大きな決め手になると言えます。

このように、自分の志向やライフスタイル、価値観と企業の風土がどれだけフィットするかを見極めることで、より満足度の高いキャリア選択が可能になります。企業風土の理解は、応募動機を喚起するだけでなく、入社後のミスマッチを未然に防ぐことができます。

◉やりたい「職種」か?

求職者が企業選定をする上で、自分の希望に合った「職種」であるかは最も重要なポイントとなります。そのため求職者は、応募職種やそれぞれの職種で求められるスキル・経験などの把握に勤めています。

職種の正しい理解を促すには、単に「営業職」「事務職」などの名称だけでなく、詳しい業務内容の紹介が不可欠です。「営業職」でも、IT業界の営業と製造業の営業では、扱う商材や営業スタイル、顧客との関係性、必要な知識が大きく異なるためです。
求職者は、業種やビジネスモデルを踏まえ、希望する職種でどのような業務を行うのかを、深く正しく理解しなければなりません。また、企業にとっても、職責を明確に伝えることで、ミスマッチのない人材採用や、適切な採用基準の設計につなげることができます。

求職者は、自身のスキルや志向、将来的なキャリアビジョンと照らし合わせ、やりがいを感じられる職種であるかを見極めることが、満足度の高い就職や転職を実現する第一歩となります。

◉「勤務条件」はクリアできるか?

企業選びにおいて、「勤務条件」が自身のライフスタイルやキャリアプランに合っているかは、就職先選定に非常に重要なポイントとなります。勤務条件には多くの要素があり、具体的には次の項目が挙げられます。

◉給与面:月収・年収、昇給制度、賞与の有無や支給水準
◉勤務地:勤務先の場所、転勤や海外駐在の可能性
◉勤務時間:就業時間帯、実働時間、残業の有無や平均残業時間、フレックスタイム制や時短勤務制度の有無
◉休日・休暇:固定休・シフト制、夏季休暇・年末年始休暇、年間休日数、育児・介護休業制度の整備状況
◉手当:交通費、営業手当、資格手当、地域手当など
◉福利厚生:社宅、家賃補助、資格取得支援制度など
◉社会保険:健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の加入状況

こうした条件は、求職者の属性により重視されるポイントが異なります。たとえば、新卒の場合、待遇面よりもスキルアップやキャリア形成のための環境を重視する傾向があります。一方中途(キャリア)採用では、これまでのスキルを活かせる環境か、前職より条件が悪くならないかが大きな関心事になります。
また、勤務条件を他社と比較することで、業界水準と比べ妥当かを判断されています。仮に勤務条件が相対的に見て劣っている場合でも、スキルが磨ける環境や、やりがいのある業務内容などで補える要素があれば、それが企業の魅力として訴求できる材料になります。

このように、勤務条件は単に数値を並べるだけでなく、自社の特長や求職者との相性を見極めるための重要な判断材料です。応募者の目線に立ち、条件を確認・見直すことで、より効果的な採用アピールから採用活動の成功へとつながります。

◉「CSR・ダイバーシティ」の取り組みは?

近年多くの求職者が重視するポイントのひとつに、CSR(企業の社会的責任)やダイバーシティ(多様性)に対する取り組みがあります。これらは、企業の社会に対する姿勢や、働く人々への考え方を表すものであり、企業文化や働きやすさを判断するうえでも重要な情報となります。

たとえば、環境保護活動や地域貢献、災害支援、教育支援、法令遵守の強化など、直接的な売上に繋がらない活動であっても、企業が積極的に取り組むことで、社会との信頼関係を築き、結果として長期的な成長やブランディングに繋げることができます。CSR活動が評価され、メディアに取り上げられることで、企業イメージ向上をもたらした実例も少なくありません。
また、ダイバーシティの推進についても注目が集まっています。人種、国籍、性別、年齢、文化、宗教、障がいの有無などにかかわらず、多様な人材を積極的に登用し、公平な評価と機会を提供しているかが重要なポイントとして見られています。多様な価値観や背景を持つ人材が活躍できる環境は、柔軟で持続可能な組織づくりに直結するためです。

このように、CSRやダイバーシティへの取り組みは、企業の社会的な信頼性や将来性、そして働く人への配慮を示す指標として、求職者にとって見逃せない要素となっています。企業は、求職者が自身の価値観と一致しているかを見極める材料として、チェックしていることを忘れてはなりません。

◉「関連企業」はあるか?

求職者の企業選びにおいて、親会社・子会社、グループ企業、資本・業務提携先などの関連企業が存在するかは、求職者自身のキャリア形成にも関係する可能性があるため、非常に重要なポイントになると言えます。

例えば、グループ全体での人材交流や出向・転籍制度がある場合、さまざまな業種や職種にチャレンジできるため、就職後のキャリア形成を加速する機会を得ることができます。また、大手企業やグローバル企業との提携がある場合には、高度な専門スキルを身につけられるチャンスや、海外での活躍の場が広がる可能性も考えられます。
さらに、資本提携や業務提携がある場合には、企業がどのような成長を目指しているのかを読み取ることができます。提携先の業界や技術分野との連携が、自社の将来性や新たなビジネス展開にどうつながるのかを知ることも、企業理解を深める一助となってきます。

このように、関連企業の存在は、自身のキャリアビジョンと照らし合わせながら企業の可能性や働き方を見極める上で、見逃せないチェックポイントとなります。

採用戦略を策定する

新卒・中途に関わらず、人材採用の際ははじめに「採用戦略」を策定することが、採用成功への重要なポイントとなります。採用戦略では、「求める人物像の定義」や「採用目標の策定」「採用戦略と人事戦略の整合性の確認」などを行い、入社以降の研修制度や教育・育成などを考慮して、求人手法の選定や人材選考方法を策定していきます。戦略策定において重要なのは、自社の採用に関する方針が明確化されていることなのです。
明確化された採用指針の下、採用強化プロジェクトを進めることではじめて、求職者の誤解なく、中長期的な戦力となる優秀な人材を確保することができます。

●求める人物像の定義

まず始めに行うべきことは、求める人物像の定義です。経営戦略に照らし合わせ、どのようなスキルやパーソナルを持った人材が適材なのか選考基準を策定します。
その際重要なのは、現状の課題を解決するために必要な、短期的な視点で必要な人材を検討するだけでなく、自社の未来に必要な人材を中長期的な視点で検討することです。

中長期的に求める人物像は、経営目標や経営戦略に照らし合わせることで、ブレることなく方向性を明確化することができます。これにより、新卒採用・中途(キャリア)採用のどちらに注力すべきか、採用戦略の方向性が見えてきます。

●採用目標の策定

採用目標の設定では、「いつまでに・どのような人材を・何人採用するか」等を骨格とし、採用活動のゴールを策定します。求める人物像が明確化され、ある程度の方向性が見えてきた時点で、具体的な採用目標に落とし込んでいきます。

はじめに、目標とする採用人数や一人あたりの面接コスト、採用コストなどを定めます。「いつまでに」「何をしなければならないか」を明確化しておく必要があるため、スケジュールは初期段階での確定が不可欠です。新卒採用は長期に渡る活動となりますので、適時調整出来るようバッファを設けてスケジュール組みを行う点もポイントです。

短期戦略として、中途採用の目標人数を決める場合、各部署に必要な人員数の聞き取りが必須となります。中長期戦略として新卒・中途を合わせ目標人数を定める場合は、各部署への聞き取りだけでなく、今後数年で定年退職を迎える社員の人数やプロジェクト、売上などの経営目標を達成するために必要な人数を予め算出しておく必要があります。その上で人件費の予算を考慮し、経営との調整を経て最終的な採用目標人数を策定することになります。

長期活動する新卒採用は予測が難く、採用目標の変更が必要となる場合もありますが、その場合には候補者となる学生の状況を考慮しつつ適宜調整することが肝要です。

●採用戦略と人事戦略の整合性

採用戦略は人事戦略と一貫性を持たせなければなりません。例えば、新卒採用に注力する採用戦略を策定する一方、人事戦略では育成コストをかけない方針なのであれば矛盾していることになります。新卒採用のスタッフを戦力に変えるまでには、相応の育成コストがかかることは想像に難くありません。人事戦略として、育成に人材や時間、資本投下を行わないのであれば、新卒採用ではなく即戦力となりうる中途採用を戦略として採用すべきです。

また、長期的な成長を前提に採用戦略を策定するのであれば、短期評価の人事戦略は矛盾することになります。育成を前提に採用を行うのであれば、成果だけでなく、プロセスを評価する制度などが必要となります。採用戦略は、育成、評価、報酬、配属など、人事を司る戦略と整合性を持たせるように策定することが重要です。

採用戦略策定に使えるフレームワーク

自社分析に適したフレームワークのうち、「3C分析」「SWOT分析」「4C分析」「PDCA」の4つをご紹介します。採用戦略策定には、まずは自社を深く理解する必要があり、客観的な視点で自社を捉えることで、自社が本当に必要とする人材像の抽出が可能となります。
また、求める人材像が定義されることで、求職者に伝えるメッセージが明確となり、心に深くリーチする採用ツール制作へとつなげて行くことができます。以下にご紹介するフレームワークの特徴を理解し、早速自社分析から初めてみましょう。

◉採用戦略策定に向けた「3C分析」

「Customer:市場・顧客」「Competitor:競合」「Company:自社」の頭文字をとった3つの視点で分析を行うため「3C分析(さんしーぶんせき)」と呼ばれます。3C分析を行うと外部要因である市場・顧客(求職者)と内部要因である自社の関係性を把握することができるため、求職者と競合企業に対し、どのように対応すべきかが明確化されます。

この3C分析を後述のSWOT分析と合わせて活用することで、顧客(求職者)と競合に対しどのように自社の強みを活かすことができ、どのような弱みを克服すべきかの可視化が可能です。ターゲットである求職者の価値観やニーズを分析し、同時に自社と競合の状況を分析することで、自社の採用を成功へ導くためのヒントが見つかります。

◉採用戦略策定に向けた「SWOT分析」

「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」と4視点の頭文字をとったフレームワークで「SWOT分析(すうぉっとぶんせき)」と呼ばれます。

SWOT分析を行うことで自社の強みと弱み、活用可能な機会と排除すべき驚異などの情報を整理することができます。また、ターゲットとなる人材にどのように自社の魅力をアピールすべきかが見つかります。

◉採用戦略策定に向けた「4C分析」

「Customer Value:顧客(求職者)にとっての価値」「Customer Cost:顧客(求職者)の負担」「Convenience:顧客(求職者)の利便性」「Communication:顧客(求職者)との対話」の頭文字をとった4つの視点で分析を行うため「4C分析(よんしーぶんせき)」と呼ばれます。

売り手側が商品・サービスをチェックするフレームワークとして設計された4Pに対し、4Cは顧客側の視点で商品・サービスをチェックするフレームワークとして設計されており、4C分析を行うと求職者にとって自社のどの点にプラスとマイナスがあるのかを把握できます。利便性やコミュニケーションで魅力が思い浮かばない場合などは、自分が求職者ならば応募企業にどうあって欲しいか?を念頭に置いて考えると自社の魅力を構築することができます。

◉採用戦略策定に向けた「PDCA」

採用戦略は、計画(Plan)し実行(Do)に移して終了ではなく、年度ごとの課題の洗い出し(Check)を行うことが非常に大切です。採用活動の終了後には必ずフィードバックを行い、次年度の採用活動(Action)に活かしましょう。
どれだけ綿密に計画しても実行段階で課題は数多く見つかりますので、採用戦略を練るフェーズの内、どの点に課題があったのかを明確化することが重要です。目標とする人材設定にそもそも誤りがあったのか、求人手段が適していなかったのか、内定後・入社後のフォロー不足であるのかなど具体的に考えます。そして、課題の洗い出しは結果のデータを基に定量的に考察することが重要です。

課題の洗い出しを終えたら、採用活動に関わったメンバー皆で改善施策について検討します。課題と改善施策のアイデアはメンバー間で共有し、次年度の採用戦略立案時に前年度の課題を潰した形で策定します。
このようなPDCAの繰り返しが効果的な採用戦略へと繋がります

求人手法を選定する

スケジュールと採用目標に照らし、どのような採用活動を行なうのか具体的な求人手法を検討します。パンフレットやフライヤー、Webサイトなど採用案内ツールは何を用いるか、合同企業説明会・合同面接会などの就活イベントに参加するのであれば「いつ」「どのイベントに」「何度参加し」「どのように応募者を管理するか」など、母集団形成の方法を具体的に検討します。
近年では、自社でインターンシップを行い求職者にアピールする企業も多数見受けられます。採用市場のトレンドは常に変化していますので、他社がどのような施策を行っているか情報を集めておくことも効果的です。

◉ハローワーク

公的機関の無料サービスであるため採用企業側に費用がかからず、求職者も気軽に利用出来るのがメリットです。その反面、キャリアやスキルを有する人材の応募が少ない傾向にあります。

◉自社サイト

採用情報に加え、企業の情報全てを伝えられる強みがあり、既存自社サイトがあれば余分な費用も要しません。その反面、自社企業に強い興味がある求職者しか情報に到達しないため、短期間で応募数を集めるには向いていません。

◉Web広告

Web広告には、リスティング広告やSNS広告、バナー広告などがあり、料金体系は様々です。ツールを利用して細かな出稿設定や効果測定ができるため、広告内容の修正や改善も容易ですが、Web広告のクリック後に表示されるランディングページを効果的に制作していない場合、成果に繋がり難いのが欠点となります。

◉転職系 求人サイト

エン転職やマイナビ転職など、転職系のWebサイトが近年では主流の求人手法となっています。求職者のアクセスが多いため、インターネット広告の特徴も相まって日本全国からエントリーがあります。紙の求人媒体と比べ充分な広告スペースを活用できるため情報量も多く、求職者が予め登録するレジェメによる書類選考や、応募者の管理画面など便利な機能も多い反面、有料サービスであるため、登用できなくても費用を要します。

◉求人誌(紙媒体)

ひと昔前には主流であった求人手法です。有料の求人雑誌も存在してはいますが、多くはコンビニやスーパー、ファミリーレストランなどに置かれるタウンワークを筆頭としたフリーペーパーで、パート・アルバイト募集では依然として主流の求人手法です。
インターネット媒体では、求職者が能動的にWebサイトにアクセスしなければなりませんが、フリーペーパーの場合は日常生活の中で触れやすく情報への到達可能性が高いという利点もあります。エリアセグメントに強く、地元で人材を確保したい場合に有効です。

◉人材紹介サービス

採用条件を細かく指定できるため、指定のスキルや条件を有する人材を募集する場合に有効です。専門家の事前面接などによりフィルタリングされた人材のみ選考対象とすることができ、採用活動に要する工数を減らすことも可能です。
その反面、人材紹介サービスへの支払額は採用者の年収に応じた金額となるため、費用が高くつく傾向にあります。

◉合同企業説明会

合同企業説明会は、求職者と求人企業を結ぶ合同説明会で、リクナビを始めとした就活情報サイトをはじめ、大学や地方自治体などが全国各地で行っており、その規模は、数百社が集まる会場に数万人もの学生が参加するものから、数十社程度が参画し数十人程度の学生が集うものまで様々です。
その場で面接効果も得られるのが利点ですが、会場での印象だけで他社と比較されがちなため、出展料の他にブース装飾代などの費用を要する点と、一定規模の都市開催が中心となる点が欠点です。

◉ダイレクトリクルーティング

従来の求人掲載サイトなどを利用して募集をかける「待ち」の採用手法とは異なり、人材データベースから企業自らが求める人材を探し、アプローチをかける「攻め」の採用手法です。沢山の候補者から選ぶのではなく、特定の条件下でフィルタリングされた求める人材にピンポイントでアプローチをかけられるため、効率的に優秀な人材を集めやすい利点がある他、今まで不可能だった潜在層へのアプローチが可能となるため、採用の可能性を広げられる利点もあります。
また、募集内容を競合他社などに知られたくない場合でも、採用プロセスを不特定多数に公表することなく採用活動が可能です。

◉ソーシャルリクルーティング

FacebookやInstagram、X、YouTubeなど、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を活用した採用手法で、面接だけでは得られない応募者の素の情報を入手することができます。投稿内容により交友関係や人物像も知れるため、面接時には隠される内面をも垣間見ることができます。
SNS利用者の多い若年層には有効ですが、ITリテラシーの低いターゲット層には不適です。費用を要さないのは利点ですが、集客力のあるコンテンツを制作するには技術とノウハウが必要です。

◉リファラルリクルーティング

社内外の信頼できる人脈を介した「紹介・推薦」による採用活動です。リファラル(referral)は「委託・紹介・推薦」などの意味で、具体的には自社の経営者や社員からの紹介、外部の専門家や著名人からの推薦などを指し、自社の顧客やファンからの紹介で採用に至るケースも増加しています。
>近年のソーシャルネットワークサービスの発達に伴い、既存の採用チャネルに頼らない「人づて」採用の利便性・効率性は飛躍的に進化しています。募集・選考にかかる費用と手間が非常に少なく、予め企業の業務内容や雰囲気が理解された上での採用となるため、勤務後のミスマッチによる早期退職リスクも限りなく低くなります。
その反面、応募人数を沢山集めることは困難であることと、勤務後の仕事振りが悪いと紹介者と被紹介社の交友関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

面接官を育成する

面接官の印象は企業の印象とイコールとなるため、求人手法の選定と共に面接官の育成を行うことが大切です。求職者はWebサイトや採用案内ツール、説明会などでも企業の印象を強く受けますが、最も強い印象を持つのは面接官の対応であると言われています。面接で対応した人物の印象が応募企業に対する典型的な人物イメージとなるため、最低限度のマナーはもちろんのこと、求職者は自社の御客様であると捉え、丁寧な対応を心掛けなくてはなりません。
また、面接官の育成にはスタッフのマネジメント能力が向上するメリットもあります。人を正しく見極め、評価やフォローを行うことはマネジメントにおいて重要なスキルですが、面接官として必要な人材の多様性を認めながら、自社の求める人材を正しく見極めるスキルは、人を指導・管理する立場となっても必ず活かされます。面接官研修などを実施し、ビジネスマナーや人を見極める力を育むことで、面接官経験を積ませることも大切です。

内定後・入社後のフォロー体制確立

合同説明会から会社説明会、一次面接、二次面接、そして最終面接を終え内定〜内定承諾を得た時点で、採用活用が完結する訳ではありません。現代では、承諾後の内定辞退や、入社後即時の早期退職が当たり前に起こることから、企業は内定後・入社後のフォローが必要不可欠となっています。
内定者とできる限り多くのコミュニケーションを図り、心変わりによる内定辞退や、入社前・入社後のギャップによる早期退職を未然に防ぐことが大切です。

◉内定後のフォロー

当然ながら採用活動は内定を出して終了ではありません。求職者が内定を承諾しただけでは入社が確実でないため、内定期間中も自社に惹きつけておくためのフォローが必要です。内定者に対するフォローは内定者の期待や不安を慮って施策を考えることが肝要です。

一般的には定期的な連絡に加え、内定者同士で顔合わせを行う懇談会、先輩社員との懇談会、ビジネスマナー研修会などが多くの企業で行われています。これらのようなイベントを通し、内定者の情報欲求を満たし、不安を解消することが「この企業に勤めたい」という想いを育み、内定辞退を回避することに繋がります。

◉入社後のフォロー

内定者フォローと共に、入社後のフォロー体制確立も重要です。入社前・後のギャップが大きいと離職リスクに直結するため、長期的に活躍してもらえるよう、新卒・中途の如何を問わず、社内の受け入れ体制を万全に整えておく必要があります。
具体的には、教育担当を配置し、人間関係の相談に乗る、慣習を教える、人事やマネジメントと定期的に面談する機会を設けるなどの施策が考えらます。入社後のフォローも内定者フォローと同様、新入社員の不安やストレスを解消・軽減させることを目的とする必要があります。

ブランディングチーム

パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことで採用ツールを最適解へと導いていきます。

記事制作/プロデューサー

ご相談や採用課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜く採用戦略提案などを行います。

Producer
CEO 豊田 善治

東京のブランディング会社

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。採用コンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの採用課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。