ブランド品質を世界観で具現化する事業ブランディング。

顧客獲得からロイヤルティ向上にむけブランド強化を行った、アパレル産業のブランディング事例を紹介します。

Introduction

アパレル産業におけるブランディングの必要性

いかなる業界においても、ブランド品質の言語化とデザインによる具現化は必要不可欠だと言えますが、アパレル産業ほどブランド価値が売上や企業運営に直結する業界は他にありません。

「ブランド」と聞いて誰もが思い浮かべるのは、アパレル産業におけるファッションブランドであり、代表例にはイタリア発祥のハイブランド「GUCCI」「FENDI」「PRADA」「Bottega Veneta」「VERSACE」「GIORGIO ARMANI」「FURLA」「FENDI」「FERRAGAMO」、フランス発祥のハイブランド「LOUIS VUITTON」「Dior」「CHANEL」「HERMES」「BALENCIAGA」「SAINT LAURANT」「CELINE」「Chole」「Cartier」、イギリス発祥のハイブランド「BURBERRY」「Dunhill」「JIMMY CHOO」などがあげられ、ヨーロッパ発祥のファッションブランドが圧倒的なブランド力を有していますが、必ずしもハイブランドだけがブランドではなく、日本を代表するアパレルメーカー「ユニクロ」も立派なブランドです。

これからもわかる通り、アパレル産業において重要なのは、ポジショニングとターゲティング、そしてブランドコンセプトにあります。ヨーロッパ発祥のファッションブランド(ハイブランド)とユニクロの違いはポジショニングとターゲティング、そしてブランドコンセプトであり、事業戦略の違いが商品や価格にも反映されています。
一方アパレル産業は、あらゆるポジションに大小さまざまなブランドが群雄割拠しているため、自社ブランドの“強み”や“らしさ”が際立つポジショニングを見つけ出し、明確な意思を持ってブランディングを図らなければなりません。

そんなアパレルブランドにおけるブランディングでは、5W1H(When/いつ、Where/どこで、Who/誰が、What/何を、Why/なぜ、How/いくらで)形式でブランドを定義していくと自然とブランドコンセプトが見えてきます。同様に、コンセプトが定義されるとポジショニングやターゲティングも明確化されてくると言えます。
当然ながら商品のデザイン性や品質、そして価格帯もブランドに多大な影響を及ぼすため、ブランドイメージ先行ではなく、確かな品質を持ってブランドを育成していくことが大切です。

事業ブランディングはブランドコンセプトの言語化からはじまる

業種・業界を問わず事業ブランディングは、ブランドコンセプトの策定から始まります。コンセプトは「全体を貫く、基本的な観点や考え方」を指すことから、ブランドコンセプトは、ブランド運用にとって最も重要となるブランドの共有概念であることが分かります。
ブランドコンセプトが定義されると、そのブランドコンセプトに最適なポジショニングが明確となりターゲティングが定まります。また、商品のデザイン性や品質、そして商品価格、さらには店舗デザインやブランドコミュニケーションにおけるキャッチコピーやデザインなどが統一されていき、ブランドの世界観が確立されていきます。 このことから分かる通り、ブランドの中核となるブランドコンセプトの言語化から独自性(自社らしさ)を正しく定義し、定義された独自性をデザインで具現化してブランドの世界観を創り上げていくことが重要となるのがアパレル産業の事業ブランディングです。

アパレル産業のブランディング事例

これまでパドルデザインカンパニーが手掛けてきたアパレル産業の事業ブランディング実績より、「株式会社ワイズ/SUNPOCKET」、「コンフォルマ株式会社/COMFORMA」、「株式会社クレヨン/Lois CRAYON」の3事例をご紹介します。

株式会社ワイズ/SUNPOCKETのブランディング・プロジェクトでは、ブランドコンセプト開発からブランドコミュニケーションの軸となるビジュアル開発を行い、カタログ制作、Webサイト制作の順でブランド価値向上に向けた事業ブランディングを図りました。
コンフォルマ株式会社/COMFORMAのブランディング・プロジェクトでは、ブランドコンセプト開発から社名/ブランドネーミングの開発を行い、ブランドロゴを刷新。次いで、コーポレートサイト/ブランドサイトのリニューアル、ブランドカタログ制作、ステーショナリーの一新、さらにはプロダクトデザインやパッケージデザインまで手掛けました。

そして、企業ブランド/事業ブランドにおけるブランディングは、今日現在も継続して取り組み続けています。

制作事例|株式会社ワイズ/SUNPOCKET|事業ブランディング

ランドセルの企画製造・販売、OEMを行うワイズ サンポケット。株式会社サンリオとライセンス契約を結び自社でデザイン・制作するランドセルや、トレンドを取り入れた自社オリジナルデザインを展開しています。子供たちの心を的確にとらえる、ディテールに凝ったランドセルが人気を集めています。

●ブランディングの経緯

少子化に加え、競合企業の増加により競争が激化するランドセル業界。一方、ランドセルは、構造での差別化が難しいゆえにブランドイメージが購買行動に多大な影響を及ぼします。この事実を踏まえ、従来まで明確に定義されていなかった自社商品のブランドコンセプトを策定。ブランド優位性の具現化に向け、SUNPOCKETのブランディング・プロジェクトがスタートしました。

●ブランドコンセプト開発

ミーティングを重ね、ブランドコンセプト「おめでとう、素敵な毎日のはじまり。」を開発。消費者に届けたいメッセージであり、社内に共有したいSUNPOCKETの思いでもある、ブランドを未来へとつなぐメッセージです。

●キャッチコピー開発

策定したブランドコンセプトに基づき、ブランド・コミュニケーションのコアメッセージとして使用するキャッチコピー「かけがえのない毎日に、最高のランドセルを。」を開発。ひとつひとつ大切に創り上げてきた商品だからこそ、大切なお子さまに使ってもらいたい。そんな思いを込めています。

●ブランドの魅力を伝える商品カタログ

子どもたちの学校生活の自然なワンシーンがイメージできるよう、都内の廃校をロケ地として使用したイメージカットの撮影から着手したカタログ作成。キャスティングからロケ地選定までビジュアル開発一式を手掛けました。撮影したビジュアルを使用したA4サイズのカタログは、今年新登場の最新モデルを加え、さらに充実のラインナップをデザインしています。

●ブランドの世界観を伝えるブランドサイト

カタログのデザインにキービジュアルを統一したブランドサイト。コンセプトをはじめ、商品ラインナップの掲載から、販売に直結する展示会情報やイベントカレンダーを掲載し、集客に寄与するブランドサイトとしてECサイトへ速やかに誘導しています

ブランドサイト

制作事例|コンフォルマ株式会社/COMFORMA|事業ブランディング

2001年に創立したコンフォルマ株式会社は、日本人による日本人のためのコンフォートシューズメーカーとして設立されたシューズブランド。製造方法、素材、デザインに徹底的にこだわるものづくりで、足にトラブルを持つ消費者はもちろん、機能性とデザイン性の双方を追求する消費者たちにも根強いファンを抱えています。

●ブランディングの経緯

今後の展開をふまえ、社名変更を視野に入れたトータルブランディングのご相談を受け、プロジェクトがスタートしました。同社のプロダクトは、ドイツで習得した技術と知識をベースに、イタリアの素材と最新機器を用い、日本の技術を駆使して作られます。コンフォートシューズとしての「快適さ」はもちろんのこと、エレガントシューズの「美しさ」も備えるなど、他社ブランドとの「明らかな違い」が埋もれていました。

●ブランドコンセプト開発

オリエンテーションからブレストを重ね、製品の特徴や他社との違いを検証。あらゆる角度からコンセプトを擦り合わせた結果、「からだのことを、足から考える。」のブランドコンセプトを策定しました。

●新ブランド名は「COMFORMA」

ネーミングの由来はcomfort(快適) + 【伊】forma (形)。快適さについて論理的に構築された形であることを表現する名称です。ブランド名をそのまま社名とすることを前提に企業姿勢も表す案を提案し、本案を採用頂きました。「体のことを、足から考える。」をブランドコンセプトに、「機能」「設計」「素材」への思いを各ツールで伝えていきます。

●ロゴデザインは「靴と体をつなぐ形。」

快適な靴とは、足のかたちそのままを大切にすること。この考え方をインストールしたロゴは、足のかたちを包み込む、なめらかなフォルムをデザイン。マークに合わせ、エレガントな曲線を特徴とするタイポグラフィを組み合わせました。

●ロゴを強調するシンプルなステーショナリーデザイン

リニューアルしたロゴを訴求する、上品でシンプルなデザイン。そんなクライアントのご要望をふまえながら、上質で飽きのこないステーショナリーをデザインしました。

●ブランドを美しく魅せるプロダクト&パッケージデザイン

打ち合わせを重ね、ご希望や制作可否を細かく確認しながら、新しいロゴをより美しく見せるプロダクトデザインを提案。ソール&インソールをデザインしました。靴箱は、印刷加工を施すことで、価格帯にふさわしい高級感を表現しました。

●ブランドの魅力と確かな信頼を伝えるブランドサイト

ブランドサイトは「アパレル感」を感じさせるスタイリッシュなデザインを目指し、キービジュアルにはロゴマークを模したビジュアルで「コンフォートシューズ」のイメージを覆すVI構築を行いました。また、ブランドのこだわり、足の測り方、ルックブックなどをコンテンツとして備え、コンフォートシューズとしての確かな技術も伝える構成としています。

ブランドサイト

●ブランドを育てていくためのコンセプトブック

COMFORMAは、自社店舗を持ちません。商品はすべてセレクトショップに置かれています。このことから、さまざまなブランドが陳列される店内において、消費者にCOMFORMAを深く理解いただけるよう、ブランドのこだわりを細部にまで掲載したコンセプトブックを作成。まずは、ブランドを深く知っていただくこと。中長期的にブランドを育てていくためのコンセプトブックとしてデザインしています。

制作事例|株式会社クレヨン/Lois CRAYON|事業ブランディング

アパレルブランド「Lois CRAYON」を展開する株式会社クレヨン。「時代やトレンドが変わっても、クローゼットに残り続けるブランドでありたい。」という思いから、「織」「柄」「縫製」などにこだわり、愛着を持って長く着ることのできる洋服作りを行っています。また、お客様のおもてなしにおいても徹底し、質の高い接客を行うブランドとして高く評価されています。ブリティッシュ・トラッドをブランド・アイデンティティに、「Lois CRAYON」の他、「LIFE WITH FLOWERS」「&ellecy」など、複数のブランドを展開しています。

●ブランディングの経緯

「デザインが古くなったブランドサイトを一新したい。」そんなご要望から、プロジェクトはスタートしました。デザインを刷新することは簡単です。しかし、表面上のデザインを整えるだけではブランドの独自性を表現しきれないばかりか、ブランド価値を損ないかねません。これを踏まえ、ブランド分析に着手。独自性は何であり、選ばれる理由はどこにあるのか。ブランド・ポジションは明確になっているのか。ロイヤルカスタマーはどのようなペルソナを持つのか。ブランドを徹底的に分析することで、「Lois CRAYONらしさ」の明確化を図りました。

●思いを凝縮したブランドコンセプト

時代はファストファッションブーム。そんな市況において、今後どのようなブランドを目指していくのか。キーマンインタビューを重ね、導き出した結論は「流行に合わせてスタイルを変えるのではなく、培った伝統を大切にしていく」という姿勢。コンセプトに掲げたのは「大切にしてきたことを、大切にし続けるブランド」。トレンドを追うのではなく、培ったブランドの独自性を最大限に生かしたブランディングを実施しました。

●シンプルかつスタイリッシュなブランドサイト

「Lois CRAYON」ブランドを再構築するブランディングプロジェクトにおいて、中心となったのがブランドサイトのリニューアル。ブリティッシュ・トラッドをブランドイメージに掲げ、余計な要素の一切を排除したシンプルかつスタイリッシュなデザインで、シーズンごとにキービジュアルを変えていく構成としました。また、インスタグラムと連動することで、常に旬な情報を発信する仕組みを構築しました。

ブランドサイト

●「なによりも、ひとりを想うブランド」を表現した採用サイト

マインドの高い人材の獲得を目指し、採用サイトでは、「なによりも、ひとりを想うブランド」を採用メッセージとしました。クレヨンで働くスタッフたちの声を多数掲載し、「お客様一人ひとりを大切にする接客スタイル」や、「スタッフひとりを大切にする教育スタイル」を訴求。ブランドを共に育ててくれる仲間を広く募ります。

採用サイト

●伝えきれないブランドへの想いを伝える採用動画

Webサイトだけでは伝えきれないブランドへの想いを、採用案内ムービーで発信。リアルな現場にスタッフインタビューを交え、ファッションのこと、接客の仕事のこと、ブランドのことを伝えていきます。また、クレヨンで働くことで、一流の接客を学べることを伝え、応募同期の喚起を図ります。

採用動画

●芯の強い女性に選ばれるブランドであることを印象付けるルックブック

「時代に流されない、芯の強い女性」をコアターゲットとするアパレルブランド「LIFE WITH FLOWERS」のルックブックを制作。シンプルでありながら、細部にまでこだわるブランドの姿勢を、モノクロームの写真を織り交ぜながら表現しました。海外のランウェイでも活躍する一流のファッションモデルをキャスティングし、芯の強い女性に選ばれるブランドであることを印象付けています。

ブランディング成功の要因は、ブランドコンセプトの理解と実践

事業ブランディングにおいて大切なのは、ブランドを実践するすべての従業員が、ブランドコンセプトを理解・共有し実践すること。そして、その取り組みを継続することで、ブランドの市場価値を高めロイヤルティの高いファン層を形成していくことにあります。

そして、ブランディング成功の要因は「メッセージの一貫性と継続性」にあると言えます。売上重視の一過性のプロモーションだけでなく、ブランドエクイティを高め、ブランドのファンを獲得し、ブランドロイヤルティを高めていくことで、市場で選ばれるブランドを育んでいくことが、中長期的に成長する強い企業づくりへとつながります。

特に経営資源が潤沢でない中小企業は、企業・商品の根本的な価値創出(ブランディング)を図ることがビジネス成功の秘訣です。